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2020年9月の記事一覧

宇佐見りん/かか

宇佐見りん/かか

マザーコンプレックス文学マザーコンプレックス文学、果たしてそのような言葉が既に存在するのかどうかわからないが、たまにそう呼びたくなる文学がある。
宇佐見りん氏の『かか』は間違いなく、そのひとつだ。
悪い意味ではないので誤解しないでいただきたい。

この物語に登場する女性陣は、それぞれマザーコンプレックスを抱えているように見える。

明子は子供の時に母である夕子を亡くし、かかは姉の夕子にばかり母の愛

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川上未映子/すべて真夜中の恋人たち

川上未映子/すべて真夜中の恋人たち

直接的な類似点などひとつもないのに、自分の恋の記憶をよびおこされ、引き戻され、苦しくて主人公・冬子さんと一緒においおいと泣いた。

当時11月この作品を読むのに、ぴったりの季節であるという事は知らずに手に取った。

冒頭は、好きな一文だ。
自他境界について触れられていると感じた。

身体に触れているということは、これ以上は近づけないということ。
どこまでいっても溶け合うことはないということ。

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又吉直樹/第2図書係補佐

又吉直樹/第2図書係補佐

「教科書に載っているような作品が好きなんですよね。」テレビから聞こえてきた声に、自分の耳を疑った。

私が日頃口にしているフレーズを一字一句違わずに吐くこの男は誰だ?

これが約10年前、私が初めて又吉さんを認識した瞬間だ。私は敬意と親しみを込めてピースの又吉直樹氏のことを又吉さんと呼ぶ。

当時、又吉さんが読書大好き芸人としてもてはやされる少し前、私は古本屋として細々と活動していた。店のコンセプ

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銀色夏生/散リユク夕ベ

銀色夏生/散リユク夕ベ

銀色夏生、私の小中学生時代のカリスマ(死語)だ。
当時はそれはもう、ぐさぐさ刺さり大好きだった。
今読み返すと青くて、当時のようにはもう感動は出来なくて、汚れっちまった悲しみに打ちひしがれたが、それでも冒頭の詩には、はっとさせられた。

一つの家庭は、一つの宇宙だと思うパートナーと長い期間二人きりで過ごすと、なんだか世界から取り残されたような気持ちになることはないだろうか。
子供が居ない夫婦
同棲

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見城徹/たった一人の熱狂

見城徹/たった一人の熱狂

見城徹氏は、幻冬舎を立ち上げた編集者だ。

私は普段、ビジネス書は読まない。

いや、正確に慎重に言葉を選ぶとしたら、

私は普段、その筆者に興味を持たなければ、ビジネス書は読まない。

そう、冒頭の彼の言葉があったから、私は彼に興味を惹かれたのである。

(もちろん幻冬舎が好きな出版社の一つであるということは大前提なのだが)

感受性が強すぎるばかりに苦しい思いをしてきた、私もおそらくそんな人間

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