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随筆13

「私に恋人がいないのは、愛に対する努力が足りてないからだって言うんですよ。こんな時間だし仕方ないか、酔っ払いの戯言と思って聞いてたけど、お前はまだ本気になりたいと思う人にまだ出会えてないだけだ、とかアツく散々言われて。なんかほんともう、悔しいんですよ。
だって私はたくさん愛されて愛し方を覚えて、いつか誰かを愛す準備をしたいだけだもん。ひとつしか愛し方を知らない人なんてつまらないじゃないですか。好きな人のこと、いろんな方法で愛したい。そういう深い女になりたいもん。
どういう人と結婚したいのか、結婚とは何かなんて、いちいち言語化しなくてもいいじゃないって思っちゃいました。それがあればうまく結婚できるのかもしれないけど、なんだか仕事みたいじゃないですか?どう思います?
わたし、恋人とか、結婚とか妻とかそういう肩書きが欲しいんじゃなくって、ずっと一緒にいたいって気持ちだけではやっていけないから、そうやってしっかりラベルをつけるんだと思ってます。その名前に安心するじゃないですか。“恋人みたいなもの”じゃなくて“恋人”って。
わたしがしたかったのは、そもそもそういう人を見つけたいって話だったんです。結局それが伝わらずに、愛し方も知らない子供が結婚したいと喚いているから、いい恋をしろよ、とおじさんたちに力説される2時間になっちゃいました。途中からお酒なんて全部抜けちゃいました。
途中泣きそうになりました。ネイルが派手で、自分をどう見せたいのかブレてない?なんて言われて。勝手にさせてよ。最近買った48手のiPhoneケースも大ブーイングでした。あはは。人生厳しいなあ。え、慰めてくれますか?」


深夜3時半、疲れて今すぐにでも倒れて寝てしまいたいところまで頑張った後、送りの車で何も言わずに聞いてくれる運転手のこと、急に思い出した。

その人の正解だと思う物差しを見せられて、困惑して苦しむことは、初めてではないけれど本当に苦手。
そういう人は大抵、自信ありげに価値観を見せびらかしてくる。決まって恍惚と、気持ちよさそうに話す。
自分の成功体験付きで、熱のこもった声で話してくれる。
それを認めたくなくても受け入れるように頷くことが水商売の仕事の一部だと知っていたから、キュッと奥歯に力を込めた。
わたしにはわたしの戦い方がある。

あたしはただ愛して欲しいだけだ。
つらつらと並べたけどほんとのとこ、全員心底あたしに狂えばいいと思っている。
あたしを見た全員がその存在に悩めばいい、いろんな感情になって夢中になればいい。代わりなんて見つけられないくらい盲目になって、あたしをその心の中で生かしてほしい。







言葉にすると全く違う気がする。私にそんな熱いパッションや欲望はない気がするし、全くないわけでもない気がする。狂えばいいなんて言うキャラクターじゃないことは一番よくわかっている。
自分の根幹にあるものが、どうしても混沌としている。
それでもいいよと愛してほしい。
一番自分を愛してあげられるのはあたしかもしれない。
その次位に愛してくれそうな人を恋人にしたい。

大丈夫、全部酔狂だってさ。内緒だよ。

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