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短編小説

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生きることの難しさについての短いお話集。
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記事一覧

【短編小説】不思議な猫

繁華街の路地裏の小さな社の前で寝転ぶ猫。小柄な女性が小さくしゃがみ込んでファインダーを覗…

さけおにぎり
3か月前
7

【掌編小説】口紅と零戦乗り

僕の祖父は酔った勢いでよく自分の青春時代を語ってくれた。僕がまだ一人で寝るのが恐い年の頃…

さけおにぎり
5か月前
9

【掌編小説】パイナップルピザと肺呼吸

ピザにパイナップルを乗せるのは是か非かという議論がある。俺はどうでもいいが、母はパイナッ…

さけおにぎり
5か月前
5

【エッセイ風小説?】オタク青年が語るギャル論

僕は学生でいろんなところでバイトをしたのだが、大体そこの大人の人に 「君、オタクでしょ?…

さけおにぎり
5か月前
8

【掌編小説】深夜のサウナ、ゲイの友人と

真夏に停電が起こり、エアコンが止まり室内がサウナのようになって地獄だったという話はよくあ…

さけおにぎり
5か月前
4

【掌編小説】夏の日曜午前10時、喫茶店で

日曜の朝、カーテンを開けて顔を洗い歯を磨きながら(ちなみに私は10分ぐらい時間をかける)、喫…

さけおにぎり
5か月前
4

【掌編小説】台風の夜に

台風が上陸している。窓ガラスを打つ雨。吹きすさぶ風の音。それらの強弱はリズムを拒否し、予期しなく、安全な屋内にいる私達の心を少しざわつかせてはまた去って行き、常にその訪れを予感させながら、私達はその雨音に耳を澄ます。 私は台風が来るとあの日を思い出す。私が小学生の頃、2年生の時だ。子供の頃の記憶でそれがいつだなんて覚えていない私だが、これだけははっきり憶えているというより、後で話すがはっきりとした『ある事実』から逆算して解っていることだった。 両親は共働きだったが、その日

【掌編小説】愛し方、忘れ方

僕は3年前に死んだ彼女の墓参りに来ている。僕は墓参りが好きだ。図書館の次に好きだ。そこは…

さけおにぎり
5か月前
4

【掌編小説】コンサートはいつも少し遅れて始まる

僕は会場から少し離れた公園で彼女を待っていた。だだっぴろい駐車場が隣接し、ときおり遠くか…

さけおにぎり
5か月前
8

【掌編小説】黒神話:悟空というゲームと部長の離婚

「黒神話:悟空」という中国の最新ゲームをプレイしたという同僚が喫煙所にいたので、その感想…

さけおにぎり
5か月前
5

【掌編小説】幽霊とゲリラ豪雨と三島由紀夫

空から不快なゴロゴロという音が聞こえ、肌にじっとりと湿気がまとわりつき、大雨の予感がそこ…

さけおにぎり
5か月前
1

【掌編小説】捧げる

「大きな大きな力が私をどこかに連れ去ってしまうの」 そう少女は言った。 崖上の潮騒が聞こ…

さけおにぎり
6か月前

【短編小説】未来は悪の時代【SF】

未来人の俺が助言する。今のうちに正しい行いをしろと。 何言ってんだと?と思うだろうが真剣…

さけおにぎり
7か月前
7

【短編小説】異世界転生した俺が異世界モノの小説家になった話

さて、表題にある通り俺は異世界に転生した。周りはスライムとゴブリンがうごめいているファンタジーな世界なわけなんだが、ここでは俺はただの非力で腹を減らした人間に過ぎなく、生きていく糧が必要だった。俺は街を歩いていて人込みができているのに気づいた。彼らは熱心に壁新聞を読んでいた。中には笑いながら読んでいるエルフもいた。俺は気になって壁新聞を見ると、新聞小説らしきものがあった。内容はトロールの屁に驚いたゴブリンが肥溜めに落ち、オークが引く荷馬車に轢かれて死ぬというしょうもない話だっ