マガジンのカバー画像

銀の鷹・国輿しラブストーリー

62
幼くして一族の指導者として生きることを余儀なくされた一人の少女と、彼女を愛し心から支えた戦士の物語です。
運営しているクリエイター

2020年10月の記事一覧

恋心と決意|国興しラブロマンス・銀の鷹その32

恋心と決意|国興しラブロマンス・銀の鷹その32

 今後、どう軍を進めていくか、ますます激しくなっていく戦況に、それに対する念密な計画を立てるため、そして、その為の資金繰りのため、その地での滞在は伸び続けていた。

というのもその地を後にすると、資金援助を頼めれるような大きな街はない。そして、街の自警団とは言え、かなりの兵力を持つその街は、安全度も高かった。勿論、ガートランドに抵抗している数少ない街の一つでもある。

「なー・・」

「どうしたの

もっとみる
ボタンの掛け違い|国興しラブロマンス・銀の鷹その31

ボタンの掛け違い|国興しラブロマンス・銀の鷹その31

そうこうしているうちに、その岩場のあちこちで剣を交える音がし始める。

少し腕の立つ人物の胸を借りて訓練に没頭するもの、真剣に腕試ししようと火花を散らした試合をするもの、と様々である。

「なんだ、やらないのか?」

「あ・・私は・・・・」

数人の相手をしてきたさっきの男が、汗を拭きつつ火の傍に座っているセクァヌのところへ歩み寄ってくる。

「ここでは部隊も位も関係ないさ。だいいち名乗りもしない

もっとみる
新しい出会い|国興しラブロマンス・銀の鷹その30

新しい出会い|国興しラブロマンス・銀の鷹その30

 「何よ、アレクなんて・・・」

その日、セクァヌはめずらしくご機嫌が斜めだった。
というのも、軍の野営地用にと土地を提供してくれたその街の商人の館でのことが原因だった。

「でれ~っとしちゃって・・・あんなのアレクじゃないわ!」

パカポコとゆっくりと愛馬イタカを駆ってセクァヌは一人夜道を進んでいた。

その商人の一人娘があまりにもアレクにべたべたしすぎだったのである。故に・・・見ていられなくな

もっとみる
はやる気持ち|国興しラブロマンス・銀の鷹その29

はやる気持ち|国興しラブロマンス・銀の鷹その29

 -カポ、カポ・・-
アレクシードはセクァヌを自分の馬に乗せ、テントへ向かっていた。

馬を駆りゆっくりと進む。前に座っているセクァヌの後姿を見ながら、つい今しがた見た光景を思い浮かべていた。
いや、浮かべていたというより、アレクシードの頭から離れなかった。幻想的なセクァヌの美しさと、舞い降りる精霊王・・・そして・・・

(どうかしてる、オレは。)
アレクシードはその幻想を頭から追い払おうと必死だ

もっとみる
精霊王の恋歌|国興しラブロマンス・銀の鷹その28

精霊王の恋歌|国興しラブロマンス・銀の鷹その28

その夜。
「ん?この歌声は・・・お嬢ちゃんか?」
その歌声と鼓弓の音は隣のテントからではなく、村の方角から聞こえてきていた。

その歌声を辿って村へと行く。そこにはやはり歌声に気づき、1人、2人と村人や兵士たちが集まり始めていた。

村から少し離れたところ、洪水の前、辺り一面の麦畑だったところから歌は聞こえていた。

今は流木などがまだそのままになっていて荒れ果てている。

その中央にセクァヌは座

もっとみる
姫の取扱説明書|国興しラブロマンス・銀の鷹その27

姫の取扱説明書|国興しラブロマンス・銀の鷹その27

 「では、労力の援助はやはりできないのね、シャムフェス?」
「残念ながら。」

その日軍が通ってきた道筋に、1つの農村があった。が、そこは半月前程に降り続けていた雨により増水した川の決壊で、村全体が破壊し尽くされていた。水は引いたものの、家屋は倒れ、田畑はとても作物が作れる状態ではなかった。

生き残った村人達は村近くの高台で仮住まいを作り、なかなか進まないまでも、少しずつだが復旧作業をしたいた。

もっとみる
花冠のプロポーズ|国興しラブロマンス・銀の鷹その26

花冠のプロポーズ|国興しラブロマンス・銀の鷹その26

レク、なーに、これ?」
鞍の横に下げてあった小袋を見つけ、セクァヌは手に取りながらアレクシードに聞く。

「あ・・い、いやなんでも・・・」

「ふ~~ん・・・?」
疑わしそうな目をしてセクァヌはアレクシードを見つめる。

「なんでもないことないでしょ?」

「な、なんでだ?」

「だって・・・アレクがどもる時って、いつも絶対何か隠してることがあるんだもの。」

「か、隠してることなんかないぞ?」

もっとみる
はじめてのプレゼント|国興しラブロマンス・銀の鷹その24

はじめてのプレゼント|国興しラブロマンス・銀の鷹その24

 城の外へ出、街の中心地にある広場の入口に馬を繋ぐと、2人は歩いて回ることにした。

-わいわい、がやがや-
様々な露天商が並ぶそこは買い物客などで賑わっていた。

「迷子になるなよ。」
アレクシードはセクァヌの肩に手を回し、そっと引き寄せる。

「はい。」
セクァヌにはそれがたまらなく嬉しく思えた。

「そこの戦士のお兄さん!恋人に一つどうだい?」

通りを歩く2人に元気な装身具を取り扱っている

もっとみる
愛しい人は?|国興しラブロマンス・銀の鷹その23

愛しい人は?|国興しラブロマンス・銀の鷹その23

 「どうじゃの、姫、この後街へ出かけられては?」
朝食の席で、レイガラント王がセクァヌに話し掛ける。

「はい、そうさせていただきます。」

「では、輿を用意させるとしよう。それから、王子もご一緒してよろしいかな?」にっこりと微笑むとセクァヌは答えた。

「ありがとうございます。でも、私そういったものには慣れてませんし、それにもう約束がしてありますので。」

「約束?」

「はい。せっかくこうして

もっとみる
幻夢恋慕 |国興しラブロマンス・銀の鷹その22

幻夢恋慕 |国興しラブロマンス・銀の鷹その22

 「シャムフェス!」
「ん?なんだ、アレク?」
セクァヌの後を追って歩いていた途中でシャムフェスの姿を見つけたアレクシードは声を荒げて呼びかけた。

「なんだ、じゃないぞ?お前・・お嬢ちゃんになんてこと言ってくれたんだ?」

「なんのことだ?」
そう言われて、アレクシードは口ごもる。

「う・・い、いや・・・・つまりあれだ・・・昨夜の・・・」

「それがどうかしたか?」
どうやらシャムフェスは本当

もっとみる
一件落着|国興しラブロマンス・銀の鷹その21

一件落着|国興しラブロマンス・銀の鷹その21

その翌日。
「お・・おはよう、お嬢ちゃん。」

宮殿の廊下でセクァヌに会ったアレクシードは、必要ないとも思えた後ろめたさを感じながら声をかける。

「おはようございます、アレクシード。」

「お嬢ちゃん!」

冷たい口調ですっと横を通り過ぎようとしたセクァヌを、アレクシードは肩を掴んで止める。セクァヌが『アレクシード』と彼を呼んだのは、出会った直後以来だった。

「何怒ってるんだ?」

「怒ってな

もっとみる
男の事情|国興しラブロマンス・銀の鷹その20

男の事情|国興しラブロマンス・銀の鷹その20

 そして、今一つ街を開放したあと、スパルキア軍はレイガラントの国都に入っていた。
街の外に広がる野原に野営地を張ると、レイガラント王から招待されたスパルキアの首脳陣は、城を訪れていた。

「わはははは・・・それででござる・・・・」
宮殿の大広間、国王との対面も終え、双方の首脳陣は食事を取りながら和やかに談笑していた。

「さて、夜も更けてきたことだし、どうですかな、そろそろ?」
アレクシードらと話

もっとみる
憤りと逆転勝利|国興しラブロマンス・銀の鷹その19

憤りと逆転勝利|国興しラブロマンス・銀の鷹その19

-ブルルルル・・・・-

軍の先頭に立ち、間もなく敵兵の集団が見えるであろう方角をセクァヌはじっと見つめていた。

「姫!」
馬に乗ったカシュラン王子がセクァヌに近づく。

「姫、私もご一緒します。」

(守るとでもいうのか?お前のような若造が守れるようなお嬢ちゃんじゃないんだぞ?!)

一旦戦闘が始まれば、常に激戦地のしかも中心にその身を置くセクァヌ。
それを思い、アレクシードはそう叫びたかった

もっとみる
すれ違う心と心|国興しラブロマンス・銀の鷹その18

すれ違う心と心|国興しラブロマンス・銀の鷹その18

戦士以外の何者でもないアレクシードは、そういったことは大の苦手だった。贈り物ややさしい言葉・・そして甘く囁く愛の言葉。

が、決して彼の風貌が合わないというわけではない。
どちらかというとアレクシードの顔立ちで言われたら心躍らせない少女はいないだろうと思われた。

性格的にそういったことは苦手だけなのである。

そんなアレクシードをシャムフェスは宝の持ち腐れだと時々からかった。
戦士アレクシードの

もっとみる