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随筆11

地元では、夕陽が落ちる色が都会とは違って見える。
東京から1時間とすこしの地元の空気がスッと体に入ってくるとき、首の後ろあたりで私をこわばらせる何かが外れるような心地がする。

夜の秋の風は乾燥している。
隣の家の暴力的な金木犀がこちらにまでしっかりと香ってくる。
冷たい秋風はわたしの肌の潤いを奪って吹き抜ける。

姉がなくなって6年経った今日の天気は、台風一過で大晴れ。
久しぶりに会う親戚はどんどん老けていってみえた。彼らが私のプライベートに当たり前のように土足で入ってくるこの感じとの、うまい付き合い方も流石にわかってきた。
姉の話は、ここではもうしないけれど、姉がいなくなってからの時間はわたしを大きく成長させたし、その中に姉がいなかったことも信じられない。
わたしには姉がいた、という事実がどんどん遠のいていく感じが大人になってしまうわたしを見送っていく。

うちに帰って、姉の7回忌をしたときに、おばあちゃんがいなくて、おばあちゃんが亡くなったことを初めて実感した。姉の名前を呼びながら泣いているおばあちゃんばかり思い出された。
なくなって3年も経つというのに、実感がなかったことに驚いて、人の死を、わたしはまだ全然理解していないことに気がついた。

チャンスの神様には前髪しかない。
チャンスは意外とたくさん私の前に顔を出してくれるけど、いつもその顔が違っていて、チャンスだと分かった時にはもう後ろを向いている。

今だと思ったその瞬間に手を伸ばさなければ
一生、会えない。

勢いよく帰りとは反対の電車に乗った。
ただの間違いだ。

わたしは迷っている。
うまいだけの話はあった試しがないけれど、チャレンジ精神は豊富な方だった。
これはチャンスか。
そうでなかったとしてもチャンスと信じたものが勝つのか。
チャンスに変えられるだけの力がわたしにはあるか。

社会人になって迫られる数々の選択が
わたしを成長させていると信じるしかないのだ。
選び取れない自分に後悔したくない。

終電間際、一人暮らしの家に帰ったら、賞味期限が切れた食パンを食べて寝る。
6枚切りの食パンを食べ切るのは本当に大変だ。

キャンベルのスープを作ったところで気がついた、パンは少しパサついているどころかかびていた。

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