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著…坂口安吾 現代語訳…松尾清貴『堕落論』
坂口安吾の思想を現代語訳した本。
坂口安吾は、冒頭の『堕落論』において、「昔は良かった」という考え方に疑問を投げかけています。
生きれば生きるほど、人は老いますよね。
生きれば生きるほど、人は変わっていきますよね。
では、「美しい」と見なされるものを美しいまま留めておくためには、極端な話、人は若いうちに死ななければならないのでしょうか?
また、夫に先立たれた女性は恋をしたり再婚したりはせず、いわゆる「未亡人」を貫いて、清らかな身でいなければならないのでしょうか?
赤穂浪士は忠義の侍だから、生き長らえて新たな主君に仕えてはいけないのでしょうか?
日本国民は「天皇陛下バンザイ」と言って戦争をしなければならないのでしょうか?
これらのことに、坂口安吾は「否!」と叫びます。
坂口安吾が提唱した「堕落」とは、誰かが誰かに押し付けた「美徳」に疑問を抱き、自分の頭で物事を考え、未来を変えていくこと。
未亡人は新たな恋をしてもいいのです。
義士は生き延びてもいいのです。
戦争を拒否しても良いのです。
変化をすることによって、「昔は良かった」とされる昔から見れば、「堕落した」と後ろ指を指されたっていいのです。
生きることで、失敗したり、恥をかいたり、後悔したっていいのです。
綺麗なままでいられずに、傷だらけになったっていいのです。
そこから人間の歴史は始まるのですから。
…と、わたしはそんな風に坂口安吾の思想を解釈しました。
なんだか、坂口安吾から「生きて」と背中を押してもらえたような気がして嬉しかったです。
また、『日本文化私観』の、
(中略)美しく見せるための一行があってはならない。美は、特に美を意識して行われたところからは生まれてこない。どうしても書かねばならないこと、書く必要のあること、ただ、そのどうしてもそうしなければならない必要だけに応じて、書き尽くされなければならない。ただ「必要」であり、一も二も百も、始めから終わりまで一貫して、ただ「必要」だけ。そうして、この「どうしてもそうしなければならない本質」が求めたところの、なににも似ていないそれ自身の形が、美を生むのだ。本質からの要求を外れて、美的とか詩的とかいう立場に立って一本の柱を立てても、それは、もう、とるに足らない細工物になってしまう。
という文にも痺れました。
わたしもこのnoteに「必要のあること」を書き、小細工ではない美を見つめ、物事の本質について自分の頭で考えられる人間になりたいです。
〈こういう方におすすめ〉
物事の本質をとらえたい方。
〈読書所要時間の目安〉
1時間半〜2時間くらい。
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