高山唯

'97年。和歌山県在住。 山で働いて、下界で物書き。 文章で目立ちたい派。 不器用さと要領と効率の悪さを真面目さとガッツでどうにかごまかす日々。 中村うさぎが人生のバイブル。

高山唯

'97年。和歌山県在住。 山で働いて、下界で物書き。 文章で目立ちたい派。 不器用さと要領と効率の悪さを真面目さとガッツでどうにかごまかす日々。 中村うさぎが人生のバイブル。

マガジン

  • 林業

    「人は林業には興味ないけど、めずらしいことには興味を持つよ」と言われて仕事のことを書き始めました。

  • 和歌山

    私の暮らしている場所の話。キャンプ、景色、食べもの、好きな人、珈琲、お酒、甘いもの、好きなこと、大切な時間etc.

  • 女性性と性欲

    女の性(さが)について書いています。得したり損したり、利用したりされたり、状況やシチュエーションやそれぞれの価値観でひらひらひらひら変わっていく性別ありきの自分の在り方が、苦しいしつらいけど、なんか楽しい。なんで私はこうなのだろうと、社会や世界を自分なりに解釈しようと試みます。

最近の記事

林業女子とか、あほみたいな言葉

先輩の車で思いっきり吐いた。 ほぼ急性アル中状態で記憶はおろか意識すらほとんどなくなっていた。 H&Mのベージュのトップスとユニクロの後ろに大きくスリットが入ったロングスカートは自分の吐瀉物まみれで、吐きながら苦しすぎて泣いた。 ワインのせいにするのは簡単だ。でも本当はワインのせいなんかじゃない。 調子乗っちゃって飲みすぎたというのは都合が良すぎる。現実はそんな甘くない。 飲みすぎたのは、私でいたくなかったからだ。 一瞬でもいいから、高山唯から出たかった。自分をやめたか

    • 【林業の話をしよう】私の仕事は

       昼休憩で思わず寝転ぶと、私の気持ちとは裏腹にあまりにも空が青くて腹が立った。 生理で腹が猛烈に痛くて、子宮は時々つねられているかの如くキリキリする。顔と首にまとわりついた汗を、構わず雑に袖で拭う。 さっきまでチェーンソーを握っていた手はようやく解放され若干痺れて脱力しきっている。リュックを背負っていた背中も汗で湿っていてかなり不快だ。 鳥の鳴き声も風の音も耳には入らず聞こえてきたのは自分の少し上がった息遣いで、山からの景色にはもはや目もくれず心臓の鼓動で私の視界は少し揺れた

      • もしもしここは文字の国

        ユイは文字の国の人です。 小さい頃から暇さえあれば本を広げて過ごしていました。 ユイは目に見えないことを言葉にするのが大好きです。好きな話はもっぱら人の「気持ち」の話。 本さえあれば、ユイは世界中を飛んで回ることができます。 本に書いてあるので、ユイはいろんなところに、いろんな人が存在していることを知っています。 ヘーゼルは自然の国の人です。 木やきれいな水がたくさんある豊かな山で動物たちと共に生まれ育ちました。 ヘーゼルは生まれ育った土地を深く愛し、身の回りのことに精通し

        • 4回目の春がきた

          寝ていたら、包丁のトントンいう音が聞こえてきたので、私はてっきり母が朝ごはんを作っているのだと思った。 うわーばりお腹空いたわと、食べるモチベで目をあけたら、トントン言ってたのは夜から降り出した雨がうちの屋根を叩いている音で、数年前私は実家から出て行ったからここに母はいないんだった。 あらまぁ〜! 仕方ない。 人の料理する音で起きれるのはしあわせなことだが、自分で好きなものが作れるのもしあわせだよねと寝起きの自分を説得する。 散らかった部屋をつっきって、散らかった廊下

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        • 林業
          9本
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          8本
        • 女性性と性欲
          4本

        記事

          モロゾフと山の娘

           あるところに美しい娘がおりました。 彼女の仕事は山に木を植えることです。 彼女は仕事のために故郷を離れましたが、ちっとも寂しくなんかありません。 彼女の親友、ハリネズミのモロゾフと一緒だからです。  山の仕事は男たちの社会です。 彼女が山に入りたいと職場を探した時、働き手を求める会社はそもそも「女性の働き手」など想定していませんでした。 女が山に入ると「トイレや着替え」などに気を使わなければなりません。元いた男たちが働きづらくなる可能性があります。 肉体労働を女性にどこま

          モロゾフと山の娘

          甲子園に帰った日

          兵庫県西宮市にある甲子園とは、私の故郷である。 私は17年間、甲子園に住んでいた(大学時代に甲子園出身というと、え、住んでたの? どういうこと? と変な顔をされて、よくよく聞いたら球場の中に住んでいたと思われたことがあった。その子にとって「甲子園」は「ディズニーランド」と同じ扱いだったのだ)。 甲子園を思い出そうとすると、嫌いだったの一言に尽きる。 それは場所が悪いんじゃなくて、私が悪かった。 どこを舞台にしても、私が「高山唯」である限り、生まれ育った場所を嫌いになれる自

          甲子園に帰った日

          エッセイストになりたかった

          いつからか、言葉を世界と合わすようになった。 頭の中の言葉と、口から出す言葉が明らかにギクシャクし始めて、そしたらある日文章が書けなくなった。 脳内を整理する自分の言語は、他人には使っちゃだめ。 大学の時に授業のプレゼンで前に出て喋ってて、ふつうに自分言語で話していると周りの人たちの思考と空気中でスパークルしてるのがみえて私は青ざめた。 空気が冷えて、温度が変わって、変えたのは紛れもなく私で、みんなは大してこっちをみてなくて、でも絶対なにかがおかしくて、怖かった。 人類

          エッセイストになりたかった

          ラッキーガールシンドローム

          自分の血をみると、運気がどんどん体の外に出ていってる気がする。 スピリチュアルとかそんなんじゃなくて、ガチで。 包丁で指を切ってしまい、サラサラ流れ出る血を見ながら自分の運もいよいよこれで尽きるなと思った。 思えば運の良かった人生な気もする。 運がいいねといわれたら、は? これは運なんかじゃねぇ努力の賜物だよと思うけれど、自分の謙虚な魂が運のおかげですとささやくこともある。 社会人になってからは、特にラッキーだと言って良かった。入った会社はいいところだったし、入れてもらっ

          ラッキーガールシンドローム

          恋は思考を溶かす。 恋は黒眼が揺れる。 だから目がまわる。 生涯この関係を意地でも壊したくないから「好き」を言わない好きもあれば、 たとえブチ壊れたとしても関わってみたいという気持ちを抑えられない「好き」もあって、 優劣なんてなくて、どっちが大事とかもなくて、どっちもなくなったら死んでしまう、 なのにその好きの重さ分はしっかり疲弊する。 溶けた思考回路で考えることばは取り留めもなくて、なんの役にも立たない。 考えては消え、書いては忘れ、心には数えきれないかすり傷、いつか

          本当のこと

          「我慢してるんだね」と言われたが、私ははたして我慢してたのかと考える。 炊事棟の蛇口からでる水の音があまりにも優しくて手に触れただけでなんだか泣きそうになる。 日は暮れかけててそろそろ焚き火しようかと思いながら、自分のキャンプサイトまでとぼとぼ歩いた。 いいたいことをいわないと、我慢してるとされる。我慢は良くないことだ。身体に悪いから。 でも私はいいたいことを思い付いた言葉でいうやつが嫌いだ。 頭に浮かんだ言葉をそのまま口にするのは、絶対にしたくないことの中の一つだ。

          本当のこと

          おとな

          大人になったな、と思う。 高すぎる税金にケチをつけ、学割は使えなくなり、悪夢を見て真夜中に飛び起きたときなだめてくれる母はいなくなり、悩みはもれなく仕事関連、ストレスの解消法は酒と山とキャンプ。 しゃべる時にはなんと答えたら正解か見当がつくようになった。 とにかく無難なことをいう。流れに沿う意見を述べる。みんなが使っている言葉を使う。 正解は一つではなく複数ある。 いつのまにか、私はそれが当てられるようになっていた。 コミュ力が高いねと言われることがあるが、うそだ。 初対

          おとな

          自画像(短編)

          俺の知ってる女とちゃう、とすぐに思った。 それは今までの女と違うという意味ではなく、頭の中での女というか、女ってこうやろっていう見聞による決めつけというか、俺の理想というか、とにかく実物の誰かとの比較の話ではないということだ。 紗英はパッと見全くデブではなかったが、脱がしてヤるとき骨盤のゴツさというか、太ももあたりからお尻と腰までの立派さに驚いた。 こんかデカい部分が身体を立たすとバランス良く見えるだなんて、女ってなんたる神秘だ。 紗英の身体はびっくりするほど柔らかく、

          自画像(短編)

          夏休み

          空にできたこの飛行機雲を、いちばんに見つけたのは絶対私だと思う。 山の尾根に立って、空を見上げて、 顔から、首から、背中から汗がつたっているのがわかる。 気持ち悪い。 腕で拭うと袖まで汗で濡れていて、 服のびしょびしょが顔にひんやりしてより不愉快な気持ちになって顔をしかめた。 7月31日に海に行った。 海で遊んでいる小学生を見ながら、 帰ったらお母さんの作ったご飯食べてテレビ見て寝て、ラジオ体操行って、クーラーきいた部屋でもっかい寝て、カップヌードルのシーフード味食べて

          夏休み

          スマイルあげない

          「お前、笑うぐらい、やれって」そう吐き捨てる店長は、私の名前すら覚えてくれなかった。 小学生の頃、先生のいったことでクラスメイトたちが一気に「ドッ」と笑うあの現象が苦手だった。 今のはどこがおもしろいポイントだったのか、 笑えない自分はおかしいのか、 私だけが笑ってないことをクラスメイトたちは気付いてるのか、 先生は表情を変えない私をどう思ってるのか、 なんで同じタイミングで笑うことすら、できないのか。 笑いというふるいにかけられ、あぶれた私は、一体どうなるんだろう。

          スマイルあげない

          【林業の話をしよう】私の仕事は

          林業の現場作業員である。 山に行って働き、そして休日はプライベートで山に登る。 「いやどんだけ山好きやねん」とよく言われるが、 私は周りの人が思っているほど自分のことを山狂いだとは思わない。 私にとっては山は「好き」の一言で片付けられる存在ではない。 今回は、 山から一体何を教わったのか、私の話にお付き合いいただこう。 新卒でこの仕事を選んだのはサラリーマンしたくなかったからであって山が好きなわけじゃないのに、、、 と、23歳の私は初めて現場を目撃したその日に思った。

          【林業の話をしよう】私の仕事は

          皮膚

          最初は本当に痒かった、はずだ。 虫刺されか何かだったと思う。 刺された場所も、腫れ方も見えなかった。 自分の首は絶対に目に映らないという当たり前のことに私は初めて気付いた。 だからそれが本当に虫刺されだったのかどうか、ついぞ私にはわからないままだった。 こんなに首を意識したことがなかった。 首がこんなに触ってて魅力的な、夢中になれるものだと思ったことがなかった。 灯台下暗しとは私と私の首との出会いのために作られた言葉なんじゃなかろうか。 首って専門的な知識がなくて