【創作大賞2024恋愛小説部門】早春賦 #07「初めての着物」
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営業再開当日。
若葉はモクさんの指令に従い、十五時にサチエさんの美容室を訪れた。
ママ不在でお店を再開することも、全く馴染みのない着物を着ることも、若葉には憂鬱この上ないが、それでも若葉は、可愛らしい弟が応援してくれているような気がして、とりあえずやってみよう、と自分を奮い立たせた。
サチエさんの美容室は、若葉のお店がある界隈から少し外れた場所にある。ペンシルビルの一階を大手のコーヒーチェーンに貸し出し、二階が美容室、三階と四階が住居、五階以上