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【KDDI維新ホールメディフィットラボ講師インタビュー】子どもの運動能力を伸ばす!幼少期からの運動習慣≪山口学芸大学教育学部教育学科准教授 舩場大資≫


KDDI維新ホール、メディフィットラボでは「健康寿命の延伸」をテーマに心身ともに健康となることを目的としたさまざまなイベントを開催しております。6月11日は親子で楽しむ「運動習慣」イベントを開催!
今回はイベントの講師を務める 山口学芸大学教育学部教育学科准教授 舩場大資氏に幼少期の運動習慣についてお話を伺いました
カメラマン/ライター


舩場先生の研究内容について

主に子どものバランス感覚や足の筋力について、どうすれば順調に発達させることができるかをメインで研究をしています。
研究をもとに今回のイベントのような運動プログラムを作成していますが、保育園や幼稚園などの現場の負担にならないよう、ごく自然的に子どもの生活の中に取り入れられる教材となることを大切にしています。

山口学芸大学教育学部教育学科准教授 舩場大資氏

幼少期に鍛えるべき運動能力は「筋力」ではなく「調整能力」

運動能力というと、筋力のイメージがありますが、幼少期はまだその成長の段階ではありません。それよりも注目すべきは調整能力。バランス感覚ともいわれていますが、体を動かすなかでもこの能力が幼少期に一番成長すると言われています。

年少から年長児はちょうど足の骨が形成されている時期とマッチしています。この時期にしっかり足を使って活動することが重要です。足で何かをつかむような動きであるとか。足を引き上げることで足の裏のアーチが形成されていくと言われています。

実は土踏まずは、個人差もありますが2歳前後~大体6,7歳になるまでに形成されていることが多いとされています。幼少期に土踏まずがうまく形成されないと扁平足や外反母趾につながってしまう可能性もあるのです。

もちろんなってしまっても改善することは可能ですが、幼少期から何かしら足のトラブルを抱えてしまうと将来的に転びやすくなる恐れもあるのです。
運動能力とひとえに言っても子どもの発達段階に合わせて成長させていくことが重要です。

「スキャモンの発育曲線」
出典 国立スポーツ科学センター

(参考文献:阿部惠子ら「0歳から12歳における子どもの土踏まずの形成と運動能力との関連性」教育医学 63 (2), 167-174, 201)
(参考文献:尾田敦ら「学童期の外反母趾発生に関与する足部形態因子の検討」理学療法学Supplement 2007 (0),)

”転びやすい”子どもが増えている

浮き趾(うきし)と言われる足の指が地面につかないトラブルが現在問題になっています。
高齢期の転倒のトラブルの原因の一つでありますが、これはもはや高齢期だけの問題ではありません。近年それが子どもにみられるようになってきているのです。幼少期の子どもの怪我のデータを調べてみると、顔や頭部の怪我が割合的に増えています。(備考ですが、顔部のケガS51年は1万件未満がH30には2万件以上に。)
転ぶ原因を調べていくと、どうも足のトラブルが原因ではないかと想像されることが多い。つまり、足の未発達が原因で転びやすい子どもが増えているのです。
また、運動不足が原因で保育園の椅子に長時間座っていられない子が増えているとも言われています。転びやすいこともふまえて現代の子どもの体が変わってきているのかもしれません。それを改善していくためにはやはり「運動習慣」をつけることが重要なのです。
先日行った幼少期の実践研究では、足指筋力の向上がバランス感覚を改善させました。この足指筋力は日々の運動で成長し、また日々の運動は偏平足や浮き趾といった足のトラブルを防止してくれます。

足の指が浮いてしまっている状態

参考文献:日本スポーツ振興センター「学校管理課の災害」
(令和元年度版)(負傷/疾病)
参考文献:杉浦、舩場ら「保育園児の足指筋力と平衡機能に及ぼすラダートレーニングの影響」厚生の指標、69(4)、39-45、2022

足が速くなりたい!を叶えるために幼少期からできること

足が速くなるのに結びつくのは筋力とフォームだと思いますが、幼少期はまだその前段階。まずは走ったり、跳んだり、跳ねたりなんでもいいです。外遊びが子どもにとって楽しいと思ってもらうことが第一段階かなと思います。
幼少期にしっかり運動している子どもほど小中学校で運動をしたり、外遊びが好きだったりします。サッカーをするとなると幼児はまだまだ難しいかもしれませんが、そのきっかけを作るにもまずは外で走る!というのはきっとできるはず。
楽しくできることを大切に、いろんな動きのパターンを増やしていってほしいなと思います。自分の足でいろんなものを体験していくことが重要です。

とある研究で保育園、幼稚園で週に2回ほど専門の業者さんを呼んで体育教室をやる園とそうでない園(自由遊び主体)で子どもの運動能力の違いを調査されていました。結果は後者の子どもの方が運動能力が高かったのです。


これはあくまで僕の推測ですが、恐らく専門的な技能を取得する時間の場合、技術は身につくけれど、その指導を受けるために子供が動かず待機している時間が長くなってしまったのではないかと思います。

こちらから与えるばかりではなく、これが楽しい! と子どもがワクワクしながら自ら動いていける環境が必要なのかもしれません。これから通わせたい習い事やスポーツ体験も、ボールを追いかけるのが好きとか、その子の特性にあわせて、あったものを見つけてあげるのも大事だと思います。

参考文献:(杉原隆・森司朗・吉田伊津美(2004a)幼児の運動発達の 年次推移と運動能力発達に関与する環境要因の構造的 分析.平成 14‐15 年度文部科学省科学研究費補助金 (基盤研究 B)研究成果報告書)

車はいったん置いといて、よく食べ、よく寝て、よく歩く

運動以外だと健康的な生活習慣を身につけることは大事です。しっかり寝て、よく食べて、日中は保育園幼稚園でしっかり動き回ってよく食べて、寝る。じゃないとどうしても朝気持ち悪くて運動できないなどに繋がってきてしまいます。これがなかなか難しいんですけどね。笑 
親御さんも働いてるとなかなか難しいですが、休日に子どもと一緒に行う運動を取り入れてほしいと思います。基本的には歩く。ちょっと近くに行く時に歩くというのは大事です。車で行くのではなく、ちょっと歩いてみよう。車社会だと歩く歩数がとにかく減っていってしまいます。これは運動不足の大きな要因の一つです。
基本的と思ってる動作を小さい頃からやっていくだけでもいいので日常生活の中で一緒に運動習慣を作ることも大事かなと思います。

子どものためではなく、自分のために

子どもの運動習慣を作るうえで大切なのは親御さんも一緒に楽しむこと。お母さんお父さんも一緒に運動したら子どもも喜びますし。親御さんも子育てのために一緒に運動するのではなくて、ご自身のために運動してほしいです。
目的が子どものためだけでは親御さんのモチベーションもいつも高く維持することは難しいように思えます(私はそうなります……)

しかし大人が楽しくないことは、子どもにも伝わります。それでは子どもにとっても楽しくないのです。一緒に楽しみながら運動するパターンを増やしていきましょう。できればお庭やおうちの中でできる運動を提案していきたいです。

今は「親」が一番の遊び相手になる時代

1980年代とかは誰と遊んでますかと聞くと兄弟が一番多くて。その次に近所の子だったんですよね。けれど今は少子化で、近所の子もあまりいない。特に過疎地域になればなるほどその傾向があります。それじゃあ誰と遊ぶの?となったら「親」かなと思います。
コロナもあり、人との接触が難しい中で親子で運動するというのが時代に合ってきたかもしれないですね。
現代は公園でボールが投げられない、大きな声を出せないなど地域のルールで運動に制限がかかることが増えてきました。今の常識に合った範囲内で子どもの運動習慣を作っていく必要があります。
今回の維新ホールのイベントのように、何か運動できる場の機会をこれから使っていくことも重要だと思います。


子どもを外遊びの「常連」にするために

子どものころ外遊びが嫌いな子ってなかなかいないのかなと思います。本がすごく好きで運動が二の次だという子がいても全然いいと思うんですが、幼少期から外の世界が自分の世界であるとやっぱり外に出やすい。大人も何か知らない店には行きにくいけど、いきつけの店には行きやすいみたいなのってありますよね。子どもにとっても外遊びの場所が安心安全で、その場所に来て遊んでたら友達がいて、いいことがあるというのはすごく大事です。外遊びするとお父さんお母さん付き合ってくれて楽しいとか。運動っていいことだよねという意識が根付くといいのかなと思います。
子どもにも好きな公園とかってありますよね。僕の息子も「今日はカメさん公園に行く!」とか「今日はロケット公園!」とか言ってます笑。そういった自分にとっていい場所というイメージが運動習慣につながっていくかもしれません。

むかしは好きな場所といえば秘密基地だったり、自分たちでなにかをつくりあげる場所があったけども、今の子どもはゲームばかりして創意工夫していないと思われている方もいるかもしれません。でも実は今の子ども達も創意工夫するってことを全然止めていないんです。
例えば、スーパーマリオってピーチ姫を助けることが真の目的ですが、子ども達にとっては助けることが目的ではなくて、裏道を見つけたり。コインを全部集めたり。いかにこのステージをクリアするかっていうところに創意工夫している。楽しみをつくりあげる場所が社会環境によって変わってきているだけなんです。

それは子どもが悪いわけではなくて、遊び場所や遊び相手が限られてくる中で、どこがその子にとって楽しい場所なのかが変わってきているだけなのです。自分で何かをして「楽しかった」という場所をつくることが大切。もしそれが外であれば自然と運動習慣につながるかもしれませんね。

参考文献:ブラッド・キングジョー、ジョン・ポーランド著(訳者平松徹)『ダンジョン&ドリーマーズ』ソフトバンクパブリッシング、2004.11月。

子育てされている親御さんへ

お子さんと一緒に遊んでもらいたい。一緒に運動して汗をかいて欲しいです。普段から運動されている方はもちろん、なかなか運動習慣をつけられていない方も改めて動いてみると、
「もうこんなこともできなくなっている!」「まだできた!」という発見もまた楽しいものです。子どものためにだけではなく、自分のためにという気持ちで気軽に運動してほしいですね。子どもも親御さんが一緒に楽しんでくれるとうれしいものなのです。

(おまけ)
おさがりの靴は絶対に履かせないでください!

とある研究で第5指(小指)が浮いている子どもが全体の75%いる中で、サイズの合った靴を1年間はかせたら33%まで減少したというデータがあります。(内田ら「幼稚園児の足形計測(第4報)」、靴の医学、18、52-56、2004)
ひも解いてみると、浮き趾があった子は、靴があっていないとか、靴下を重ねて履いて大きな靴を調整しているとか、サイズが合っていない靴を履いている子はどうしても浮き趾が多かったそうです。靴選びも子どもの運動能力、運動習慣のために考えてもらいたい大切な部分です。
足の裏をしっかりと動かせるようにすることは重要。狭めるのもよくないし、ひろげすぎるのもよくないです。固い靴ではなく、子どもの足に合わせて柔軟に動く柔らかい靴がおすすめです。3ヶ月に1回ぐらいかえるのが良いかもしれません。(なかなか出費が嵩みますが。笑)人の靴は癖がついてしまってるので履かない。できれば、おさがりではなく、今のサイズの合ったものを履かせてあげましょう。

参考文献:(内田ら「幼稚園児の足形計測(第4報)」、靴の医学、18、52-56、2004)


船場先生をお招きした「運動習慣」イベントは6月11日に開催!
親子で楽しく体を動かしていきましょう♪

詳細はこちらから


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