フォームローラーでコロコロは間違い?科学的に正しい「筋膜リリース」のやり方。
「筋膜リリース」といって、フォームローラーやマッサージローラーなどを用いて筋肉に圧を加える光景をよく見かけるようになりました。
これは身体の調子を整えるために行われるコンディショニング法のひとつで、テレビなどでも度々紹介されています。
しかし、「筋膜」がどういうものか、また筋膜がどうなると「リリース」されたことになるのか、きちんと理解していますか?
ここを理解しないまま行ってしまうと、効果がないだけでなく、ケガに繋がる恐れもあります。
今回は【正しい「筋膜リリース」とは何か?】についてお話していきます。
●そもそも筋膜とは?
筋膜とは何なのか理解するために、解剖学的な筋肉の構造を見てみましょう。
(図1)
筋肉は、筋線維が何本もまとまった束がたくさん集まって構成されています。
筋線維、筋肉の束、そして筋肉の周りは、胸腰筋膜で見られるような「コラーゲン繊維を含む膜」に覆われています。
この膜は、末端部分に行くにしたがってコラーゲン繊維の密度が高くなり、胸腰筋膜や腱へと、途切れることなくつながっています。
ひとつひとつの膜は、完全に独立して筋肉や筋線維を覆っているわけではなく、隣り合う膜同士でつながりがあり、筋線維が発揮した力を腱や胸腰筋膜へと伝える働きを持っています。
引用元:athletebody.jp トレーニーのための腰痛メカニズムガイド
https://athletebody.jp/2017/01/13/back-pain-science/
うーん、解剖学的には「筋内膜」「筋周膜」「筋外膜」といろいろあるようで、これでは「筋膜」が何を表しているのかサッパリわかりませんね。
別の資料を見てみましょう。
(図2)
引用元:ワークアウトハッカー 「筋膜リリース」とは?効果と方法をカンタンに解説。筋トレをする人にオススメ
https://bodymakingtips.com/2015/03/29/kinmaku-release/
なるほど、筋膜というのはなかなかに範囲が広そうです。
最も深いものだと、骨の近くにまで付いています。
この時点で、「ローラーをコロコロするだけで骨の近くの層にアプローチできるか?」と言われたら微妙なような気がしてきました。。。
おそらく、一般的に紹介される「筋膜リリース」は、骨格筋の表面(図1)かつ皮膚・皮下脂肪の下(図2)にある層をほぐす、という目的だと推測できます。
以下、「骨格筋の表面(図1)かつ皮膚・皮下脂肪の下(図2)にある層」のことを、「筋膜」とします。
●Fasciaという概念
日本語の「筋膜」は、英語の「Fascia」を訳したものです。
しかし、「Fascia」の概念は上記の「筋膜」とは少し違うようです。
「Fascia」は、皮膚やその下の皮下組織、脂肪層、膜組織まで含む広い括りで捉えられる組織です。
つまり、図2でいう骨以外の部分を全て「Fascia」というようです。
「Fascia」には、筋肉にない神経の受容体(センサーのようなもの)があり、そこに刺激を加えるのが「筋膜リリース」における大事な要素と言われています。
●「筋膜リリース」のここが間違い!
日本で言われている「筋膜リリース」は、フォームローラーでコロコロして癒着した筋膜をベリベリ剥がしたりするイメージですが、コロコロしたくらいで筋膜は変化しません。
例えば、フォームローラーを使って背中の筋膜リリースを行う場合、フォームローラーが背中に接している面積全体に、体重の2/3程度の圧力が掛かります。
しかし実際には、筋膜の形状に1%の変化を出すためには、親指1本程度の面積に約900kgの圧力を加える必要があると言われているのです。
従来の「筋膜リリース」では、到底力が足りません。
そもそも、筋膜は筋肉のように素直に並んでいるわけではなく、様々な方向に走行しています。
ある方向に「リリース」したら、逆方向に向かってはむしろ固めてしまっていることにもなります。
一般的な方法で「リリース」されて身体が柔らかくなったように感じるのは、実は筋膜ではなく、筋肉がリリースされているという説もあります。
●筋膜リリースには効果がないのか?
では、従来の「筋膜リリース」をやっても全く効果がないのでしょうか。
どうやらそうでもないようです。
1.関節の可動域が一時的に向上する
フォームローラーをすることで骨格構造には変化はなかったが、関節の可動域は向上したという研究があります。
この効果は一時的なもので、時間が経つと元に戻ってしまいますが、競技や練習のウォーミングアップとして、可動域を向上させるために筋膜リリースを行う価値はありそうです。
2.中期的に行うことで、ストレッチと同等の可動域向上効果がある
週3回、4週間に渡って行われた研究で、参加者を「筋膜リリース群」「ストレッチ群」「何もしない群」に分けて柔軟性の変化を調べました。
その結果、「筋膜リリース群」「ストレッチ群」で同等の可動域向上効果が確認されたということです。
継続的に筋膜リリースを行うことで、柔軟性が向上することが示されています。
3.筋肉痛の軽減
10reps×10setsのスクワット(かなり激しいトレーニング!)を行った後、筋膜リリースをする群としない群に分けたところ、筋肉痛の軽減、柔軟性の改善が見られたとのことです。
ウォーミングアップだけでなく、クールダウンにも筋膜リリースが有効なことが示されています。
●正しいフォームローラーの使い方
正しい使い方を説明していこく前に、一旦復習。
フォームローラーで行われる一般的な「筋膜リリース」は、あくまで筋肉の表層にアプローチするものでした(フォームローラーでは深層部にはアプローチできません)。
つまり、フォームローラーをゴリゴリ押し当てる必要は全くありません。
むしろ無理に動かさず、フォームローラーに乗ってるだけでもいいくらい。
どのくらい長く行えばいいかですが、2分以下ではあまり効果がなさそうだということが示唆されています。
このことからも、あまり強い刺激は与えず、3分程度かけてゆっくりとほぐすようなやり方が合っていそうな気がします。
そもそも、2分以上もゴリゴリやり続けていたら翌日には痣だらけになっていそうですw
●ローラーの種類
筆者はいろいろなローラーを試しましたが、やはり最もよく見るトリガーポイントのフォームローラーが一番いいという結論になりました。
他社のものは反発性が弱かったり、ゴツゴツしていて痛かったりするのですが、これはどの点を取ってもちょうどいい。
そんなに高くもないですし、一家に一台あってもよいのでは。
また、振動するフォームローラーを使うことでヒアルロン酸の流れを促進することができることも示唆されています。
振動式フォームローラー「ドクターエア」はパーソナルトレーナーとしてお客さんに勧めることも多いのですが、めちゃくちゃ評判が良かったです。
もちろん普通のフォームローラーとして使うこともできますし、そこらへんのマッサージ器を買うよりも断然おすすめできます。
●まとめ
・「筋膜リリース」という言葉は正確じゃない
・フォームローラーでコロコロはなんとなく効果があるかもね。
・やるとしたら、強い刺激は与えず、3分程度かけてゆっくりとほぐす
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