最近読んだ、ある2冊の小説について。
大きなネタバレは一切ありませんが、
(結末に触れるなどは全くありません)
少しセリフなどを含みますので、
念のためネタバレをつけています。
最近読んだ数冊の本のうちの
2冊の小説に、共通点のテーマがありました。
いろいろと深く考えさせられる内容で、
書いているうちにかなり長くなってしまいましたが
お付き合いいただけると嬉しいです。
まずはその2冊を紹介します。
どちらの作品も、"認知症"が
大きなテーマのひとつになっています。
まずはこちら、
裏表紙に記載のあらすじは、
カケイさんという、記憶の扉が閉ざされゆく
ひとりの老女の人生を描いたもので、
正直、読むのはとても苦しい内容でしたが、
読んで良かったと思っています。
少しずつ語られる壮絶な人生の中で、
その人生の最期に彼女は一体どんな思いでいたのか…
そしてもう1冊、
裏表紙に記載のあらすじは、
主人公の千鶴は、離婚したにもかかわらず
元夫に付き纏われ無心され酷いDVを受けており、
生きてゆくことに絶望していた。
母があのときわたしを捨てなければ、
わたしの人生はこんなふうに狂っていなかった、
そんなふうに幼いときに消えた母を恨み続けていた。
そんな中、偶然にもラジオに投稿したものが
きっかけで母と再会することになったものの
母は若年性認知症を発症していた。
どちらのお話も、読むのが本当に本当に苦しい内容でした。
ですが、この2冊を読み終わってから、
ふと考えたのは自分の両親のこと、
そしてこの先の、未来の自分自身のこと。
わたしの両親はもうかなり高齢です。
わたしと姉が10歳離れていることで、
姉の年齢としては平均的ですが
わたしの年齢にしてはかなり高齢になります。
同世代の両親より10ほど上になりますから。
ふたりとも大病を患ったり、持病もあり、
交互に入退院を繰り返すような生活です。
夏から入院していた父が退院したことを
先月書いたばかりですが、つい先日から
今度は母が緊急入院しています。
肋骨や背中が痛いと言っていたので、
内臓かもしれないから早急に病院に行くように
と話した翌日、病院で検査したところ
肺炎球菌に感染していることが判明し、
緊急入院となりました。
入院後、体内酸素量も薄いかったらしく
酸素吸入機もつけているようです。
幸いなことにふたりとも今はまだ
認知症などは発症しておらずしっかりしていますが
今後いつそうなるかは分かりません。
なにしろ2025年には、65歳以上の20%が
認知症になると推計されているそうですから。
これから日本は超高齢化社会になり、
家族の介護などに直面する方は、わたしを含め
どんどん増えてゆきますよね。
身近な経験としては、
わたしが小学生のころ母方の祖母が認知症になり、
家出や徘徊を繰り返し、お家では介護が難しくなり、
医療施設へ入院したまま亡くなったことくらいです。
ですが両親とも、当時の祖母の年齢になり、
いつ両親がそうなってもおかしくないなと
ここ数年は常々思うようになりました。
わたしも母と縁を切っていた時期がありますが、
そうした家族との関係性などもまた様々ですし、
関係性に問題がなくても離れて住んでいたり、
何かあったときにすぐに駆けつけたり、
一緒に住んで介護ができるとも限りません。
また、自分が健康で介護できる状態とも限らない。
事実わたしは今ぎっくり腰で動けなくて、
母の入院先の病院へはとても行けません。
それに、進行のスピードや症状もそれぞれですから
自宅で介護できるのかどうか、なども。
それ以外にも、例えば金銭的なことなども、
必ず出てくる問題のひとつですよね。
自身の家族やパートナーが認知症になったら…
さらには、自分が歳を取りそうなったときは…
もしそのとき自分がひとりぼっちだったらどうなるのか…
この2冊を読んだあと、そんなことを考えるのは
決して自分だけではないだろうと思います。
フィクションではありますが、
決して他人事ではないリアルさが、そこにはあります。
「星を掬う」に関しては、
過去にストーカー被害や夫婦間DVなどの
経験をされている方はフラッシュバックなど
あるかもしれませんので、注意していただきたい
と思うくらいのリアルな内容になっていることにも
触れておきたいと思いますが、
もちろん、ただ辛いだけの内容でもありません。
それぞれが、それぞれの形で、
『立ち上がる強さ』が描かれています。
そして認知症という病は、
本人でなければきっと分からないでしょうが…
「星を掬う」にこんなセリフが出てきました。
何もかも忘れてしまったように感じても、
本人は全部覚えていて、分かっていて、だけど…
これまでは深い海の上にぷかぷかと浮かんでいた
記憶たちがどんどんと深いところへ沈んでゆき、
だけど自分は潜ることも、掬い上げる方法も、
わからなくなってしまった、そんな状態なのかもしれません。
大切な人が自分を忘れていってしまう、
そう感じることはとても苦しくて辛いことですよね。
だけど、大切な記憶を忘れたんじゃなくて、
掬い上げる方法を忘れてしまった、
そう理解して受け止めることができたら、
相手の心も自分の心も、少し楽になるのかもしれない
そんなふうに感じさせてくれました。
おすすめですなんて軽々しく言えないくらいには
読むのが苦しい内容の2冊であることには
変わりはありませんが、とても考えさせられた
内容であったことを含めて、読んで良かったと思っています。
ひとつ、カケイさんの優しい言葉を。
以前、ネタバレに触れるのが嫌で
本の紹介記事を書くときに迷うことが多い
ということを書いたら、意外と気にしない方も
多いし、noteでは冒頭でネタバレしています
という警告文を出すこともできるので、
そんなに気にしなくても大丈夫ですよ、
と言っていただけたりもしたので、
結末などの重要なネタバレなどには
一切触れていませんが、本文に触れることや
登場人物のセリフなどを書きましたので、
冒頭でも触れた通り、今回はネタバレ警告をつけました。
町田そのこさんの作品は、noteを始めて
間もないころに、ひとつ記事を書いています。
個人的には、町田そのこ作品の中では
「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」が
1番お気に入りの作品ですが、
この「ぎょらん」もとても好みでした。
長くなってしまいましたが、
ここまで読んでくださりありがとうございます。
いつもので締めたいと思います。
それではこの辺で。
今日も1日おつかれさまでした。
最後まで読んでくださってありがとう。
また気が向いたら、来てくださいね。