宇治川は身を投げたくなる〜京都の大学生による京都のすゝめ〜


橘の小島から見た宇治川


諸君、宇治川は何を見る場所だと思うかね。

うん、うん、

平等院。
そうだな、私も浄土式庭園は大好きだ。ちなみに福島県の白水阿弥陀堂はおすすめだぞ。

抹茶!
見る物ではないが食べるには抹茶が有名だな。

宇治上神社。
だいぶ渋いものを知っているな。個人的には世界遺産の中で最も地味と言いたいほどに地味な神社だ。しかし非常に奥深い。

なぜ宇治に惹かれるのか。
京都の大学生としてはやはり、嵐山と同じ区分で考えてしまう。

嵐山も宇治も見るべきものは決まっている。

それは、山と川だ。


人間にしたら常にも見える山と、一瞬たりとも同じ姿にない川。
その表情で心を鎮め、動かすのだ。

山は季節で表情を変えるがその強さは揺るぎない。しかし、嵐山や宇治の山々はゆるやかでどこか天女が羽衣で撫でたような優しさがある。

川には川鵜など鳥や魚が見えるところで生き生きと動き回り、水が岩に堰き止められてはまた繋がりいかようにも変わるものだから見ていて飽きることはない。

宇治はその川が特徴だ。

宇治川は流れが早く、波が立っている。そして、死をかき立てる音がする。


その激しさは神をも思うものだ。

その川の音にかき立てられそのまま橋の上から飛び込めば易々と絶えてしまうように思える。


宇治川に身を投げたことで有名なのが『源氏物語』の宇治十帖に登場する浮舟と呼ばれる女性だ。

簡単に説明すれば薫と匂宮の間に挟まれ自殺未遂を図ってしまう。そこがここ宇治川である。
(浮舟の詳細はwikiで確認してみてください。https://ja.wikipedia.org/wiki/浮舟_(源氏物語)

宇治十帖と呼ばれるだけあり舞台は宇治であるが宇治川は特に、「浮舟」で象徴的である。ぜひ読んでもらいたい。

宇治川は駆け落ちのような密会と恋愛の末の入水という激しい物語の舞台となっているのだ。


 「なほ、わが身を失ひてばや。つひに聞きにくきことは出で来なむ」と思ひ続くるに、この水の音の恐ろしげに響きて行くを、
「かからぬ流れもありかし。世に似ず荒ましき所に、年月を過ぐしたまふを、あはれと思しぬべきわざになむ」など、母君したり顔に言ひゐたり。
昔よりこの川の早く恐ろしきことを言ひて、「先つころ渡守が孫の童、棹さし外して落ち入りはべりにける。すべていたづらになる人多かる水にはべり」 と、人びとも言ひあへり。


こんな文章もある。あの宇治川の死をかき立てる音は紫式部の耳にも届いていたのだろう。宇治川の水の音により浮舟の入水願望が芽生えてしまった。

ちなみに大河ドラマ光る君へでも宇治川が登場している。主人公まひろ(紫式部)と道長が共に川を眺めるのだ。
宇治川を知ってしまうと激情の逢瀬のように解釈してしまうが……。


和歌だと宇治(うじ)は憂し(うし)を彷彿とさせる。

憂いも流されていきそうな勢いの川だが、真に憂いている者を連れ去ってしまいそう。いにしえの人々もそう思ったのだろうか。

ただの言葉遊びではない、本当に憂し命を失うのが宇治川であるのかもしれない。


宇治川のいとあらましき水の音思ひ立つ身は波に消え失す


自作。宇治(憂し)川のとても激しい水の音、そこで決心した(憂う)身は波に消えて見失(うし)ってしまった。


では、また。


ポケモンのマンホール


追記
ポケモンのマンホールがあった。
ヒバニーとパッチール。
めちゃくちゃかわいかった。

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