田村 息信

「君の代わりの人はいないんだ。君の人生は君にしか生きられないんだ。みんなそうだ。みんな…

田村 息信

「君の代わりの人はいないんだ。君の人生は君にしか生きられないんだ。みんなそうだ。みんな自分だけの命を生きている。」 (ジャズ喫茶のお客さんより)

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    本を読んだ感想を書く。洞察力を磨きたい。

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    書きながら考える。深みのあることを書きたい。

最近の記事

【読後感】宜保愛子『宜保愛子の幸せを呼ぶ守護霊』大陸書房、1991年

 宜保愛子(1932〜2003)は霊能者。1990年前後にテレビにも出て時代の寵児となった。背筋が凍りつくような霊の怖い話もできれば、愛のある守護霊の話もできる。  私は当時、半信半疑で彼女を知ったが、本当の霊能者か分からないながらも、具体的に霊の話をするので説得力はあった。  あれから30年の月日が流れた。彼女も亡くなった。そんな頃、私は全く関係のない二人から宜保愛子は本物だったと聞いたことがある。特に、その一人は親戚に霊感のある人がいて、彼女は自分と同じ見方をすると聞いて

    • 【詩】君が生まれてくれたから

      君がこの世に生まれてくれたから けんかをしていた弟と 再び手を取り合うようになった 君が生まれてくれたから 妻も子供もいない私に 生きる希望を見せてくれた 君が生まれてくれたから 君を見届ける楽しみができた このままじゃ死ねないと 君が育ってくれるから 喜びも悲哀もひとしおだ 胸一杯の愛を与えてくれて 立派に成長しつつある君を見て 私は誇りに思う 甥っ子よ 君が生まれてくれたから その存在だけで生きる力をくれる 私はきっと天寿を全うしてみせる 君にさよならを言うために それ

      • 【詩】花火大会

        私は自分の部屋にいる。 毎年恒例の花火の音が遠くで鳴っていた。 昔、これに行ったことがある。 雑踏の中、夜空に打ち上げられた大輪の花。腹に響く音。歓声。一緒に見上げたあなた。 すべてが懐かしい。 平和な夜のひととき。 花火は一瞬の夢。はかない花だから人々は乞う。非日常の一瞬を。 無限の夜空の自然に、花火職人のひらめきが宙を舞う。 玉の火薬の引火によって、飛び出し、高々と伸びて行き、炸裂とともに消え失せる。 秒単位の一芝居。 そこに、職人は長い期間をかける。消えて無くなる花の

        • 【エッセイ】私の死生観

           死とは宇宙の無限小に還るものだと思う。母なる宇宙に。身体の形がなくなるものだから。残された生きている人達に別れを告げ、影ながら見守る立場になる。また、今生きている生をいったんそこで区切るものでもある。有限の生。死を考えることは、生きることを考えること。死を考えることで、今の生が輝き始める。死は避けることができない。私だけでなく、総ての人達にも言えること。死があるから、掛け替えのない生となる。  生の無限小に還る場所はへそ下の一点である。心身統一合氣道ではこれを「臍下(せい

        【読後感】宜保愛子『宜保愛子の幸せを呼ぶ守護霊』大陸書房、1991年

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          7本
        • 2本
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          6本

        記事

          【エッセイ】知的探究とは何か

           日常、生活をしていて、問題が起きることがある。私なら、書く材料がなくなったという問題。文章を書きたい私にとっては問題である。そんなとき、そうならないためにはどうしたら良いかと考える。問題解決のための知的探究と言ってもいい。  西洋哲学では古代ギリシアのプラトン以来、知的探究を、探究対象の<想起>として理解しようとする哲学的な伝統がある。例えば、良い文章を書くためにはどうしたら良いかと考えたときに、良い文章という対象を<思い出すこと>と捉えるのである。  それは次のようなこ

          【エッセイ】知的探究とは何か

          【読後感】小野純一『井筒俊彦:世界と対話する哲学』慶應義塾大学出版会、Kindle版、2023年

           小野純一の井筒俊彦論。小野は井筒の経歴だけでなく、井筒哲学を直接解釈して論じている。真っ向から井筒と向き合っている。本書では井筒の『言語と呪術』を皮切りに論じる。「あとがき」にもあるように、著者は井筒を言語哲学者としている。井筒のイスラム思想、老荘思想、仏教、井筒の日本語主著『意識と本質』といった事柄を彼の哲学的言語観を通して著者は語る。そして、著者は井筒の言語を通した自由な思考を考察する。  『言語と呪術』に関して、小野は「井筒は生涯の中で多くの著作を生み出したが、『言

          【読後感】小野純一『井筒俊彦:世界と対話する哲学』慶應義塾大学出版会、Kindle版、2023年

          【エッセイ】認識について

           今、同じ場所で、私が見ている赤いコップと、あなたが見ている赤いコップは、本当に同じ色だろうか。  対象の色を言葉でこれは「赤」と決めてしまっているから、同じ対象であると通じるのではないか。人それぞれの知覚に若干の個人差はあっても。この色の特定のように、認識とはある程度の幅のあるパターン(ルール)で人間の見方をくくっていることだと思う。言葉で。人の間の中での認識を。だから、同じ対象を他人と共有することができ、会話が成り立つ。そこには人為的な秩序がある。文法という骨組みの秩序が

          【エッセイ】認識について

          【読後感】ソシュール『一般言語学講義』影浦・田中訳(東京大学出版会)

           ソシュールの言語学の講義録。ソシュールはスイスの言語学者。1857年に生まれ、1913年に亡くなった。ソシュールの思想は彼の講義に出席した学生のノートで知られてきた。中でも、バイイとセシュエが編集し出版された『一般言語学講義』は、近代言語学の確立に大きく貢献し、近代言語学の祖と言われている。だが近年、この講義録はバイイとセシュエがかなり大胆に編集したので、ソシュールの考えの流れを忠実に反映していないことが問題になっている。そこで本書が翻訳の元としたコンスタンタンのノートは、

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          【概念集 1】本質

          1.  物事の本来の性質や姿。それなしにはその物が存在し得ない性質・要素。 2.1.  哲学で、あるものをそのものとして成り立たせている、それ独自で、不変の性質。例えば、動物を動物たらしめている性質。本性。この本質を言語化したのが定義になる。英語のessenceの訳語。 2.2.  古代ギリシア哲学では、変化する現象の背後にあってそれを支えている恒常的な本体。この意味での本質は実体として形而上学的な存在と解される場合が多い。その反対が、現象。 2.2.1  この本質の「

          【概念集 1】本質

          【読後感】中野信子『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版)

           中野信子『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版)をKindle版で読んだ。  運のいい人を科学的に書いているようなので、本書に興味を持った。私も強運の持ち主になりたいため。  読みやすかった。運のいい人の共通点を科学的な事実で説明。運は生まれ持ったものではなく、考え方次第で良くなるとの事。意外だったのは、科学を標榜しているのに、祈ることも大切だと書いていること。それによって、運のいい脳が作られる、との事。祈りは私も良いと思うが、果たしてこれは科学と言えるの

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          【読後感】カント『純粋理性批判』中山元=訳・解説(光文社古典新訳文庫)

          (2013.3.15 読了)  哲学に興味のある人にとって、避けて通れない本がカントの『純粋理性批判』です。カントの代表作です。  この書名にもある「批判」について触れたいと思います。一般的に批判というと、人の欠点をあげつらい攻撃するイメージがあると思います。ですが、カントの「批判」は違います。「明らかにする」という意味です。人間の理性と感性を明らかにすることです。この人間の存在の基本的な条件の明確化です。この本は認識論になります。ただの攻撃ではないところにカントの品の良さ

          【読後感】カント『純粋理性批判』中山元=訳・解説(光文社古典新訳文庫)

          【エッセイ】私の哲学観、私の生き方

          「分からないけど、分かりたい」  私にとっての哲学はそういう存在。現象の根源へ。分からないからといって投げ出さず、分りたいという好奇心をかき立てられるもの。私の興味の趣くままに。分かったような氣になることもある。だが、それはあくまでも仮固定。最終的な結論ではない。それだけ、哲学は奥が深い。いつも未知の謎が残る。哲学にも流行がある。そのときは流行っていても、時代とともに廃れることがある。それでも、時代を経てまた盛んに議論されることもある。哲学も分野によって浮き沈みがある。どの

          【エッセイ】私の哲学観、私の生き方

          【読後感】廣松渉『世界の共同主観的存在構造』(岩波文庫)

           本書は廣松渉の主著の一つ。人間を「共同主観的存在」と見る立場から、認識論の乗り越えと再生を目指した廣松哲学。1972年に書かれた。彼は戦後日本を代表する哲学者の一人。  本書は大きく前半と後半に分かれる。その前半は、「主観ー客観」図式の閉塞感から始まり、認識論の現象的世界、言語的世界、歴史的世界へと辿ってゆく。  後半は、共同主観性に触れ、判断の認識論的立場、デュルケーム倫理学説の批判的継承、となっている。  ただし、判断の認識論的立場については、ある限定がある。それは、判

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          【エッセイ】好きと嫌いと幸せと

           人は生まれたからには生きなければならない。せっかく生きるのだから、充実して生き生きとした生活を送りたい。自分は何に喜びを感じるのか。それをどう生活に生かすのか。  やりたいことが出来れば良いのだが、それが定まっていないことがある。趣味と仕事を分けて考えることはよくある。仕事と趣味が同じなのが理想ではある。だが、趣味を仕事にすると、楽しめなくなることもある。喜んでいたことを仕事にすると、それが苦痛に変わることがある。そうなると、別の趣味を見つけることになる。こんなことを言っ

          【エッセイ】好きと嫌いと幸せと

          【読後感】山本芳久『100分de名著:アリストテレス:ニコマコス倫理学』

           山本芳久『100分de名著:アリストテレス:ニコマコス倫理学』(NHK出版)を読んだ。  本書は山本氏がアリストテレスの著作を解説した。「100分de名著」のシリーズは入門書になると思う。ニコマコスとはアリストテレスの息子の名前で、この名著をまとめたのでその名がついた。  アリストテレスは古代ギリシアの哲学者。彼はアレキサンダー大王の家庭教師もしていた。二千年ほど前の古代ギリシアで、ソクラテス、プラトンに次ぐ哲学者として知られている。『ニコマコス倫理学』は彼の主著の一つで

          【読後感】山本芳久『100分de名著:アリストテレス:ニコマコス倫理学』

          私と本をめぐって

           私が子供の頃は、友達と外で遊んで運動をしたり、部屋でテレビゲーム(ファミコン)をしているのが楽しかった。その頃は本に興味はなかった。  それが高校生の頃、ラジオ番組「日高晤郎ショー」に夢中になったのがきっかけで、言葉に興味を持つようになった。その番組内のコーナー「私の本棚」で晤郎さんが毎週5冊の本を紹介していた。それを聞いているのが楽しかった。次第に紹介されている本を買って読むようになった。司馬遼太郎などの時代小説、『芸能名言辞典』(古典芸能の芸談集)、小説、ノンフィクシ

          私と本をめぐって