鳩埜まつり

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記事一覧

羽折りの杪夏

最後に残った蝉が啼く コバルト塗料の切れた空 南の風が黄昏れる 積乱雲のひとかけら 暦の上では秋らしいが いまだに汗を拭っている 氷のとけたアイスコーヒー 最後に残っ…

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1か月前

漱石代わりの夏目なつ子 第一話

第一話 吾輩と夏目なつ子 「こんにちわ」 目の前に現れた猫が喋った。 家の庭で洗濯物を取り込んでいる時に、植木の裏からテコテコと歩いてきて姿を現した、見知らぬ黒猫…

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2か月前

翔風のポエジー 第一話

あらすじ あなたは『瑠璃色』をどのように表現しますか? 青色だったり、紫色だったり、まるで虹色かのように。 あるいは全く別の他のものに例えたり。  『瑠璃色』  …

鳩埜まつり
2か月前
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翔風のポエジー 第二話 君ふたたび

第二話【君ふたたび】 「あれも私。これも私。どっちも本当の私だよ」 向こうの角まで歩きながら話しましょうと、詩帆璃に言われ、翔風は 戸惑いながら一緒に歩いている。…

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2か月前
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翔風のポエジー 第三話 うたえること

第三話【うたえること】 「初めまして。否、二度目ましてだね。佐々木君」 そう言いながらアクロバティックなポージングを決めているイケメン生徒。 「君という花につられ…

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2か月前
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「翔風のポエジー」企画書

キャッチコピー:この気持ち詩にしないと収まらない。 あらすじ:桜舞(おうぶ)高校新1年生の佐々木翔風(ささきしょうふう)は、入学初日の通学途中で詩の書かれた紙を…

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羽折りの杪夏

羽折りの杪夏

最後に残った蝉が啼く
コバルト塗料の切れた空
南の風が黄昏れる
積乱雲のひとかけら

暦の上では秋らしいが
いまだに汗を拭っている
氷のとけたアイスコーヒー
最後に残った蝉が消えた

境界線の上に立って
背伸びする影法師
境界線の上に立って
舞い落ちるわくら葉

蝉が羽を折った頃
季節は一枚羽織るだろう

太陽が夕陽に変わる頃
名も知らぬ君を想うだろう

【羽折りの杪夏】
2024年9月5日

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漱石代わりの夏目なつ子 第一話

漱石代わりの夏目なつ子 第一話

第一話 吾輩と夏目なつ子

「こんにちわ」
目の前に現れた猫が喋った。
家の庭で洗濯物を取り込んでいる時に、植木の裏からテコテコと歩いてきて姿を現した、見知らぬ黒猫だった。六月の梅雨の晴れ間の夕方のこと。
「猫が喋った」
私はあるがままのことを、ぽつりと呟いた。両親は外出中で、今、家には私の他に誰もいない。
「そうですね。私は猫です」
やけに落ち着いた声。つやのある短毛。誰かにブラッシングされてい

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翔風のポエジー 第一話

翔風のポエジー 第一話

あらすじ

あなたは『瑠璃色』をどのように表現しますか?
青色だったり、紫色だったり、まるで虹色かのように。
あるいは全く別の他のものに例えたり。

 『瑠璃色』

 きみが大きく微笑んで
 頬を伝って流れ落ちた
 ひとつぶの雫に
 映し出された青春の大空は
 ぼくの心臓を握り締めた

 桜舞詩の会 会長・瀬谷かすみ

桜舞高校『桜舞詩の会』は、
全国でも珍しい作詩専門の部活です。
詩が好きな方。

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翔風のポエジー 第二話 君ふたたび

翔風のポエジー 第二話 君ふたたび

第二話【君ふたたび】

「あれも私。これも私。どっちも本当の私だよ」
向こうの角まで歩きながら話しましょうと、詩帆璃に言われ、翔風は
戸惑いながら一緒に歩いている。薄いオレンジ色の夕日が街を染めている。
「私は黒川家の娘として、校内ではそれらしい振る舞いを心掛け、それらしい行動を取っているの。家のために生きる私。その一方で、自分のために生きる私もちゃんといるわ」
詩帆璃には、一般の高校生にはとうて

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翔風のポエジー 第三話 うたえること

翔風のポエジー 第三話 うたえること

第三話【うたえること】

「初めまして。否、二度目ましてだね。佐々木君」
そう言いながらアクロバティックなポージングを決めているイケメン生徒。
「君という花につられて来てしまった紋白蝶、霧山リヒト。僕は霧山リヒト」と、自己紹介をする彼の名は、霧山リヒト。
そんな彼を見て翔風は、
「すごー!詩を詠みながら決めポーズ?ミュージカルみたいだ。しかも何も見ずに朗読。思い付きで詠んだの?」と、ただ単純に感動

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「翔風のポエジー」企画書

キャッチコピー:この気持ち詩にしないと収まらない。

あらすじ:桜舞(おうぶ)高校新1年生の佐々木翔風(ささきしょうふう)は、入学初日の通学途中で詩の書かれた紙を拾う。その紙は同じ高校に通う黒川詩帆璃(くろかわしほり)のものであり、詩は彼女が書いたものであった。黒川のユニークで愛らしくどこか棘のある詩に触れた佐々木は、心に風が吹いたかのような衝撃と感動を覚え、詩に興味を持つ。桜舞高校には作詩部があ

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