【短編小説】不思議な猫
繁華街の路地裏の小さな社の前で寝転ぶ猫。小柄な女性が小さくしゃがみ込んでファインダーを覗いている。近くの喫茶店の従業員らしいエプロンをつけた若い男が彼女の横を不審な目で窺いながら通り抜ける。男に染み付いた料理の匂いが鼻を刺激したのだろうか、猫は鼻をたて興味深そうに目で追う。女も誰かが後ろを通ったのは匂いでわかった。だが、猫のしぐさが一瞬変わるのを逃さなかった。素早くそして機械的にシャッターが押される。飲食店の制服を着た男、彼を追う猫の横顔がフレームに見事に納まる。会心の作だと