マガジンのカバー画像

ありがとう(*´ω`*)

226
みんなのフォトギャラリーで使っていただいたすてきなnoteたち ご利用いただいた回数が1000回を越えました! ↓100回達成時のnote https://note.mu/ho…
運営しているクリエイター

#小説

カゴの中の天使

私は彼に捕まえられた。 天使と言う存在は、人間からしたら珍しいようで、 政府がきびしく保護する対象だそう 政府に見つからないようにこっそりと私を守ってくださる 鳥かごからは出られない 私はいつも彼を見ているだけ たまに静寂を殺すように羽をパタパタと鳴らせてみせるの。 それでも彼は5回に1度ほどしか振り向いてくださらないけれど ご主人は1人で生きていらっしゃる いつも何かを熱心に書いている だからできたペンだこ あの華奢な見た目からは想像ができない、あのゴツゴツし

短編小説 幻谷(まぼろしだに)⑥

「決まってんだろ!試験に行くんだよ!!」 シンと静まり返った白い坂道で自分の声が反響する。俺と親父以外この世界に存在しないような、不思議な感じがした。 「はぁ?そんな体で試験に行っても、受かるわけないだろ」 呆れた声で当たり前のように決めつけてくるあの表情が、憎くてたまらない。 親父はなんでもそうだ。相手を馬鹿にしたよう態度で「ありえない」とか「当たり前だろ」とか言って否定した後に、自分の狭い了見で考えたこの上なく普通のことを「お前ら、こんなこと考えつかないだろ?」み

鳥かごの鍵 5

私は顔を洗い冷静になった、 「私何してるんだろ!彼がいるのに!」 と大きな声で独り言を言って洗濯を始めた、 お休みの日はいつもシーツを洗濯する。 私は洗濯を終え、ベランダにシーツを干して、 「月」からのメールに返信するか考えていた。 このままメールを続けていいのかな? 彼を裏切っている訳じゃないし、 男友達とメールしているだけだもん! 悪いことはしていない! と自分に言い聞かせる、 でもなぜか心の中には罪悪感がある。 彼がもし私以外の女の人とメールのやりとりをしていた

好きな短編3作品について語ります  その①の②

 いつもお世話になっております、書店員のR.S.です。みなさんは美しい文章とミステリというふたつの言葉を聞いて、どの作家を頭に思い浮かべますか。(敬称略になりますので悪しからず)北村薫、奥泉光、浅倉卓弥、久世光彦……色々な名前が挙がるとは思いますが、おそらく今回紹介する短編小説を書いた連城三紀彦の名前を挙げる人はかなり多いのではないでしょうか。  二作目は、そんな連城三紀彦の代表作『戻り川心中』に収録された一篇、  ②連城三紀彦「桔梗の宿」(光文社文庫『戻り川心中』所収)

彼女と私と恋と

「ねえ,私じゃダメだったのかな。」  そう言った彼女のまつ毛は小刻みに震えている。目を合わせれば美しく透き通った雫が見えることなんて嫌というほど私は知っている。私は困ったように微笑み,ハンカチを差し出す。 「今回もダメだったみたい」  彼女からメッセージを受け取ったのは昨日の深夜だった。私たちはお互いに就職してからは頻繁に連絡を取り合っているわけではない。ただ,一日数回の他愛もないメッセージのやり取りが途切れたことも無い。  そんな彼女が必ず連絡してくる時がある。私は特に

【声劇台本】009「恋愛迷子」

今日は不器用社会人の恋愛ドラマです。 <配役> 女(25)会社員 男(25)会社員 ―――本編――― 女のMO「気がつけば仕事終わりに毎日あなたと待ち合わせ。一緒に飲みに行くのが日に日に待ち遠しくなるなんて思ってもみなかった」 男「好きな人とかいないの?」 女のMO「居酒屋で。あなたの直球な質問に一体何て答えたら正解なんだろう!?」 女「好きな人ができたら一番に報告いたします」 女のMO「あっ! 間違えた! これじゃあ、あなたは恋愛対象じゃありませんって、線を引いたと

よだかの星は空に流れる【エッセイ】

そしてわたしは、空に溺れる。 とにもかくにも、こうしなければならない、こうでなければならない、と断定する言い方をされてしまうと、あまのじゃくなわたしはつい反抗してしまいたくなる。 だからわたしは、冗談以外で絶対にこう、という言い方は避けてしまうが、唯一、これは絶対にこうだよね、と同意、共感を求めてしまうものがあるとするならば、それは宮沢賢治の短編小説、「よだかの星」についてである。 『よだかは、実にみにくい鳥です』から始まる、本当に短い物語なのに、こんなにも美しく、涙が

四月ばかの場所22 前進

あらすじ:2007年。キャバクラで働く作家志望の早季は、皮肉屋の男友達「四月ばか」と一年間限定のルームシェアをしている。社会のどこにも居場所を感じられない早季は、定住しない四月ばかの生き方をロールモデルとしていた。ある日トリモトさんという変わった男性と知り合い、急速に惹かれていく。 ※前話まではこちらから読めます。 ◇ ヒロ君のことを四月ばかに話すと「本気だったのかもな」と言われた。 「そんなことないよ。きっとヤリたいだけだったんだよ」 そうであってほしい。 こう

そしてアイコは疎開した (月と肉)

例の経営者さんが月に行くとか、話しになるのはテレビの中だけになって、周りの空気的には正直「勝手にすれば」みたいな印象があるようだけど、私にとってあの人の”月”を欲する気持ちはかなり残念な、というより“やっぱりか”っていう感じだった。 私たちの周りのモノには、どんどん値札が付けられて、なんでも商品になれるようになって、あの人はその富を使えばなんでも手に入れることが可能になった。 もう、地球の中の欲しいものは、全部手に入るようになった。 その先に”月”というものが浮かんでく

善事も一言、悪事も一言 capter2 『南方成子の結婚前夜』3

「え?ツインで相部屋なんですか?」 「はい。酒阪俊輔様と南方成様のお二人でご予約されています」 「ミナミ?カタナリ?ああ、もしかして男性二人になってるんですか!ええマジで困ったなあ」こんな具合に成子はミスを装って俊輔と相部屋になるように部屋を予約していた。「いまから二部屋って用意できますか? ダブルでも構わないですから」  時期としては繁忙期とはいえなかったが、如何せんホーム開幕戦に九州各地から馳せ参じたホークスファン(中には関西から駆けつけた南海時代からの古参も)が博

『雪はまだ解けない』

「サンタクロースが来なかったの」  突然現れた千雪の、開口一番の言葉がそれだった。かれこれ半年以上も会っていなかった彼女との再会を、感動で包む暇もない。 「え?」 「だから、サンタクロースが来なかったのよ」  カレンダーさえ見ていれば今日という日の意味は明白だった。 「今日ってクリスマスだっけ?」 「聖ちゃん、忘れてたの?」 「わ、忘れるわけないだろ」 「そうよね。ウチで一番幸せな頭をした聖太朗が忘れるわけがないわね」  何ということだ。去年まで千雪のために散々プレゼントやら