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食品業界がタバコ業界から学んだ失敗を、マーケティングxフィットネス目線で考える。

前回の記事では、脂肪と疾患の関係、またアメリカ政府が行った牛肉のマーケティングについてお話しました。
「経済」と「健康」の両立を図るために、健康的な牛肉の研究が進められています。

食品企業からすると、「食品を通じて、喜びや楽しさと届けたい。そのために魅力のある商品を作りたい」と思うのは当然のこと。
しかし、糖分・脂肪・塩による食べすぎを抑えるためにも、どうにかして現状を変えなければいけない。

そこで、かつて同じような状況に陥ったタバコ業界の事例から対策を学ぼうとしました。
幸いにも、当時のフィリップ・モリス社はタバコ産業と食品産業どちらも抱える企業でした。

彼らはタバコ業界からどのような示唆を得たのでしょうか。


●タバコ業界の広告戦略

アメリカンタバコ社は、「肥満」が販促の武器になることに気付いた最初の企業でした。

1925年の同社の広告では、ショートヘアのスリムな女性をモデルに起用し、ワンピースの水着に身を包んだ姿と、未来の太った姿を対比させました。
キャッチコピーは、「これが5年後のあなた!食欲に駆られたら、食べる代わりに『ラッキーストライク』を。」

しかしこれも長くは続きませんでした。
フィリップ・モリス社が、フィルター付きのタバコを「より健康なタバコ」として売り出したからです。
1954年に9%だった同社のシェアは1989年には42%になり、タバコのフィルターは「あるといいもの」から「必須なもの」に変わりました。

ですが再び、喫煙の健康リスクの議論が活性化する中で「健康を謳ったこの広告は、健康でないタバコが存在すると暗に認めることになる」とされて完全に消え去ることになります。
なんか今の日本っぽいですね、、、

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「意味のない銀行」が存在することを暗に匂わす高度な煽り(?)


●タバコ訴訟の結末

1990年代に、タバコ業界を激震させる大きな出来事がありました。
喫煙で病気になった人の医療費が嵩んだとして、40以上の州政府がタバコ業界を訴えたのです。

この裁判は1998年に原告側の勝訴に終わり、フィリップ・モリス社は総額3,650億ドル(約40兆円)を支払うことになりました。
それまで人々は、喫煙を個人の意思決定によるものだと考えていましたが、この判決により、業界に責任が大きくのしかかることになりました。

確かに、マーケティングや広告、健康リスクに関する情報を持っているのは企業側です。消費者側には知る由もありません。
その不利な状況で、企業側が自分たちに都合のいい情報だけを開示する、しかもそれが消費者にとって不利益になるのはフェアとはいえません。

昨今ではCSR(企業の社会的責任)という言葉も一般的になっていますが、この裁判以降、食品業界のマーケティング・広告戦略は大きな転機を迎えることになります。


●食品業界がタバコ業界から学んだこと

実は、タバコ訴訟よりも前の1986年には「高脂肪食は肺がんのリスクを高める」とした論文がフィリップ・モリス社の中で闇に葬られていました。
タバコ事業と食品事業の両方を抱える同社は、タバコの売上を上げるために加工食品の売上を下げることはできなかったのです。

タバコ業界は既に、税金・ラベル表示・マーケティングや広告などに課題を抱えていましたが、アルコール・赤身肉・飽和脂肪酸・砂糖・カフェインなどに関しても、同じ課題に直面することがわかってきました。

フィリップ・モリス社が手掛ける食品のブランドには、同社がタバコ訴訟やタバコのマーケティングで培った経験が活かされました。

人々の懸念点へのケアを用意する、否定ではなく解決策を考える、顧客のライフスタイルや心理に寄り添う、他社を蹴落とすことはしない、など。
つまり、売上を伸ばして競合他社を落とすことよりも、「うまい・やすい・はやい」を求める社会のニーズに素早く答えることを重視したのです。

具体的には、売れているチェーン店のレシピを取り入れたり、チェーン店そのものを買収したりしていきました。
日本人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、「タコベルディナーキット」はその典型です。

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●食品業界が辿り着いた苦肉の策

とはいえ社会のニーズに答えることは健康問題の根本的解決にはなりません。
一体何が原因だったのでしょうか。

それは、栄養成分表示でした。
各成分の量は、「一食分」として表示すればいいことになっているのです。

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引用元:https://www.fda.gov/food/food-labeling-nutrition/changes-nutrition-facts-label

極端な話、1袋5,000kcalだとしても、「この食品は一食に50kcalです(≒パッケージに100食分入っています)」と見せることもできてしまうのです。

食品も飲料もお菓子も、内容量を大きくすることで消費量を増やすという戦略はすぐに全米に広まりました。
しかし実態として、「至福ポイント」を満たした食品は、メーカーが定めた「一食分」でやめられるものでは到底ありませんでした。

これを受けてFDAは2003年、過食を引き起こしやすい食品について、栄養成分表示の「パッケージあたりの総量」を併記するガイドラインを策定しました。
ですが、全ての食品でこれが行われているわけではありません。

またそもそものパッケージを少量にする「100kcalパック」商品も開発されました。
多くのカロリーを占めるクリームを排除したオレオを作るなどの工夫をすると、不思議なことに既存の商品の売上まで伸びたのです。

ですがこれらの施策も長くは続きません。
モラルを気にせずに脂肪たっぷりで美味しいお菓子を売る競合他社が出てくると、途端に売上が下がり、それを回復するために新商品の投入が必要になる、その繰り返しでした。

結局、企業は脂肪分を減らすための持続可能なソリューションを見つけることは未だできていないということになります


●まとめ

・タバコ訴訟によって、企業の社会的責任が問われるようになった
・食品業界はタバコ業界の経験を活かそうとした
・しかし、脂肪分を減らすための持続可能なソリューションは未だにない


●おわりに

このnoteは、筋トレを始めたばかりで、しっかり身体のことについて勉強したい人をターゲットに、健康的な生き方に関する情報を論理的に発信しています。

過去にもいろいろな記事を投稿しているので、もし気になったら読んでみてください。
また、記事にしてほしいトピックのリクエストもコメント欄から募集中です。

筋トレについてそこそこ詳しい方や、実際にトレーナーとして活動されている方にとっても、「こんな考え方、こんな表現があったんだ!」という発見になってくれれば幸いです。



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