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【詩】花火大会

私は自分の部屋にいる。
毎年恒例の花火の音が遠くで鳴っていた。
昔、これに行ったことがある。
雑踏の中、夜空に打ち上げられた大輪の花。腹に響く音。歓声。一緒に見上げたあなた。
すべてが懐かしい。
平和な夜のひととき。

花火は一瞬の夢。はかない花だから人々は乞う。非日常の一瞬を。
無限の夜空の自然に、花火職人のひらめきが宙を舞う。
玉の火薬の引火によって、飛び出し、高々と伸びて行き、炸裂とともに消え失せる。
秒単位の一芝居。
そこに、職人は長い期間をかける。消えて無くなる花のために。
職人は花火という命を吹き込む。
それを見上げる人達のために。
それは遥かな昔から営まれてきた。絶えることなく。進化もしながら。
それに向かう笑顔のために。

そんな夏の夜の夢を部屋で想う。
ああ、夏だ。
そう、夢だ。

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