菜々キキ

元劇団主宰、脚本を担当。心や体に傷を持つ人々の戯曲を執筆し、都内の小劇場で上演していました。劇団解散後、晩婚をし転妻(転勤族の妻)に。小説、童話を執筆中。短歌結社に所属。現在、認知症の両親の介護中です。

菜々キキ

元劇団主宰、脚本を担当。心や体に傷を持つ人々の戯曲を執筆し、都内の小劇場で上演していました。劇団解散後、晩婚をし転妻(転勤族の妻)に。小説、童話を執筆中。短歌結社に所属。現在、認知症の両親の介護中です。

マガジン

  • 【小説】ある技官、その妻とトキのぬいぐるみ

    エッセイ的小説とでもいいましょうか。防A省の夫と、元演劇人の妻とトキのぬいぐるみの、ちょっと不思議な日常に癒されみませんか? (トキのぬいぐるみは喋りますが)

最近の記事

認知症の母日記 入院編7

2024年10月29日(火)  C施設へ母の面会へいく。母がこの施設に移って、初めての面会だ。  実家からC施設までは歩いて行ける距離なので、まず実家へ行った。  実は一人暮らしの父が、3日前と昨日、自ら救急車を呼ぶという騒ぎがあった。突然鼻血がぼとぼとと落ちタオル3枚使っても止まらなかったらしい。私はあとから知らされた。  心配なので、まず実家へいった。  父は思ったよりは普通だったので、安心した。しかし、台所まわりに落とし切れていない鼻血の汚れが残っていた……  C施設

    • 認知症の母日記 入院編6 

      2024年10月25日(金)  朝、C施設から電話がある。  ドキリとする。  母は昨日、Bリハビリ病院からC施設へ転院したばかり。 「聞いていない。知らなかった」  と昨日怒っていたし、慣れない環境のなか、何かあるのではと心配していたのだが……  看護師さんの話だと、母が夜騒いでしまうという。それから、昨日車椅子から立ち上がって2、3歩歩いたらしい。まだふらつきがあるため、転んでしまってまた脱臼してしまったら大変だ。 (正直にいうと、お母さん、立てたじゃん! 歩けたじゃん!

      • 認知症の母日記 入院編5

        2024年10月24日(木)  母(83歳)は、B病院からC老健施設へ転院する。  朝9:30。私と父(90歳)は付き添いのため送迎車で病院入りした。  受付の人に、ロビーで待つよう言われる。  このB病院は退院するわけで、今日会計もある。  母は自分で荷物をまとめられないから、私はやるつもりでいたのだが……。予定では10:00に介護タクシーが手配されているという。これはB病院が手配してくれた。  ここのロビーのよいところは、自販機で自由にお茶やコーヒーが飲める点だ。父と

        • 認知症の母日記 入院編4

          2024年10月22日(火)  リハビリの病院へ面会に行ったら、母はなんだかすごくしょんぼりした感じで、声がかれていた。  こっそり看護師さんが教えてくれたことには、母は怒鳴ってしまい、声がかれてしまったそうだ。夕方になると不安になる母。夕暮れ症候群というらしい。声がかれるほどとは……。かわいそうになる。  以前私が描いて、母に渡したぬり絵があった(行方不明になっていたのだが、出てきて嬉しい)。母が時間をかけて重ね塗りしてある。紙を裏返したら、色鉛筆で書かれた字が並んでいた

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        • 【小説】ある技官、その妻とトキのぬいぐるみ
          39本

        記事

          認知症の母日記 入院編3

          2024年10月18日(金)  昨日妹が面会した時、母はあまり機嫌が良くなかったらしい。妹はさすがに泣きたくなっちゃった、とメールしてきた。  だから今日はちょっとドキドキしながら面会へ向かった。  今日の母は、かなりテンションが低めだった。  自分が転院する事は覚えてなかったので、改めて詳しく説明する。  黙って聞いていた母は、こんなことを言い出す。 「みんなに迷惑かけちゃって……」  具体的なことは忘れても、今の状況は自覚しているってことだと思った。せつなくなってくる…

          認知症の母日記 入院編3

          認知症の母日記 入院編2

          2024年10月16日(水)  今日の母は、普通の母だった。入院前のような感じだった。穏やかな顔をしていた。まぁ、声は小さくなっちゃったけど……  車椅子の母の正面に椅子を持っていき、手を握りながら、重要なお知らせする。  国の医療制度でこの病院は10月の24日までしかいられない。だけど、まだ右足の装具がとれないから、別の病院に移らないといけないと説明する。  母は黙って聞いていたけれど、ちゃんとわかっているようだった。  お父さんがちゃんと下見に行って、「いい感じの病院だ

          認知症の母日記 入院編2

          介護用品のレンタス業者から、ベッドと手すりの回収をするという電話があった。母が長く入院しているためだ。介護保険制度の仕組みを知ることになる。なんだか、母がもう家に戻れない暗示のような気がしてしまって……。そんなことない、と自分に言い聞かせる。

          介護用品のレンタス業者から、ベッドと手すりの回収をするという電話があった。母が長く入院しているためだ。介護保険制度の仕組みを知ることになる。なんだか、母がもう家に戻れない暗示のような気がしてしまって……。そんなことない、と自分に言い聞かせる。

          認知症の母日記 入院編1

          2024年10月11日(金)  母の面会に行く。  入院しているのは、リハビリ専門の病院だ。  面会可能な13時になったので、行ってみると、母はちょうどハビリが終わったところだった。  この病院では、リハビリが終わると、大広間のようなところに戻ってくる。そこでは、たくさんの患者達がそれぞれ車椅子に座り、次のリハビリの時間まで待機するのだった。(水分補給したり。母はよくぬり絵をしている)  母は、担当の理学療法士に車椅子を押してもらいちょうど戻ったところのようだった。  私が

          認知症の母日記 入院編1

          母がスマホの電話に出られなくなった。(その前に、ラインもメールもできなくなった)さみしい。入院中だから、会いにいくしかない。面会時間は30分と決められているし。

          母がスマホの電話に出られなくなった。(その前に、ラインもメールもできなくなった)さみしい。入院中だから、会いにいくしかない。面会時間は30分と決められているし。

          リハビリ病院に入院中の母。面会は30分と決まっている。母は自分の母親のことを一生懸命話す。夢でも会って、現実でも会ったと。早く帰してしまって、後悔してると。いなくなって、泣いてしまったらしい。私も祖母に会いたくなった。夢でも会えたらな。

          リハビリ病院に入院中の母。面会は30分と決まっている。母は自分の母親のことを一生懸命話す。夢でも会って、現実でも会ったと。早く帰してしまって、後悔してると。いなくなって、泣いてしまったらしい。私も祖母に会いたくなった。夢でも会えたらな。

          千の葉の家族、認知症ダイアリー 第2話

          第2話 入院中の母のために、ぬり絵を描いたら  82歳の母は7月8日に右の股関節の人工関節置換術をした。しかしその際、骨折してしまった。骨折しなければ、2週間で退院できる筈だったのに、骨がくっつくまで1ヶ月かかり、それまで右足を床につくことはできないという。足を動かさないよう固定され寝たきり状態の母を見た時、思わず涙がこぼれそうになってしまった。  その後医療制度のせいで、骨折から18日後にリハビリ専門の病院に転院するが、たった一晩で脱臼し救急車で元の病院へ運ばれ、8月22

          千の葉の家族、認知症ダイアリー 第2話

          【小説】ある技官、その妻とトキのぬいぐるみ 第39話

          第39話 においでわかる(最終話です) 「あ」  と妻が言い、肘で私の右腕をツンツンとつつきます。  ん? 妻の弥生人顔を見下ろすと、目線を前方へやり「見ろ」と促してきます。私は前を見てみます。すると、前方から上下黒い服の若い女が歩いてくるのでした。再び、妻の顔を見ますと、妻は小さく首を振ります。  10秒ほどして、黒い服(黒い長袖Tシャツと黒いズボン。普通ばい)の若い女とすれ違いました。そのまま歩き、もう聞こえない距離になった頃、妻はやっと口を開きます。 「においでさ、わ

          【小説】ある技官、その妻とトキのぬいぐるみ 第39話

          【小説】ある技官、その妻とトキのぬいぐるみ 第38話

          第38話 缶車の近所を散歩してみる  木曜日は久しぶりの女子会楽しかったです。高校の時の女達と喋りまくってきました。  楽しかったのはいいけれど、缶車に帰ってきたら、トキのきいちゃんが拗ねちゃってて……。大変でした。だから、金曜日に近所のお散歩に連れていきました。トートバッグから顔だけ出して、きいちゃんは(声をひそめて)〝東京〟の町に興味津々でした。  すっかり味をしめたきいちゃんの希望で、今日、土曜日もお散歩にいくことになりました。夫が休みなので、みんなで行きます。  せ

          【小説】ある技官、その妻とトキのぬいぐるみ 第38話

          【小説】ある技官、その妻とトキのぬいぐるみ 第37話

          第37話 妻の地元の交友関係  妻がかつて演劇人だったことは何度もお話していると思います。演劇人というのは、稼げないそうですね。そのため様々な仕事をしていたらしく、その都度、知り合いが増えていったらしいのです。  また、妻はよく人に話しかけられます。一緒に歩いていたり、買い物をしているとよくあるので、またか、と私は思います。 「〇〇に行きたいんですけど、どう行ったらいいですか?」  から始まり、 「こっちの方が安いわよね?(買い物中)」 「いい天気ねぇ? どこから来たの?」

          【小説】ある技官、その妻とトキのぬいぐるみ 第37話

          【小説】ある技官、その妻とトキのぬいぐるみ 第36話

          第36話 新しい生活(in 東京)  皆さん、お久しぶりです。美花です。  引越しをして、4月1日に(急にひそひそ声で)〝東京〟に着きました。そして、4月が終わり、5月になって、その5月も終わろうとしています。時の流れって早いですよねぇ…… 「みかちゃ、おねぼうさん、おきたの?」 「こ、こらっ、きいちゃん、なに皆さんの前で言ってるのぉ」 「きいちゃん、みかちゃ、おきる、まってた」  はぁ~。お恥ずかしい。引越しと諸々で少々疲れてしまって……  いえね、私達今、(急にひそひそ

          【小説】ある技官、その妻とトキのぬいぐるみ 第36話

          【小説】ある技官、その妻とトキのぬいぐるみ 第35話

          第35話 ぼく、きいちゃん。ひっこしするの。  みんな、こんにちは。  ぼく、きいちゃん。  みかちゃは、ぼくをぬいぐるみだっていうの。あっちゃは、ぬいぐるみっていっちゃだめって、みかちゃにいうの。  あっちゃのちゅーとんち、かわるから、ひっこしするんだって。  ダンボールたくさんきたの。うしさんのからだのもようで、しろ、くろ、しろ、くろ……。きいちゃん、め、チカチカチカしちゃうの。  みかちゃ、こわいかお、さみしいかおで、ダンボールいろいろいれる。いっぱいいれると、ガムガ

          【小説】ある技官、その妻とトキのぬいぐるみ 第35話