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映画感想マガジン

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書いた映画感想の一覧です。主に暴力映画の感想を書いてます。
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シリーズ史上最も洗練された『HiGH&LOW THE WORST X』は中本悠太演じる須嵜亮に狂わされる

シリーズ史上最も洗練された『HiGH&LOW THE WORST X』は中本悠太演じる須嵜亮に狂わされる

邦画界に燦然と輝くアクション映画の金字塔。唯一無二の極上エンターテインメント。高橋ヒロシの伝説的不良マンガ『クローズ』『WORST』との一大コラボレーション・プロジェクトにして、『HiGH&LOW』シリーズ最新作。待望の『HiGH&LOW THE WORST X』がついに公開された。鳳仙学園としのぎを削り、集団アクションの革新を見せた前作『HiGH&LOW THE WORST』(2019)から3年

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オペラティック・アクション映画『レイジング・ファイア』には香港映画の全てが詰まっている

オペラティック・アクション映画『レイジング・ファイア』には香港映画の全てが詰まっている

クリスマス・イブの日にひとりで映画を見ている人がいたとする。ポップコーンは買わず、ドリンクホルダーに置かれたMサイズのコーラの紙コップには水滴が浮かんでいる。その人は、物寂しい人に見えるかもしれない。孤独な人に見えるのかもしれない。しかしひとつ確かなのは、悲しい人ではないということだ。何故なら、その人はほぼ間違いなく『レイジング・ファイア』を見ているからだ。そう、『怒火 レイジング・ファイア』を見

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『孤狼の血 LEVEL2』は血がいっぱいのバイオレンスエンタメ邦画だったのでおすすめです(感想)

『孤狼の血 LEVEL2』は血がいっぱいのバイオレンスエンタメ邦画だったのでおすすめです(感想)

だってみんな好きでしょ、血。

上映後の舞台挨拶中継を見て印象に残ったのは、主演の松坂桃李も白石和彌監督も繰り返し「この作品を見て元気になってください」と言っていたことだ。
オリンピックはスポーツで日本を応援する側面もあったそうだ。その是非はともかく、スポーツを見て元気を貰った人も確かにいただろう。そしてそれは出血量も同じである。暴力は元気が出る。出血量で日本を応援することができる。そんなメッセー

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あまりにも至高な怪獣プロレス、あるいはゴジ×コンの話 『ゴジラvsコング』感想

あまりにも至高な怪獣プロレス、あるいはゴジ×コンの話 『ゴジラvsコング』感想

ゴジラVSコングは既に99%の人が鑑賞しており、後に9999%の人が鑑賞することが完全に証明されている。故に本記事はほぼ鑑賞済みの人向けの記事となる。

あらすじゴジラとコングは太古からの宿命のライバルだった!

はじめにまず、この映画について語るにあたって、本作で監督を務めたアダム・ウィンガードに謝辞を送りたい。ありがとう、アダム・ウィンガード。よくやってくれた、アダム・ウィンガード。お前、本当

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総製作費120億円の地獄 超ド級のエンタメディザスター映画『レスキュー』(中国)

総製作費120億円の地獄 超ド級のエンタメディザスター映画『レスキュー』(中国)

人が地獄から這い上がる様はいつ見ても美しい。
ハリウッドの強固なプロットシステムである三幕構成を見てみると、中盤のミッドポイントで主人公を地獄へ叩き落とせというアドバイスがある。
それほど人が地獄に落ちる様(あるいは這い上がる姿)は王道で普遍的な面白さを持つのだ。
そして来る5月21日。製作費120億をジャブジャブ注ぎ込んだ最高級の地獄が公開された。それが中国の海難救助隊の活躍を描いた映画『レスキ

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リアル片腕ムエタイチャンピオン主演『片腕拳王(ドラゴン)2005』

リアル片腕ムエタイチャンピオン主演『片腕拳王(ドラゴン)2005』

カンフー映画には伝統的に片腕ジャンルがある。
香港の重鎮ジミー・ウォングが巨匠チャン・チェ監督と共に『片腕必殺剣』で創設した隻腕の剣士、ファン・カンというキャラクターは香港で熱狂的な人気を博し、後にジミー・ウォングを中心に様々な続編や類型が作られるようになった。『続・片腕必殺剣』に『片腕ドラゴン』そして『片腕カンフー対空とぶギロチン』など。その全てが大ヒットを記録し、「片腕」はカンフー映画において

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70年代のストリートで撮られたヒップホップDIYカンフー映画『THE DEADLY ART OF SURVIVAL 殺人的護身術』は創ることの愛に溢れた大傑作

70年代のストリートで撮られたヒップホップDIYカンフー映画『THE DEADLY ART OF SURVIVAL 殺人的護身術』は創ることの愛に溢れた大傑作

70 年代は黒人文化のカンブリア大爆発と言っても過言ではないだろう。白人ヒーローしかいなかった映画界ではブラックスプロイテーションが黒人ヒーローの到来を告げた。また、ニューヨークのストリートはグラフィティアートで彩られ、クールハークのDJは人々を熱狂させ、若者たちはブレイクダンスした。そう、HIPHOPの誕生である。
一方、70年代の黒人の若者たちを熱狂させた映画がある。それは遠い地、香港で作られ

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魂を燃やして脂肪は燃やすな!新春ドニー・イェン映画『燃えよデブゴン/TOKYO MISSION』

魂を燃やして脂肪は燃やすな!新春ドニー・イェン映画『燃えよデブゴン/TOKYO MISSION』

英国ロンドン大学の研究によると、映画館で映画を見るのは軽い運動と同じくらい健康にいいそうだ。映画館で映画を見ると、心拍数がいい感じになるんだとか。
すなわち、正月に映画を見るという行為には、その年の健康運を爆上げする効果があると言っても過言ではない。
そこでオススメするのが元旦公開の正月映画『燃えよデブゴン/TOKYO MISSION』。何故なら、太ったドニー・イェンが人をしばく映画だからだ。

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人がたくさん死ぬ映画はおもしろい-アンディ・ラウ×ルイス・クー大激突『ホワイト・ストーム』感想

人がたくさん死ぬ映画はおもしろい-アンディ・ラウ×ルイス・クー大激突『ホワイト・ストーム』感想

突然ですが皆さん人が死ぬ映画は大好きですか?
わたしは、大好きです。
それでは、ホワイト・ストームの感想です。

香港最後の残虐暴力映画職人ハーマン・ヤウの新作が日本にやってきた。それは怒り狂った実業家と麻薬王と香港警察の三つ巴の争いを描いたバイオレンスノワールアクション『ホワイト・ストーム』だ。これは、今年のベスト映画となった。何故なら、人がたくさん死ぬからだ。

香港は世界的に見ても最も熱い映

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囲碁、バイオレンス、そして囲碁-異常囲碁映画『鬼手』感想

囲碁、バイオレンス、そして囲碁-異常囲碁映画『鬼手』感想

世の中、やっていいことと悪いことがあるけど、悪いことでも堂々とやればいい感じに見えることもある。そんなわけで異常囲碁映画『鬼手』の感想です。

というわけでだいぶ前だけど韓国映画『鬼手』見てきました。
映画って、面白さを定義する要素がいくつか存在するんですけど、例えば「脚本がいい」とか「アクションが凄い」とか、それは人それぞれだし、なんなら個人でもその時々のバイオリズム的なものによって変わったりす

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ドニー・イェンとアンディ・ラウのあまりに純粋なラブロマンス映画-香港ノワール『追龍』感想

ドニー・イェンとアンディ・ラウのあまりに純粋なラブロマンス映画-香港ノワール『追龍』感想

香港ノワールと聞いて何を想像するだろうか。雑多な街並み、ドライな暴力、冷酷な香港マフィア、清濁併せ持つ香港警察、白熱電灯、中華包丁、飯、そしてブロマンス。それらが全て詰め込まれた正統派香港ノワールが新たに爆誕した。それがドニー・イェン主演『追龍』である。

正直な話をしよう。ドニーさんがの実在の人物を題材にした香港ノワール『追龍』を主演すると発表されたとき、ぶっちゃけ全く期待していなかった。
ドニ

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リティク・ローシャンを知らなかった男の懺悔-インド映画『WAR ウォー!!』感想文

リティク・ローシャンを知らなかった男の懺悔-インド映画『WAR ウォー!!』感想文

無知は罪ではない。知ろうとする意志のないことが罪なのだ。俺はずっとそう思って生きてきた。
だが今回、無知こそが恐れ多き大罪であることを知る。なぜなら俺はインドの俳優、リティク・ローシャンを知らなかったのだからだ。

ああ、リティク。リティク・ローシャン。その名を口にする度に心臓がピアノを打鍵するが如く跳ね上がり、地中深く眠る宝石のような瞳を見つめる度に体温はティファールの瞬間湯沸かし沸騰器だ。

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子供も楽しめる奇跡のホッコリ連続殺人鬼映画 マ・ドンソク主演『悪人伝』

子供も楽しめる奇跡のホッコリ連続殺人鬼映画 マ・ドンソク主演『悪人伝』

韓国と言えば連続殺人鬼映画の聖地だ。
連続殺人鬼とポン引きのバトルを描いた『チェイサー』に連続殺人鬼と最強諜報員のバトルを描いた『悪魔を見た』そして連続殺人鬼と元連続殺人鬼のバトルを描いた『殺人者の記憶法』など、韓国の連続殺人鬼は様々な難敵と対決してきた。
そして今回、連続殺人鬼が相まみえるのは殺人鬼とはまた別の"暴"を持った存在。暴力団の組長である。それだけではない、その暴力団の組長を演じるのは

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「今だからこそ」が輝くNetflix映画『タイラー・レイク -命の奪還-』

「今だからこそ」が輝くNetflix映画『タイラー・レイク -命の奪還-』

「今だからこそ」という惹句は最早好きなものをオススメする方便と化しているが、それでもこの作品は"今だからこそ"オススメしたい。
それが4月24日に配信されたクリス・ヘムズワース主演のNetflixオリジナル映画『タイラー・レイク -命の奪還-』だ。

クリス・ヘムズワースと言えばマーベル・シネマティック・ユニバースで雷神ソーを務めたことでも知られるオーストラリア出身の人気俳優。温暖な国をレペゼンす

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