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"こころは うごいておれよ" ある短い詩について。


2019年の1月、ノルウェーから届いた
友人からのはがきのすみに書いてあった短い詩。
題名すらついていない、短い詩。

かなしいのでもいい
よろこばしいのでもいい
こころは
うごいておれよ
なまなましく
かんがえておれよ

八木重吉
実際に友人から届いたそのはがき。
わたしが毎月はがきや手紙を書いているあの友人。


当時友人はヨーロッパをあちこち旅していた。
ときどき日本へ帰ってきて、
帰ってくるたびに必ず会っていたけれど
またすぐふらっと外国へ行く。
そんな生活を5年ほどだっただろうか
繰り返していて、まるでスナフキンのようだった。

彼女の長い長い旅をしながらの生活で
1番長くいたのは(住んだのは)ドイツだったけれど
このはがきを読み返すと、
「今はノルウェーにいます」と書いてあった。
はがきを出したいけど今いる村は郵便局がなくて
出せるのは少し後になりそうだ、とも。

このはがきを受け取ったのは、
猫さんを正式に引き取って間もないころ。

過去何度も書いてきたけれど
わたしがボロボロのボロ雑巾どころか
"雑巾の切れはしからはらりと落ちた1本の糸"
くらいには、心身ともにボロボロだったときのことだ。

これまでに彼女からもらったはがきや手紙は
どれも大切だけど、このはがきはその後も、
今でも、何度も読み返す大切な1枚。

あるときはこの詩が書いてある本も探した。
昭和47年に初版が発行された本で、
新品は見つからなかったから、
良い状態の古本を見つけたときに購入し、
もちろん今も手元にある。

はこに入っていて、
横16.5cm 縦18.5cm 厚み3cm と少し大きめ。
中の本にはビニールのカバーが付いていたから
カバーに汚れはあるもののカバーを外すと表紙もきれいで
中もところどころ折れ目などあるものの
かなり状態は良い方だった。


はがきの裏側は、住所を書く欄以外
びっしりと文字で埋め尽くされている。

たわいもない話や、当時いろんなことに疲れて
苦しんでいたわたしに寄り添う優しい言葉、
そして、そんなびっしりと文字で埋め尽くされた
裏面ではなく表面のすみに書かれた、短い詩。

詩の上には

私のbig hugを送ります


いつ読み返しても、彼女らしさが
ぎゅぎゅっと詰まった、1枚のはがき。

そして当時のわたしの心に大きく響いたこの詩。

そうだ、心が動いているからしんどいんだ。
なまなましく考えているから、苦しいんだ。
それはわたしが今、生きている証拠なんだ。

だから、このままでいい、
かなしいのでもいい、くるしいのでもいい、
こころはいつも、うごかしておれよ。
あらゆる自分の想いを感じ取っておれよ。
そうしたらいつかまた、よろこばしいことに
たくさん心がうごくときが必ずくる。

そう言われているような気持ちになった、
そう思わせてくれた、大切な言葉。


それではこの辺で。


最後まで読んでくださってありがとう。

また気が向いたら、来てくださいね。


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