ねー。僕らは今から殺される訳だけど、その後どうなるんだろう? さぁー。分からないけれど、さっき運転席のラジオから「ブゥーブゥー亭のお肉は坂木養豚場直送!厳選されたお肉のみを使用!それが1980円で今だけ特価で食べ放題!ブーブー」って聞こえたよ。 へー。1980円って何だろうね?
定年退職まで、妻は毎日お弁当を作ってくれた。 若い頃は、唐揚げ、アジフライ、卵焼きとか、茶色いわんぱく弁当。 歳を重ね、浅漬け、サバの塩焼き、蓮根と牛蒡の煮物、卵焼き、梅干しの健康的なお弁当。 1番好きなのはおにぎりだった。 だから、明日、1番美味しかったおにぎりを妻に握ろう。
僕の中で産声をあげた人は成人なのにまだ幼いから勝手な行動ばかりしちゃうもんで、良く手直しを要求される。 なので、一行書いては消して書いては消しての繰り返し。 でも、成長した時、よく出来た!頑張ったよ。っと一緒に星を眺めたりする瞬間が物書きを続けてて良かったと思える瞬間だと思う。
星の王子さまが好きだった妻の一部がロケットに乗って宇宙に旅立った。 「1番大切な物はね、目に見えないんだよ」 キツネが星の王子様に教えた様に、僕は妻からそれを教わった。 迷い無く真っ直ぐ進むロケットロード。 いつでも羊の絵を描いてあげるからねっと僕は残りの妻の遺骨を抱きしめた。
彼はいつも私に優しい嘘を吐いた。 求めれば求める程、触れたければ触れたい程、彼の嘘は何層にも皮を被り球根に帰ってしまう。 陽だまりにいつか溶けてしまいそうな無垢で真っ白な思い出の彼。 旧約聖書の天使が雪をスノードロップに変え、アダムとイブを救った様に、私も彼に嘘を吐き続ける。
産まれて、沢山の好きを探して、好きに触れて、好きに振り回され、好きな物が好きだった物になったり、もう一度好きになってみたり。好きから好かれたり。 長い年月を生きて、経験して、一万個あった好きが両手で数えれ、包みこめる様になって、それが死ぬまで大事で大好きな物。 それが、宝物。
今の僕の言葉はただの言葉でお腹が空くかもしれない。 でも、いつかは僕の言葉で誰かの心をキュ〜鳴らせられればと今日も、美味しそうな満月を眺める。 僕の言葉に触れた人が「今日の満月は何だかメロンパンみたいだね」と寄り添い半分こにしたパンを食べれる未来を夢見て、今日も僕は夜を料理する。