編著…NHK「クローズアップ現代+」取材班『カスハラ モンスター化する「お客様」たち』
正当なクレームとカスタマーハラスメントの違いがよく分かる本。
後者の方は明らかに異常!
例えば、
●「お前の店で200万円ぐらい使ったから100万円返せ」としつこく要求し、オーナーが断ると「俺はこの店を使わないといけないんだからお前が辞めろ」と意味不明なことを言う(オーナーが辞めたら店自体が無くなるのでは…?)
●理由も無く法外な値下げを強要し、声を荒げたり、暴力をふるったり、「こんな奴クビにしろ!」などと吐き捨てる
●コーヒーをテイクアウト出来る店で買って「タクシーの中で飲んでいたらこぼして服が汚れた!」とコーヒー店にクリーニング代を請求する
そういう輩たちに共通するのは、ごね得狙いだということ。
スタッフに酷い言葉を浴びせ続ければ、スタッフが困って何でも自分の言うことを聞くだろう…と計算している狡さがあります。
それに、言い返せない立場のスタッフをサンドバッグ扱いして日頃の鬱憤を晴らしている感じも顕著。
そういう輩たちは、「お前」「おい」などとまるで奴隷のように呼ばれたり、全く非が無いのに怒鳴られるスタッフさんの気持ちを一度でも想像してみたことがあるのでしょうか?
カスハラ被害に遭ったスタッフが退職に追い込まれたり、精神疾患を患ったり、カスハラの様子を見聞きした人たちから「こういう仕事は嫌だ」と思われて働き手が減ることについて、何とも思わないのでしょうか?
しかも昨今はスタッフの顔写真と名前がネットに晒され、あっという間に炎上し、本来全く関係無い赤の他人たちから苦情の電話やメールが押し寄せることもあります。
なんて酷い世の中!
また、今、特に医療現場でスタッフが足らないという緊急事態が起きていますが、医療スタッフやその家族に対するハラスメントが医療スタッフの退職に拍車をかけています。
わたしがいる福祉の現場もそうです。
もともと労働条件が厳しい上にカスハラまで横行。
多くのスタッフがやりがいを見失い、疲れ切っています。
飲食業も、コロナ禍による収入減に加え、お客に入店時のマスク着用を求めて激しく抵抗されSNSで「酷い対応の店」として誹謗中傷され休業に追い込まれたりと散々な目に遭わされています。
この本を読んでいると、吐き気を催してきます…。
どうしてこんな世の中になったんだ!? と。
また、この本を読んでいると、こうしたカスハラに対して絶対にスタッフ一人だけで対応させてはならない…と気づかされます。
一人で対応すると個人を集中攻撃されて、そのスタッフは心を病んでしまうから…。
どんなことがあっても会社が守ってくれる、という安心感が無ければ、誰もが「いつ理不尽な攻撃をされるか」と恐怖に怯えながら仕事をすることになってしまいますよね…。
また、余談ですが、わたしはこの本を読み、映画『フィフス・エレメント』のようなシステムを現実世界の様々な場所で導入すべきだと考えるようになりました。
あの映画の世界だと、窓口を叩いたりするとすぐ「警察だ。これは訓練では無い」とすぐ機械が対応してくれるので。
あの世界のシステムを現実世界に置き換えるのは極端かもしれませんが、そうでもしないと働く人の安全は守れませんし、働いてくれる人がいなくなると世の中が回らなくなりますよね…。