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羽折りの杪夏

最後に残った蝉が啼く コバルト塗料の切れた空 南の風が黄昏れる 積乱雲のひとかけら 暦の上では秋らしいが いまだに汗を拭っている 氷のとけたアイスコーヒー 最後に残った蝉が消えた 境界線の上に立って 背伸びする影法師 境界線の上に立って 舞い落ちるわくら葉 蝉が羽を折った頃 季節は一枚羽織るだろう 太陽が夕陽に変わる頃 名も知らぬ君を想うだろう 【羽折りの杪夏】 2024年9月5日 #詩 #詩と写真 #夏の1コマ

    • 漱石代わりの夏目なつ子 第一話

      第一話 吾輩と夏目なつ子 「こんにちわ」 目の前に現れた猫が喋った。 家の庭で洗濯物を取り込んでいる時に、植木の裏からテコテコと歩いてきて姿を現した、見知らぬ黒猫だった。六月の梅雨の晴れ間の夕方のこと。 「猫が喋った」 私はあるがままのことを、ぽつりと呟いた。両親は外出中で、今、家には私の他に誰もいない。 「そうですね。私は猫です」 やけに落ち着いた声。つやのある短毛。誰かにブラッシングされているというよりかは、入念な毛づくろいによるものだろう。顔に、野良が持ち合わせる険が

      • 翔風のポエジー 第一話

        あらすじ あなたは『瑠璃色』をどのように表現しますか? 青色だったり、紫色だったり、まるで虹色かのように。 あるいは全く別の他のものに例えたり。  『瑠璃色』  きみが大きく微笑んで  頬を伝って流れ落ちた  ひとつぶの雫に  映し出された青春の大空は  ぼくの心臓を握り締めた  桜舞詩の会 会長・瀬谷かすみ 桜舞高校『桜舞詩の会』は、 全国でも珍しい作詩専門の部活です。 詩が好きな方。詩に興味のある方。 詩を書いてみたい方。 あなたの想いを詩に。 初心者大歓迎です

        • 翔風のポエジー 第二話 君ふたたび

          第二話【君ふたたび】 「あれも私。これも私。どっちも本当の私だよ」 向こうの角まで歩きながら話しましょうと、詩帆璃に言われ、翔風は 戸惑いながら一緒に歩いている。薄いオレンジ色の夕日が街を染めている。 「私は黒川家の娘として、校内ではそれらしい振る舞いを心掛け、それらしい行動を取っているの。家のために生きる私。その一方で、自分のために生きる私もちゃんといるわ」 詩帆璃には、一般の高校生にはとうてい理解のできない、名家ゆえの悩みがあった。翔風も漠然とではあるがその彼女の複雑な

          翔風のポエジー 第三話 うたえること

          第三話【うたえること】 「初めまして。否、二度目ましてだね。佐々木君」 そう言いながらアクロバティックなポージングを決めているイケメン生徒。 「君という花につられて来てしまった紋白蝶、霧山リヒト。僕は霧山リヒト」と、自己紹介をする彼の名は、霧山リヒト。 そんな彼を見て翔風は、 「すごー!詩を詠みながら決めポーズ?ミュージカルみたいだ。しかも何も見ずに朗読。思い付きで詠んだの?」と、ただ単純に感動していた。 「そうさ即興さ」 「おっと会長、こちらが入部届。もう書いてあります」

          翔風のポエジー 第三話 うたえること

          「翔風のポエジー」企画書

          キャッチコピー:この気持ち詩にしないと収まらない。 あらすじ:桜舞(おうぶ)高校新1年生の佐々木翔風(ささきしょうふう)は、入学初日の通学途中で詩の書かれた紙を拾う。その紙は同じ高校に通う黒川詩帆璃(くろかわしほり)のものであり、詩は彼女が書いたものであった。黒川のユニークで愛らしくどこか棘のある詩に触れた佐々木は、心に風が吹いたかのような衝撃と感動を覚え、詩に興味を持つ。桜舞高校には作詩部があり、それを知った佐々木は期待を胸に部室を訪れる。これまで詩に触れたことも作詩経験

          「翔風のポエジー」企画書