認知症の母日記 入院編1
2024年10月11日(金)
母の面会に行く。
入院しているのは、リハビリ専門の病院だ。
面会可能な13時になったので、行ってみると、母はちょうどハビリが終わったところだった。
この病院では、リハビリが終わると、大広間のようなところに戻ってくる。そこでは、たくさんの患者達がそれぞれ車椅子に座り、次のリハビリの時間まで待機するのだった。(水分補給したり。母はよくぬり絵をしている)
母は、担当の理学療法士に車椅子を押してもらいちょうど戻ったところのようだった。
私が背後から近づくと、母は理学療法士に何かを訴えている。
座っている車椅子に棒があって、それが当たってお尻が痛いと駄々をこねているような状態だった
若い男性である理学療法士は困っているようだった。
私も一緒に母の話を聞くが……
面会時間は30分と決められているから、時間は無駄にしたくない。
近くにいた看護師に面会の書類を渡すと、母の個室へと移動してくれる。
母はせっかく私が来ているのに、不快な棒の話を繰り返している。「痛いのよ」を繰り返す。
本当に痛そうで、泣きそうな声と顔。私はたまらなくなってくる……
流石、看護師は慣れていて、「〇〇さん」と呼びかけ、母を車椅子をからベッドに移らせて、椅子の確認をしましょうと提案してくれる。
ベッドに腰かけた母に、看護師は車椅子のクッションを触らせる。
「ほら、柔らかいでしょ?」
母はクッションを触っても、不安そうな表情のまま。納得しているのか、いないのか? まだ、棒の話を繰り返す母。
すると、看護師は今度は、リハビリ用のズボンを下ろしてやり、母におむつの中を自分で確認させるのだ。母はぎごちない手つきで触っている。
実はおむつの中に、更にパットを敷いているのだが、それがずれて当たって違和感があったのかもしれない。母はそれの位置を自分で直した。
それでも、棒の話を繰り返す母。
ズボンを上げる看護師。
「せっかく娘さん来ているのに。面会時間決まってるんだから」
と看護師が言ってくれる。
私は膝を曲げ、母と視線を合わせ「話そうよぉ」と優しく言ってみる。
母はあいまいな表情を浮かべるが、少し口籠った。
そのタイミングで、もう大丈夫と判断した看護師は、個室を退出していった。忙しいのだろう小走りしていく。
本当にありがとう。感謝しかない。
母はそれでも、一生懸命棒の説明をしていた。
私はなんとか違う話題にしたくて、どうってことない日常的な話題を話し続ける。母は、やっとだんだん落ち着いてきて、私の顔見てくれた。そうして、会話が成立していったのだ。
たわいない話。これができることのなんて幸せなことか……
母は、「もうやだ。家に帰りたい」と繰り返す。
その気持ちはわかるって同意してあげる。足の装具が取れないとダメだと説明を繰り返す。じっと聞いている母。この話は面会にくるたびに繰り返している。
「ここは病院だから、ずっと居れないんだよ」と説明する。日にちを聞かれるから、10月11日だと教えると、母は「11月には帰れるかなぁ」と呟いた。
どんどん無表情になっている母だが、会話を続けていくと少しづつ表情に変化がでてくる。
母に笑ってほしくて、私は話し続ける。
面会開始から30分経った頃、歯医者が来て、今日は虫歯の点検と、歯のクリーニングがあるという。これは良いサービスだと思う。もちろん有料だと思うが。
それが始まったのを見届けて、退出してくる。
母は歯をやってもらうときには、素直に従っているようだった。
それにしても、さっき久しぶりに太ももを見たけど、めちゃくちゃ細くなっていて痛々しかった。
だけど、立ち上がったり、車椅子からベッドに移ったり、ベッドから椅子に移ったりは自分でできるのも確認できた。少し安心した。
なんとしても、家に帰してあげたい。
※母の入院の経緯
7月 8日 A病院にて股関節手術 その際に骨折
7月26日 Bリハビリ専門病院へ転院 その夜、おむつ交換時に脱臼
7月27日 手術したA病院へ救急車で戻される
8月 1日 足に装具がつく(三ヶ月外せないと言われる)
8月30日 Bリハビリ病院へ転院
10月24日 C病院(老健)へ転院予定
医療制度により、ひとつの病院に長くいれないことを知った。
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