「翔風のポエジー」企画書

キャッチコピー:この気持ち詩にしないと収まらない。

あらすじ:桜舞(おうぶ)高校新1年生の佐々木翔風(ささきしょうふう)は、入学初日の通学途中で詩の書かれた紙を拾う。その紙は同じ高校に通う黒川詩帆璃(くろかわしほり)のものであり、詩は彼女が書いたものであった。黒川のユニークで愛らしくどこか棘のある詩に触れた佐々木は、心に風が吹いたかのような衝撃と感動を覚え、詩に興味を持つ。桜舞高校には作詩部があり、それを知った佐々木は期待を胸に部室を訪れる。これまで詩に触れたことも作詩経験も全くない佐々木翔風のポエジーな学生生活がスタートする。

第1話のストーリー:

 光射す朝
 狂騒のスタートライン
 希望と焦燥の種を握って
 行き交う街を横目に
 トーストを咥えながら
 とことこ登校
 曲がり角ではぶつからない
 運命の人とはぶつからない
 決して急いではいないから
 人生の主人公だけれど
 物語の主人公じゃないから
 無常の日よ
 無遅刻無欠席のわたしを褒め給え

桜舞高校新1年生の佐々木翔風は、入学初日から遅刻しそうになっていた。トーストをかじりながら通学路である河川敷を急ぎ学校へと走っていると、突然顔面に1枚の紙が覆いかぶさってきた。驚き紙に目をやるとそこには数行の詩が書いてあった。と、同時に1機のヘリコプターが河川敷に着陸。ヘリから降りてきた女子高校生が佐々木の元へといそいそと駆け寄ってきた。
彼女の名は黒川詩帆璃。桜舞高校2年生で黒川財閥の令嬢であった。紙はヘリの窓から風で飛ばされてしまったものであり、詩は彼女が書いたものだった。詩帆璃の前でその詩を詠む佐々木。恥ずかしがる詩帆璃であったが、佐々木は彼女の詩から、心に風が吹いたかのような強い感動を覚える。「風が吹いた」という感想を詩帆璃に伝えると、彼女はこう言うのだった。
「ポエジーだね」
その日の放課後、校内は新入生たちと、彼らを部活へと勧誘する上級生たちとで賑わっていた。佐々木が廊下に貼りだされた部活案内のポスターを眺めていると男子生徒たちの声がした。「作詩部なんてあるぞ。ポエムじゃん」「俺もポエマーになろうかなー」すかさず女性の声が廊下に響いた「ポエマーになってよ!なって!」驚き逃げる男子生徒たち。「詩を馬鹿にしないでよ」と呟き女子生徒(逢原さわやか)は立ち去った。
作詩部の存在を知った佐々木だったが見学のため部室へ向かう途中迷ってしまう。教室から出てきた男子生徒(霧山リヒト)と出合い頭にぶつかり、佐々木は手に持っていた紙を落とす。そこには佐々木が初めて書いた詩が綴られていた。部室の場所を霧山に教えられ向かう佐々木。その後ろ姿を見つめ続ける霧山には秘めた想いが生まれていた。
作詩部の部室に着くと4年生(?)の部長瀬谷かすみを始め、詩を愛する個性豊かな部員たちが続々と集まってきた。新入部員として歓迎された佐々木は席を立ち上がると初めて書いた詩を臆することなく読み上げる。初めてとは思えない詩の出来栄えに驚く部員たち。そして、佐々木の後ろには黒川詩帆璃が立っていた。

第2話以降のストーリー:
第2話
 水面に転ぶアメンボの
 不安げな飛沫たるや
 明日をも知らぬ
 夢見のエデン
 伸ばした手のその先の
 花びらの上に現れた
 アゲハ色した女神から
 宇宙を覆す
 香り放たれ
 永遠にも似た
 夜明けの詩が
 俗世を滅却す
 立ち尽くし
 立ち尽くし
 立ち尽くす
 波紋の一撫で
 はちきれん
 眠気眼に風光る朝

初めて書いたという佐々木の詩の完成度に部員一同驚愕する。そこへ黒川詩帆璃が現れた。佐々木は、黒川との出会いが自分が詩を書き始めるきっかけになったこと、初めて詩を書いてみたことなどを話し始めようとした。だが、詩帆璃はそれを遮るように「2年の黒川です。よろしくお願いします」とそっけない返事をするのみで席に着くのであった。

部室では、部長の瀬谷かすみ(男・3年(1年留年))、副部長の明神華楓(みょうじんかえで・女・3年)、2年生の秋本翼(男)、陣屋なつ子(じんや・女)、黒川詩帆璃(女)そして新入部員である1年生佐々木翔風がそれぞれ自己紹介を始めていた。

その時、部室のドアがノックされ、女子生徒が入ってきた。彼女は先ほど廊下で男子生徒に「詩を馬鹿にしないでよ」と呟き立ち去った女子生徒であった。「入部希望の1年C組の逢原さわやかです」天井まで通るような明るく大きな声である。新入部員が1日に2人も増えることは珍しいことらしく、上級生は皆喜んでいる。隣の席に座った逢原に佐々木は自己紹介をした。「1年A組の佐々木翔風です。よろしく!」途端、逢原は目を丸くし、まじまじと佐々木を見つめた。「翔風?しょうふう?佐々木翔風?」「私のこと覚えてる?さわやか!」実は佐々木と逢原は幼年期に毎日のように遊んでいた幼馴染であり、小学校へ入学すると同時に逢原は東北へと引っ越し、佐々木は15年間そのまま地元で育ち、高校も家の近くにある桜舞高校へと進学した。逢原は家庭の都合で再びこの地元に戻り桜舞高校へ入学したのである。奇跡の再会といえるのだが「えっと……ごめん。誰だったっけ?」と佐々木は覚えておらず、怒った逢原からみぞおちにグーパンをもらうのであった。

それぞれの自己紹介を終え、作詩部に活動内容を部長の瀬谷が説明し始めた。活動日は毎週火曜日と木曜日。活動内容は詩を書くこと、詩を詠むこと、詩について話すこと。その月の最終木曜日には、あらかじめ定められたテーマをもとに各々が自作の詩を書き、それを詠んで発表するポエトリーリーディング会、通称、詩宴(うたげ)が開催される。そして4月の詩宴のテーマは「出会い」となった。

逢原がふいに手を挙げ詩を朗読したいと申し出た。作詩歴3年の逢原は鞄からノートを取り出し、自作の詩を詠みだした。

 想い出す
 季節が移いゆこうとも
 瞳に映る
 時代が変わろうとも
 大きな樫の木に登り
 下りれなくなって泣いた日
 川遊びで転んで
 足を縫うほどの怪我をした日
 楽しいこともたくさんあった気がするのに
 自転車の練習で転んだり
 猫に引っかかれたりと
 変なことばかり覚えてる
 幼馴染の顔も忘れてしまった気がする
 だけど忘れないものがこの胸にある
 想い出す
 いつまでも
 瞳に映る
 いつまでも

逢原の詩で佐々木は幼馴染の逢原を想い出すのだった。

再び部室のドアがノックで鳴った。佐々木が先ほど出合い頭にぶつかった男子生徒・霧山リヒトが立っていた。モデルのようなスタイルと中性的で端整な顔立ちをしている。「1年D組の霧山リヒトです」あいさつもそこそこに、宙を見つめながら詩を詠み始めた。

 僕のことを誰も知らない森で
 君だけに僕を知って欲しい
 はじまりはあっけないもの
 おわりは考えちゃいけないもの
 アールグレイのお代わりを
 口に注いであげる
 僕の元にひざまずいて
 剥き出しの素肌で
 朝まで抱き合おう
 君のことを知りたい
 僕にだけ教えて欲しい

部室に入る早々、ポーズを決めながら愛の詩を繰り広げる霧山に、部員は唖然としたのだった。

第3話
霧山の愛の詩にざわついた作詩部の面々。霧山は「君を追いかけて来ちゃったよ」「色眼鏡で僕のことを見ないのは君が初めてだった」と佐々木に告げる。霧山は人気読者モデルとして芸能活動をしていて、街中でも学校内でもひっきりなしに声を掛けられて大変らしい。そんな霧山のことを全く知らない佐々木との出会いは、霧山にとって新鮮で衝撃的だったのだ。

2年の秋山翼が気さくな口調で皆に尋ねた。「なあ、佐々木の名前の翔風って聞き覚えない?」「……翔と風。なーんか漢字に見覚えがあるような」
副部長の明神華楓が答える「校歌じゃないかしら?2番の歌詞の最後」
2年の陣屋なつ子が歌う「桜舞の~桜舞の~翔風よ~」
「そういえば校歌を作詞した人の苗字は佐々木だったような。確か佐々木咲子」と、部長の瀬谷。
翔風の祖母の名は咲子であった。桜舞高校の校歌を作詩したのは、ゴッドマザーオブパンクの異名を持つ伝説の破天荒作詩家であり、翔風の実の祖母・佐々木咲子だと判明した。翔風も自分の祖母がまさか作詩家だったことを知らずその事実に驚いた。そして翔風の謎の作詩の才能に一同は納得するのであった。

作詩部活動初日の締めとして部長の瀬谷が詩を詠む。

 チンさんとクリさん
 雄のチンさん
 雌のクリさん
 敏感多感解放感
 僕のチンさん
 君のクリさん
 突いて吸われていじられ…

ド下ネタやないか!と秋本は部長の瀬谷を慌てて取り押さえた。副部長の華楓は場の空気を変えるべく、詩帆璃に詩を詠むように頼んだ。詩帆璃は自分のノートをパラパラとめくり、この場にふさわしい詩を探しだすと、澄んだ声で詠み始めた。

 学び舎に集う
 青空の心
 共に輝く
 絆の日々
 羽ばたきはどこまでも
 続いてゆく
 生命の風が吹く限り
 丘を登り見渡せば……

今朝出会った詩帆璃の詩と全く趣の違う詩を聴きながら、今朝会った詩帆璃と、今目の前で詩を詠んでいる詩帆璃は同一人物なのだろうかと、佐々木は戸惑いを隠せずにはいられなかった。

終わりに注意事項をひとつ言い忘れていたと、部長の瀬谷が付け加えた。

「作詩部は部内恋愛禁止となっています」

帰り道、佐々木がコンビニに立ち寄ろうとすると、ちょうど中から出てきた詩帆璃と鉢合わせした。詩帆璃はコンビニで買ったアメリカンドッグを頬張りながら佐々木に声を掛けた。「おっ!佐々木君。作詩部へようこそ!」
「君の詩すごく良かったよ!びっくり!初めて書いたとは思えないな」
部室で会った時とは全く違う気さくな態度にたじろぐ佐々木。
朝の詩と部室での詩も雰囲気が違っていたことを思い出し、戸惑いに拍車がかかる。佐々木はそのことを正直に告げると詩帆璃は答えた。
「あっちもこっちも、どっちも私だよ」
詩帆璃は黒川財閥の令嬢として学校内では、それらしい振る舞いを心掛け、それらしい行動を取っているそうだ。
「でも今朝、本当の、本当の私の詩を君に詠まれた時は、すごくドキドキしたな……今まで誰にも詠まれたことがなかったから」

「私の初めては君だね」


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