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はるたま
2020年12月4日 18:42
翌日、シャムフェスから山のような祝いが届き、アレクシードは、2人の仲でそんな形式張ったものはいらないのに、とお礼を言いがてら文句を言いにシャムフェスの屋敷へ出向いていた。「なんだ、あれは?」「あれとは?」「あれだ!あの山のようなものはなんだ?あれほどのことする必要もないだろ?」「ああ、そのことか・・・まーな、普通の誕生祝いならそんなこともしないけどな。」「なんだ、そりゃ?」
2020年12月4日 18:40
・・・・・月日は流れ・・・・・「落ち着けって、アレク!」「そんなこと言われてもだなー・・・・」産屋の前であっちへ行ったりこっちへ来たりしてうろうろしているアレクシードを、シャムフェスが笑う。「お前のお嬢ちゃんなら大丈夫さ。」「そうだろうがな~・・・・・」心配は心配だぞ?とアレクシードは目でシャムフェスに言う。「ったく・・・本当に姫のことになるとお前は昔っから・・・」
2020年12月3日 06:17
「なんだ、そりゃ?」「「なんだ」・・って・・・だから夢だって言ったでしょ?」民の代表者が一同に集まり、新しい国の船出を祝う祝賀会も終わったその夜、セクァヌを屋敷まで送り届け、帰る前にと進められたハーブティーを飲みながら、セクァヌが少し話しにくそうにアレクシードに話した夢の話。じっと黙って最後まで聞いていたアレクシードは、明らかに怒った表情で、セクァヌを見つめていた。「それは別に構
2020年12月2日 09:27
「な、いっそのこと悲しみに背を向けるんじゃなくて、向かっていかないか?」「向かって?」「ああ。」シャムフェスはセクァヌを墓の横にあるベンチへ座らせ、自分もその横に座る。「他の奴らじゃセクァヌの素顔をあまり知らないのと一緒で、アレクの素顔も知る奴はそういないだろう。たぶんオレとセクァヌだけじゃないか?」セクァヌは何が言いたいのかわからず、きょとんとしてシャムフェスの言うことを聞い
2020年12月1日 06:14
「姫・・・さあ涙を拭いて。」泣き収まるのを待ち、シャムフェスはそっと姫をその腕から放し、ハンカチを渡す。「ハーブティーでも持ってきましょう。」イスに座らせ、シャムフェスはお茶をいれるため別室へと行く。「どうぞ、姫。」「ありがとう。」一口飲むととてもさわやかな口当たりが新鮮だった。「シャムフェス・・」「なんでしょう?」黙って前に座り、やさしく微笑んでいるシャムフェ
2020年11月30日 06:37
その翌日、派手なのが嫌いなアレクシードの埋葬を、主だった数人のみで済ませる。「アレクのバカ!うそつき!」その前日、悲しみを忘れようとセクァヌは散々悪態をついていた。「いいでしょうか?」地中へ横たわらせたアレクシードの遺体に少しずつ土をかけていく。その手にはセクァヌが18になったら返すようにと渡した銀の剣を握り締めさせてあった。その剣を握り締めたアレクシードの死顔は、安らかな笑
2020年11月29日 07:32
平穏に時は過ぎていった。そしてその中で、スパルキアの民全員が心待ちにしていたもの。それは銀の姫セクァヌとアレクシードとの婚儀。族長から下り一人の娘として愛しい人のところへ嫁ぐ。その発表は人々を驚かせた。が、国は代表制というものを取り入れ、人々の声が聞こえるようにと組織されていく。不安は何もなかった。そして、初めてその代表がそろい、新しい国としての1歩を歩み始めようとしていた
2020年11月27日 09:07
「アレクーー!」「お嬢ちゃん!」武器の代わりに農具をその手にしているのは、アレクシードも例外ではなかった。「ふふっ・・、アレクには剣しか似合わないと思っていたけど、なかなか様になってるのね。」畑の開墾のため、野に出ていたアレクシードに走り寄りながらセクァヌは微笑む。「もともとスパルキア人は農耕の民だからな。それに力仕事には大いに役立つ。」むん!とアレクシードは力こぶを作って
2020年11月26日 06:17
「私は支配するために来たのではありません。一族の解放と圧制に苦しんでいる人々の自由を取り戻す為に来たのです。戦などない、平和なそして平穏な日々を、だれもが過ごしていくことができるように。」スパルキア族長銀の姫、セクァヌは、ガートランドの民の前で静かにそう言い、あとを元大臣であるコスタギナに任せ、一族と、そして共に行くことを希望する者たちを引き連れそこを後にした。セクァヌ、16歳8ヶ月、気の
2020年11月25日 15:39
男が一人悲鳴を上げて外へと飛び出すと、セクァヌにくってかかった男があごで他の男に何やら指図すると、男はすっと部屋の外へ出て行った。何事が起きてるのか、と思っていると、そのリーダー核の男は、セクァヌににこっと笑った。「さすが銀の鷹姫。正直、オレでもびびった。」「え?」訳がわからずつい今しがたの威厳もどこへやら。セクァヌは唖然として男を見つめる。「くくくっ・・・話に聞いてたとおり
2020年11月24日 09:55
3人は地下水路をひたすら走っていた。「このくらいあそこと比べればどうってことないのに、ダメね、明るさに慣れてしまって。」走りながらレブリッサが言う。「そうね。確かに感覚はあの頃より落ちてるかもしれないわ。」セクァヌも同感だった。「でも、レブリッサが盗賊だったなんて思いもしなかったわ。」「でしょうね。まさか大臣夫人がそんなだとは誰も思わないでしょう。それに実際に結婚したわけじ
2020年11月23日 09:40
「大丈夫、私がついてるわ。」心配そうなアレクシードにレブリッサがにっこりと笑った。「彼らは大丈夫だと思うけど、もしもの時はアレクの大切なセクァヌは私が必ず守ってみせるから。」「あ・・・・・・・・」アレクシードはレブリッサの言葉に照れ、反論する機会を逃す。「でも、レブリッサ、大丈夫なの?」セクァヌが心配して言う。「あら、セクァヌ、あなたにダガーを教えたのは誰でしたかしら?
2020年11月22日 06:21
「公開処刑・・・・・・・」急いで駆けつけたセクァヌとアレクシードを待っていたのもは、ガートランド王からの書簡だった。それは、明後日の夕刻までに、セクァヌが王の元へ投降しなければ、農奴となっているスパルキア人を1名ずつ処刑する、といったもの。部屋に集まり、テーブルを囲んでいた一同に動揺が走る。「そんな・・・・・」セクァヌの脳裏に、幼いとき自分の代わりに次々と斬首されていったガシュ
2020年11月21日 06:18
「かわいい~~!」スパルキアはガートランドとの決戦を間近に控え、開放したジオセルの小さな村の申し出を快く受けてその村はずれに本拠地を置いていた。そこの馬小屋で、仔馬が産まれていた。「わーん、お乳の匂いと干し草の匂いがする~~。」セクァヌは上機嫌でその仔馬を抱いていた。(戦場でのあの戦神ぶりからはとてもじゃないが、想像できないな。そのへんにいる少女と全くかわらない・・・。)そ