三島の自決と『ソクラテスの弁明』
三島由紀夫の'自決'とは一体何だったのか。
没後50年経っても議論百出といった感がある。
筆者としては、シンプルに政治的な理由で決起して、失敗に終わったから自害したということだと思う。
国防は大事な問題だし、それは自分一人の命よりも大事なのだと示したかったのだろう。
このような心理は、プラトンの『ソクラテスの弁明』を読めば解ってくる。
ソクラテスは自分の命よりも、自分が信じる正義を貫くために毒杯を仰いだ。
三島の場合も、それと同じである。
あるいは、ヴェトナム戦争反対のために焼身自殺した僧侶、ティック・クアン・ドック。
平和主義者と三島を同列に置くのは奇妙かもしれない。
だが自分の信条を、自らの命と引き換えに伝えようとする気迫は相通ずるものがある。
逆に言えば、彼らのように伝えたい信条がないなら自殺などしてはならない。
また、国防が大事という意味が解らない人は、ルソーがスパルタについて書いたものを読むといい。
とくに『学問芸術論』における気概は、三島のそれと通底している。