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俳句の塊ー01

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記事一覧

【俳句】『チリヌルヲ』

薄曇り夕べに響く耕運機

鞦韆に影あり人の影は無し

春の暮街のチャイムを連れくる

春園パンジーの一山ありて

夕暮れの雲流れつくポプラの樹

葉桜や時の行方を探すこと

新緑や吊り橋白く谷を越え

春風の空に舞う鳥穏やかに

春の星すでに消え失せ失せチリヌルヲ

夜桜に語りをひとつ残しけり

そちらからこちらにくれば春の闇

てのひらでぎしぎし取れば溢れる実

鉄橋に春さしかかる信濃川

3月

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【俳句】『木苺』

鐘霞多摩丘陵に沁みていく

春の川えびは揺るがず泥つかむ

若芝にボール転がり小雨降る

春時雨ここにも一人囁いてる

木苺を含めばはるか山路暮れ

朝焼けの光とともに植木市

大樹あり日陰ずらして苗木植

峠まで街灯ひとつ春の月

夜桜や夜明け前での花吹雪

仰ぐ木の芽にうつる白天守閣

車窓には霞ばかりのラッシュアワー

五加茶の潜む香のお茶となる

夜露に汲まれる月のつややかさ
#自由律俳

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【俳句】 『木瓜』

ブランコの揺れるは風の気のように

青春は例えば憂う春の雨

木瓜紅く遠き街まで続く道

就職の面接間近鶴帰る

残雪の作る影絵は馬の影
#自由律俳句 #俳句 #詩 #短歌 #一行詩

【俳句】『薄い擬態』

鳥長く鳴き飛びにけり別れ霜

若鮎の泳ぐ清流生みし山

芽吹く山黄色帽子のハイキング

永日の牛の石像鼻が照る

松の木に薄い擬態の春の蝉

きんせんか視界にひとつ灯りあり
#自由律俳句 #俳句 #詩 #短歌 #一行詩

【俳句】『成人ならず』

近道は淡雪となりなお急ぐ

飛び方は成人ならず春の蝶

春の星全て消え行く運命の

自転車のフード外して春動く

春の夢そこでは愛を語ってる

故郷の便りとなりぬ夕霞

ときおりの風にも光る春の空

留守番を月に見られて目刺し焼く
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【俳句】『花冷え』

春蘭も吾も同じく雨の中

春草や歩く音にも命あり

春の水はるの光を作りけり

花冷えやボンボリの下ゆっくりと

春眠とおぼしき眠りに落ちていく

おぼろ夜に動く気配の者となる

春暁に花音立てず散っていく

山並みは杉をそろえて夕霞

動かざる遠き山から春の雲

春の日や西新宿もその中に

春寒やイラスト入りのマスクあり

夕暮れのしだれ桜は妖しけれ

花林檎空には雲が2つ3つ

人ごみに砂利の

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【俳句】『春陰』

春陰やこもる部屋にもたなびいて

首都高をくぐりぬけ来る春の風

初蝶の揺れる姿の時が来て

芦踏めば鳥飛び立つや声ひとつ

恋猫は日増しに恋をつのらせて
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【俳句】『500円也』

林檎の木500円也春の市

桜草迎えてくれる庭園に

茅葺や斑雪模様の里景色

山吹の主が一人茶を淹れる

紅梅や寒き空気に一人いる

沈丁の脇を通って卒業す

玄関は赤き枸杞なり月の夜

肌煙る浦佐の堂押1200年

鉢物の素焼き無くなり植木市

雁帰る道に鮮やか空ができ
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【俳句】『春嵐』

春嵐思いのほかに力あり

フキノトウ苦きの中に世がありて

花見ると空に留まるクマンバチ

春の星湯舟の窓に仰ぎ見る

新宿の春の夕焼け人見知り

摘草に戯れる子ら我と成る

春の夜名前をひとり呼んでみる

春の夜の時ならぬ日の賞与かな

タンポポの綿毛は全て向うなり
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【俳句】『桜貝』

霞む世にお重を広げ花曇り

春の野にさざなみ寄せる河口かな

砂浜の夕暮れに似し桜貝

初花の温泉街で土産買う

ずっしりと淡い重さの桜餅

アシタバに掛けたタオルはセリの香
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【俳句】『君子蘭』

菜の花やバス停の中春溢れ

奥山で見る人無くて山桜

抹香の匂で帰る君子蘭

啓蟄や祭りの旗は北を向き

見るほどにますます増えるおにやんま

しゃらしゃらと赤子が振りし猫じゃらし
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【俳句】『帽子舞う』

夜桜や観光の声も低くなり

蓬餅春こねながら棘をとる

李買い六十一の厄払

帽子舞う3月の空鮮やかに

白衣着てフラスコを振るリラの香

青に刺す白木蓮厚き風を呼び
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【俳句】『うつつの夢』

シクラメンうつつの夢は夢に消え

縁日や物ひとしく春迎え

車窓から梅と桜の区別無し

如月や確認をする季節割

公園の春を背負うは老婦人

故郷の土を縄締め苗木市

3月に雪解け遅し道開閉ざす

それぞれの彼岸について立ち話
#自由律俳句 #俳句 #詩 #短歌 #一行詩

【俳句】『いろは坂』

玄関に足おと近く春の暮

忽然と3月来れば新天地

嬉しさを花から貰う給料日

花水木長き恋にも似て育つ

朧夜やバイク曲がりていろは坂

我が家より少し離れて雲雀かな
#自由律俳句 #俳句 #詩 #短歌 #一行詩