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編纂…彩図社文芸部『名言 中原中也』

 中原中也が周囲の人々に語った名言(迷言?)とそれにまつわるエピソード、詩、そして短すぎる生涯の年表をまとめた本。

 わたしは以前から「ひょっとして中原中也ってツンデレ気質?」と思っていたのですが、この本を読んでそれは確信に変わりました。

 たとえば、中也が太宰治と初めて会った時に言ったという、

 「何だ、おめえは。青鯖が空に浮んだような顔をしやがって。全体、おめえは何の花が好きだい?」 
 (単行本版P18から引用)

 という言葉。

 突っかかった次の瞬間にはロマンチックなことを聞いています。

 何この流れるようなツンデレ!

 このnoteを読んでくださっているあなたは初対面の人にツンツンしながら好きな花を聞いたことがありますか?

 わたしはありません。

 また、中也が自分のもとから小林秀雄のもとへ去った元恋人・泰子の家を訪ね、

 「夢見が悪かったから気になって来てみたのだが、元気ならいい」
 (単行本版 P50から引用)

 とこれまたロマンチックな言葉をかけたエピソードも興味深いです。

 中也と言えば、酒に酔ってはすぐ暴れて人に飛びかかろうとするし口が悪くて就職しないで母・フクに仕送りをしてもらって生きていたといったイメージがありますが…。

 不器用ながらも愛情深いところもあって、憎めない魅力の持ち主ですよね。

 しょっちゅうトラブルを起こす割に、ちゃんと仲の良い友達がいたのにも納得です。

 きっと、周りの人たちは何だかんだ言いつつも素直な性格の中也のことが好きだったのでしょう。

 また、わたしは中也が弟・吾郎に送った手紙の、

 「本を読めよ、とにかく読むんだ。学校の本なんか一日で読んでしまって、あとは何でも読め。本を買ってくれなければ家中暴れ回ってやれ」
 (P97から引用)

 という文の面白さに惹かれました。

 もし本当に弟が暴れ回ったとしても中也は家の修理代を一銭も出しそうにありませんが、「本を読め」という言葉からは弟に対する愛情が伝わってくる気がします。

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