げんさん

教育、家庭、子育てなどに関して考えていることを。 塾の先生(自営)/キャリアカウンセラー

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教育、家庭、子育てなどに関して考えていることを。 塾の先生(自営)/キャリアカウンセラー

最近の記事

教育は能力開発なのか

教育基本法が平成18年に改定され(改正とはあえて書かない)、改定前にはなかった「能力」という言葉が使われるようになった。 改定後第二条(教育の目標)  …個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし~ 改定後第五条(義務教育)  …普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ~ そんな変化と関連しているのかいないのか、 最近、『教育』と『能力開発』が混同される現象が気になっている。 その教育は、どこへ向かうのか 教育関係者(塾の先生、学校の教員等)との対話の機会があると、ずい

    • 生徒の話を聴くということ

      コンビニほどのカウンセリング施設を信田さよ子氏は著書『カウンセリングで何ができるか』で、「コンビニほどのカウンセリング施設が必要だ」と言った。 本当にその通りだと思った。同時に、どうやったらそんな仕組みが可能なのかと半ば絶望した。 とりあえず、その1軒になれることを目指して小さな学習塾を作った。 東畑開人氏の著書『ふつうの相談』を読んだ。 非常に勝手ながら、「信田さんが立てた問いへの、東畑さんの答えだ」と思った。 「学習塾」を名乗ることカウンセラーが被震災地で支援活動を

      • 高校入試問題の攻略(数学)

        大げさなタイトルをつけてしまったけれど、たまには受験に特化した話を。 横浜翠嵐高校を本気で目指す生徒をどう伸ばすか、という話をしていて、おもしろかったので記事化。 合格実績を正義とする教育からは身を引いたものの、学習塾を名乗る以上、「どうすれば入試で高得点が取れるのか」が語れるのは当たり前のことでもある。 また、入試問題を戦略的に(やみくもに大量の過去問を解いたりするのではなく)クリアしていく過程には、本来の意味での「学力」が伸ばせる部分もあると感じていて、これはこれでな

        • 高校の「探求」の授業にお邪魔した記録。

          某私立高校で行われている「探求」の授業に呼んでいただいて、ゲストとして参加してきました。 良い刺激と学びをたくさん受けたので、雑記。 人を知るためには、「なぜ」を問わない方がいい。(前書き)Q.イチゴは果物ですか? A.植物学では野菜だし、栄養学では果物。 ある問いに対する答えは、視点や目的によって異なる。 科学を学ぶ際に「なぜ」の問いが重要であることは確認するまでもないけれど、それは前提とする視点や目的がある程度絞られているから。 対人関係においては、相手のことを知ろ

          「キャリア教育」を再定義する

          キャリアコンサルタント同士のコミュニティ内で、キャリア教育についての意見発表をする機会をいただき、1か月くらいかけてじっくり考えることができた。せっかくなので文面にも残しておくことにする。 現在のキャリア教育の定義(文科省「キャリア教育の手引き」より)「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」 悪くないが、「必要な基盤となる能力や態度」って何なの?となると、この図が続く。 うーん、 ちょっと、「教育」と

          「キャリア教育」を再定義する

          学習意欲の科学を、体系的かつ簡潔に、具体的アクションまで整理したい(後篇:アプローチ)

          前篇はこちらから。 《後編の前に》※前篇に入れなかったんだけど、やっぱりここは触れておかないと…ってなったやつ。 【随伴性の認知】 自分の行動と結果の関係性に対する認知。 物理レベルで「手を離すと、物が落ちる」といった認知から、 人間関係レベルで「人に話しかけると、反応してもらえる」といった認知、など。 かなり大まかに言って、 ●自己肯定感(私は無条件に肯定される存在である) ●随伴性の認知(私の行動は、何らかの結果を引き起こす) の2つの認知を土台として、自己効力感

          学習意欲の科学を、体系的かつ簡潔に、具体的アクションまで整理したい(後篇:アプローチ)

          開業日記①

          塾を開いてもうすぐ1か月。 人生の中で何度もあることではないので、感じたことなどをメモ帳程度に残しておく。 誰かの参考になることや、読み物として面白いことはあまり期待できません。 職住最接近 大学は自転車で10分、新卒のときの職場は徒歩15分くらいだったけど、今や出勤が徒歩5分になった。驚くほど近い。 近すぎて、昼ごはんを食べに帰宅したり、あえて反対方向の喫茶店に寄ってから出勤したりしている。 だんだんルーティンができていくおもしろさ 最初の1週間ほどは、とにかく「学

          開業日記①

          『この課題、私はやらなくていいですか』

          子どもたちが騒いでいる。 自分は教壇に立って、子どもたちを鎮めなければと、声を荒げる。教卓を叩き、いちども発したことがないような乱暴な言葉を叫ぶ。 どんなに叫んでも、その声は子どもたちに届いていない。 ときおり、そんな夢を見たものだった。 決まって、嫌な汗をかいた。 こういう夢を見るのは、どうやら自分だけではないらしい。 懐に、小さな刃を持つこと。当時の自分は、生徒を“統率”しなければいけないと思っていた。 全生徒が席につき、姿勢を正しているべきだ。 全生徒が、先生

          『この課題、私はやらなくていいですか』

          学習意欲の科学を、体系的かつ簡潔に、具体的アクションまで整理したい(前篇)

          《まえがき》子どもには、もっと前向きに、自立的に学んでほしい。 そのために【学習意欲(やる気)の科学】を、できる限り簡潔に整理することを試みる。 1.研究はこんなに進んでいるのに 学び始めた当初、「褒められるとやる気が下がる」心理作用(アンダーマイニング)について知って驚いたものだった。 よく考えて学んでいくと、それは学生の頃の自分が何度も経験していたとわかった。もっと勉強しなきゃ、と思った。 その後、出会う本出会う本、 【専門的に知りたい人のための理論書】 または 【

          学習意欲の科学を、体系的かつ簡潔に、具体的アクションまで整理したい(前篇)

          【勉強②】勉強って、何のためにするんですか?

          先生、勉強って、何のためにするんですか? すごく端的に言えば、「勉強をすると勉強する人の人生になるし、勉強しなければ勉強しない人の人生になる」ということだと思うよ。 …なんか、当たり前のことだけ言ってないですか? 伝わりにくい言い方になってしまったね。 もう少し噛み砕くと、「自由に生きるため」とか「自分らしく生きるため」じゃないかな。 自由に生きる、自分らしく生きる…。もうちょっと説明してください。 あなたは、自分らしく生きたいと思う? たぶん、そうです。 たぶ

          【勉強②】勉強って、何のためにするんですか?

          【勉強①】勉強って、役に立つんですか?

          先生、勉強って、役に立つんですか? うーーん、内容によると思うけど、あなたは役に立つ勉強がしたいってことなのかな? はい。 何の役に立つと良いんだろう? えっと、生きていくこと、とかですかね。 なるほど。じゃあ、学校で勉強している9科目の中では、あなたがいちばん勉強したいのは技術家庭科かな。 どういうことですか? 生きていくための「衣食住」の勉強をするのは技術家庭科だと思うんだけど、どうかな。やる気出る? いや…あんまり出ません。 じゃあ、問いが違うのかもし

          【勉強①】勉強って、役に立つんですか?

          好かれる先生であろうとすること

          生徒の学力を伸ばすために必要なことは? の問いに対する答えは多岐に分かれるが、「好かれる先生であること」を外してはいけないと思う。 「生徒から好かれるためにやってるわけじゃない」 「先生は人気商売ではない」 「厳しいことを伝えるのも先生の役目」 …などなど、様々な言い回しで、先生の「嫌われることへの覚悟」のようなものが語られる。 確かに、好かれることが目的になってはいけない。その意味では、正しいと思う。 でも、それって、暴力を正当化してるだけじゃないの?と感じることが、多

          好かれる先生であろうとすること

          人生の「可能性」は減っていくのか

          以前働いていた学習塾では、 「上位校への進学=未来の可能性の拡大」 というロジックが広く使われていた。 そんな適当な論法で生徒が追い詰められていくのが嫌だった。 「なぜ、そんなに勉強を頑張っているの?」と生徒に聞いて、 「将来の可能性を広げたいからです」と返ってきたことがある。 生徒の顔は真剣で、しかし、どんなに話しても中身は何もなかった。 あの、足元が揺れるような感覚は、まだ覚えている。 noteの題材に選んだので、2つの視点で考え直す。 【ひとつめ】 「可能性」とは

          人生の「可能性」は減っていくのか

          健康で文化的な最低限度の

          何年前だったか定かでないが、 このまま教育ビジネスの世界に居座って良いのかと疑問に感じ始めたきっかけの1つが、教育格差の深刻さを知ったことだったと思う。 所得の格差が教育格差になり、教育格差が次の所得格差へとつながる、連鎖。 「中学校までは義務教育で保証されているからいいじゃないか。そこからは本人の努力の問題だ」というような人はこのnoteを開かないと思うので、その点は論じない。 経済的な背景によって受けられるサービスに差があるのは、部分的にはとても自然なことではある。自

          健康で文化的な最低限度の