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物語に成れなかった言葉たち。
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#散文

スタァ・ライト

‪知ってる街の、知らない姿。‬

‪鉄筋の骨組、馴染まぬ顔触れ。‬

‪電柱の乱立、高架線のお膝元。‬

‪足跡じみた灯火を追って、‬

‪ボクは風になったんだ。‬

‪『線路の向こうは何もないよ』‬

‪けらけら笑う、キミはいない。‬

‪見上げて望めよ、宵夜の交信。‬

‪忘れじの約束、棄ててやるから。‬

泡沫

こころが迷子で砂になる。
砂上で幾度探そうとも、
混じり合えば遥か彼方だ。

とおくに行った 星になった。
こころもとおく、とおくに逝く。
かつてないた記憶さえ、
果てではただの、塵芥。
ガラクタならせめて、どんなにマシか。

死にゆく泡沫抱きしめて、
冷たい躯を動かして、
想いの丈だけ、生き延びるように。
せめてあなたは、と願い託した。
閉じる意識で底から腕を、
欠片手にして祈って振った。

揺籠

いつだったか、
泣いていたんだって。
それを僕は忘れちゃったんだ。

たぶん、どうでもよかったんだって。
あとから思うのは、カンタンだよな。

あたたかく触れる熱に、
寂しさを覚えたのはいつだったか。
ここにいるよって声を、
焦がれていたんだって。
安心を得たいだけだなんて、
勝手過ぎて笑っちゃうよな。

引いては戻る波打際を、
揺り籠のようにそっと辿るようにさ。
歩けたらよかったんだ

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燃殻

燃殻

すべて火にくべてしまいたい。

とおくのいつかで知ってしまうんだ。
そして知らぬうちに消えているんだ。

いま、
話すきみのこえを、
熱を、
匂いを、
知りたいとは、思わないんだ。

すべて火にくべてしまいたい。
灰になったきみを永遠に、
この先ずぅっと抱えて生きること、
それだけが
時間を共にした名残にはなるだろう。
けれど隣合わなかった証だろう。

出先で買った揃いの土産も、
要らないめで

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忘れじの流星

忘れじの流星

なにもかもをわすれたとき、
ボクはあなたに還るのでしょう。
生まれ育ちの場所だけが
ボクの場所ではありません。

たとえあなたを忘れても。
あなたがボクを忘れても。
あなたの中から、
ボクがこれっぽっちもなくなっても 。
記録から抜け落ちた残像の懐かしさを、
ボクはきっと、覚えてるから。
落ちてはすり抜ける明日を幾たび、
数えることに飽いた先で。

あなたに逢いにゆくから。
#雑文 #詩  #

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いつか

いつか、何もかもがうつくしいと
そう思う日がやってくる

ここにいるのは、
ほんとは僕じゃなくても良かった
偶々産み落ちた大量生産の、
隣り合わせが良かっただけ

電車で一緒に揺られているあなた
街角ですれ違うだけのあなた
ほんとは、あなたが僕だったかもしれない
だけども結果、僕は僕になった
だから今、こうしている

空を見ている 友と語らっている
仕方ないと笑っている
ふざけんなと怒っている

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遠ざかる腕を、背を、掌を。
追うことが出来なかった。

軽やかに踊り舞う、
楓の種子を君は見たことあったかい?
ゆったりゆったりと
風にのってゆくんだ。

さらばだ! 皆の衆!

あゝ。
ここを出て行った、あの日を
僕は思い出す。
君は風になって、僕を置いて行って。

そうだろう、と言って。
馬鹿だなぁ、て笑って。
そんな日々さえ。

君と飛んで行ったんだ。
#ss #散文 #雑文 #詩

肉塊の独白

『ほんとは、消えちゃいたいんだ』

君がそんなこと言うから、
僕はいなくなんないでって言うしかなかった。

これは自己中心なエゴの発露です。
ただ一人になりたくないだけの、
かあいそうな肉のカタマリ。

たまたま自我を持ったばかりに、
要らん欲まで膨れる始末。

そこらに打ち捨てられてりゃよかったんだ!
そうすりゃ、君は流星のように消えられただろうに。

関係性は建前で、相槌は惰性で。

中身のな

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