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分身たち

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書いた言葉は、自分から生まれた自分だと思っているので。詩がいます。
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#文芸

【詩】1度も起きない夜に憧れて

【詩】1度も起きない夜に憧れて

個性とか自由とかいうわりには、無意識に当たり前と言う名の否定に引っ張られて、それが普通になっていることに気づいていないことが、何よりも怖かった雨の日の夜。
自分というわりには、この世界を生きていくために仮面をつけることが、生存戦略になっていること、少しでも列からずれたら、容赦なく後ろ指をさされて、体を貫通して痛みに悶え苦しむこともあるって気づいた新月の夜。
息するのも苦しいな、酸欠になりそうだけど

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【詩】白色

【詩】白色

一つ一つこぼれていたもの、掬ってはすぐに消えて涙に変わる、薄く色づいた頬に優しく触れたかったけど、今はただ痛いだけだと言うから、伸ばした手を静かに下ろして、周りの空気の時間が止まる、時計は壊れてしまった。
見えるのは白い世界、白紙のノートみたい、それはきっとなにも線がついていないもの、始まりはどちらでもいいもの、型がない無形なものね。
まだ残像は見えるけど、見上げた先もずっと白い、本当は落書きでも

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【詩】ワイヤレスイヤホン

【詩】ワイヤレスイヤホン

音がある生活が当たり前だから、まったく意識もしていなかったし、そばにいるのが正常と認識していた、だけど、些細なことで、ぼくから音が消えた、足元はぐらついて、道標がいなくなったようだった。
耳に入るのは、吐き気を引き起こすような雑音だけ、砂嵐のような、ぐしゃぐしゃした、まるで、阿鼻叫喚とでも言おうか、なにもかもを逆さまにした世界、そんな中に踏み込んでみれば、ぼくそのものの存在すら忘れる、あれ、ぼくは

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