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『夢を操る マレー・セノイ族に会いに行く』
「夢をコントロール」できたら…ムフフ
下心丸出しで読みだした本書ですが、意外と「学び」につながることができました。
人って、毎日寝て夢を見るのに、夢について本気で考えることってあまりない。夢を見ている時間や、そこから学びを得ないことはもったいないと思いませんか?個人的にちょっとつっこんで学んでみたい分野です。
ちなみに、○○な夢を見たいという目的で「見る夢をコントロールする」という話は一切出ません。あくまで「見ている夢の中でどうするか」という話です。
一緒に学びましょう!
ざっくりあらすじ
本書は、「夢をコントロールすると言われるセノイ族の話」です。
著者の大泉さんは、「セノイ族の夢コントロール」を知り、日本で学者から話を聞くのですが、どうやら「否定的な人が多い」ことを知ります。
「だったら自分で行って調べよう」と、実際にセノイ族に会い、さまざまな学びを得ます。
計3回セノイに会いに行くのですが、3回目はあの水木しげるさんと行ったんですよ。すごいですね。
セノイ族の夢の見方(現地に行く前)
①危険に立ち向かいそれに打ち勝つ
②夢の中では快楽を目指して進む
③プレゼントや宝物をもらう・ねだる・みつける
④夢の中の友達を得る
⑤夢の中で得たよいものは、夢の友達と分け合う
これはセノイ族についての論文の内容とのこと。さて、この内容は本当なのでしょうか?
セノイの文化
文字を持たないセノイは、夢によって文化を伝達・伝承してきました。彼らの中で、夢はそれだけ重要な位置を占めてきたのです。
しかし、新しい文化が入ってきて、若い人たちが自分たちの夢の文化に興味をもたなくなってしまった。この本が出たのが25年前、今はどうなってしまったのでしょう。
ところで、セノイの人たちは「自分たちは夢をコントロールしている」とは言いません。
彼らはまったく意識せず、無自覚のうちに「夢コントロール」を実践している。
これが著者の仮説です。
アニミズム(精霊信仰)
セノイの夢の文化を支えているのは、強烈な精霊信仰です。夢の中で歌や踊りを教えてくれるのは、人の姿をしていたとしても、それは精霊であると言います。
日本から現地に持っていって一番ウケたのは、水木しげるさんの『日本妖怪大全』だったそうな。これは精霊信仰が強いからかもしれませんね。
夢のサイン
「夢のサイン」なるものがあります。
個人のサイン 個人ごとに異なるサイン
共通のサイン 集落単位での共通のサイン、すべての人に共通のサイン
例えば、「トラの夢を見て風邪をひくということが2回あった」としたら、次に「トラの夢を見たら風邪をひく」サインだと気をつける。といった具合です。
サインを見つける方法は、夢を見た当日、あるいはその後数日間に、何があったか思い出してみる。これだけです。
上の「風邪のサイン」のような体調に関するものは、実際にありそうですね。
興味深いのは、セノイ族は個人史の中で、夢と日常の関連について観察を積み重ねて「自分の夢のサイン」を獲得するのが大切だとされている点です。
これは、「自分を深く知る」行為ですね。
ところで、セノイの中でも、飛ぶ夢を見るのは難しいとされているそうです。その人がシャーマン・薬師・善人であればよく飛ぶ夢を見るそうです。
私、飛ぶ夢をたまに見るんですよね。シャーマンなのかも😲
夢の変換
「夢を見たら、自己にとって重要なものへとイメージを展開せよ。」
例えば、著者が見たガメラに火を吹きかけられる夢はいい夢だと言われます。
「火を吹きかけるというのは、君を強くしようとしているんだ。火を吹きかけて、君を鍛えようとしているんだよ。ガメラを恐れず仲良くできたら、勇気と強さを手に入れる」
ポジティブ変換力がすごいですね!
他には、以下の例もポジティブに変換しています。
夢の中で、君に暴力を振るったり、悪いことをする人間がいたとしよう。目が覚めてその人に会っても、恐れて避けてはいけない。むしろ近づいていって仲良くしようとすれば、友だちになることができるはずだ。
セノイは、夢を通じて自分の中のネガティブな心的エネルギーを、ポジティブな方向に変え、楽しく生きようとしているのです。著者も書いてますが、「セノイの夢の文化というのはなかなかに侮れない」ですね。
夢の中での学び
「悪夢を恐れるな」
「夢の中で知識を学ぶ姿勢を持て」
著者は旅の中でも頻繁に夢を見るのですが、その内容を話したときに上の言葉を教えられます。
「夢の中で積極的に行動することは大切なんですか?」と著者は聞きます。
「そのとおり。学校と同じだよ。知識を学ぶために積極的に手を挙げ、質問するだろ。夢の中で学ぼうとすることや積極的に行動することは、とても重要なんだ。」
この辺の話、すごくスキです。
「夢の中でも学ぶ」って素敵じゃないですか?
夢の教育
セノイの夢の教育はこんな感じです。
無理に教えようとすると、子どもはひねくれて、親の話を聞かなくなってしまうだろう。その代わり、自分の経験を話すんだ。そうすると子どもも自然と夢の話をする。夢の知識というのは、経験によって個人が学んでいくものなんだ。
これって、夢に限らず「教育全般」について言えそうですね。
このようにセノイは夢の見方、「夢の中で意識的に行動し、何かを学ぼうとすること」を教え、夢の内容を変化させているのです。
著者が得た気づき、学び
さて、セノイとのこのような経験を通して著者が得たものは何だったのでしょうか?
✅夢を見ることは、今まで意識していたのよりはるかに自分のじぶんに迫れる新しい世界を知る発見だ。
✅夢そのものの体験と、それを味わうことが大切だ。
✅夢を楽しめる人間と、そうではない人間の対立なのかもしれない。
✅自分の中のアニミズム(精霊信仰)
アニメや特撮で育った世代には、意識の奥に彼らが住む世界があり、一種独特なアニミズムの体系をつくりあげているのではないか。そういう一皮むいた下の世界とうまくつきあえば、現実の世界でも元気で生きられるのではないか。
セノイといっしよに生活してみて、逆に、自分の中のアニミズムや、自分を育てたメディア文化が見えてきたのが面白かった。
親とチャンネル争いをしてガメラやゴジラだのを食い入るように見つめてきた。子どもの当たり前だった時間が、実はとてつもなく大切な時間だったのかもしれないと思えてきた。
✅夢を介した情報
氾濫する情報にふりまわされている自分を見ていると、セノイが、夢という一度自己の深部を通過した情報を大切にしていることが、大きな意味を持っているように思える。
✅誰もやったことのない冒険
冒険がやり尽くされた現在、残っているのは、水木しげるさんの妖怪探険のように「誰にでもできるが、誰もやったことのない冒険」なのだと思う。
私の学び
✅夢の中でも学べる!
夢って、現実世界の繰り返しではなく、新しい経験をしています。
それって夢の中を「学びの場」であると考えてよいのではないでしょうか。受け身で見せられているだけか?、積極的に関わろうとするか?、簡単ではないでしょうが、私は後者を選びたいです。
夢の中で積極的に学ぼう!
✅夢と現実で強い心(じぶん)をつくるサイクルを回す
本書の中で言及はなかったのですが、
①夢の中で積極的に行動するには、現実世界でも積極的な「意識」を持つ。
②夢の中で積極的に行動する。または、夢でのできごとをポジティブに変換する。
この2つのサイクルを回すことで、強い心、強いじぶんをつくっていくことができる、と考えます。
つまり、
夢で成長できる!
今後調べたいこと
✅ユング派の心理学者 河合隼雄氏の著作
難解なユングの思想が、関西人の文体で明快に語られる。ユング派の印象をまったく覆した。
✅『夢学』 パトリシア・ガーフィールド
セノイ式夢コントロールの出自。キルトン・スチュアートの論文『マラヤの夢理論』が含まれる。
✅『水木しげるの大冒険』
水木しげるさんとセノイに行った話が書かれている。中古しかなくて、気軽に払える値段じゃない😓
✅明晰夢 ラバージュは科学的に証明
この主張には多くの批判がある。ラバージュのやっていることとセノイのやっていることはほとんど同じだが意味づけが全く違う。
本日の学びはここまで。また来てください👋
読書期間 2021/04/05-2021/04/16
初版発行 1996/11/15
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