二郎丸 大

短い話(ショートショート/掌編小説)を書いています。短くても心に残る話を書けるようになりたいです。 ※作品の投稿頻度:土日どちらか一回程度(毎週ショートショートnote/シロクマ文芸部/140字小説)

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    たらはかにさんの企画に参加させていただいた作品をまとめています。

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私はそれでいい #秋ピリカ応募

昨日、偶然に娘を見つけた。 喫茶店でひとり、紅茶を飲みながら本を読んでいた。 声をかけたかったが、私にはその資格がない。 彼女が二歳の時に私は父親をやめてしまったから。 美しく成長した娘をただ眺めることしかできない。 ◇ 私には父がいない。 寂しいと思ったことはない。 父の記憶が全くないから。 優しい母は事あるごとに私に謝った。 「お父さんいなくてごめんね」 「全然平気だよ。お母さんいるから」 そんなふうに応えれば良かったのに、なんで最期までできなかったんだろ

    • 長距離恋愛販売中 #毎週ショートショートnote

      「長距離恋愛、始めましたー」 そう言ってトオルが笑った。 トオルに出会ったのは半年前。 ホストだし、私だけに優しくしてくれるわけじゃないのは分かってたけど夢中になった。 「ナオミさん、聞いてる?」 「あ、うん、聞いてるよ。でも、どういうこと?」 「俺とナオミさんがね、長距離恋愛中の恋人同士になるんだ」 「そういうサービスなんでしょ?」 「まあね。ダメ?」 断れるわけがない。 「もう俺はナオミさんしか見ないよ。たまにしか会えなくなるけど」 「本当に遠くに行っち

      • 紅葉の季節 #シロクマ文芸部

        「紅葉から連絡が来なくなったの。離れて暮らすとこんなものね。あんなにかわいがって育ててやったのにさ。 そりゃね、成人して仕事も始めたわけだし、私なんかと一緒にいるよりかは同年代の人といた方が楽しいでしょうよ。 でも、母ひとり子ひとりで生活してきたわけじゃない?電話くらいくれてもバチは当たらないと思うの、私は。いまはLINEがあるからって使い方教えてもらったけど、紅葉からはスタンプしか来ないの。 ねえ、ちょっとマスター、聞いてる?」 「あー、悪りぃ悪りぃ。聞いてるよ、聞いてる

        • 私の作品を読んでくださる皆さんへ 昨日の秋ピリカGP 2024の結果発表で読者賞候補に選んでいただきました。noteで書き続けてよかったという思いと同時に皆さんへの感謝の気持ちがわいてきました。皆さんがいなければ二年も書き続けることはできませんでした。本当に有難うございます。

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        私はそれでいい #秋ピリカ応募

        • 長距離恋愛販売中 #毎週ショートショートnote

        • 紅葉の季節 #シロクマ文芸部

        • 私の作品を読んでくださる皆さんへ 昨日の秋ピリカGP 2024の結果発表で読者賞候補に選んでいただきました。noteで書き続けてよかったという思いと同時に皆さんへの感謝の気持ちがわいてきました。皆さんがいなければ二年も書き続けることはできませんでした。本当に有難うございます。

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          この中にお殿様はいらっしゃいますか? #毎週ショートショートnote

          もう時間がない。 早く見つけなければ。 時刻は午後一時。 腹を空かせて食堂に行ったのかもしれない。 食堂に行くと人が大勢いて、すぐに見つけられそうもなかった。 俺は思い切って大声で叫んだ。 「この中にお殿様はいらっしゃいますか?」 ビクッと身体を震わせた男が三人いて、部下達がすぐに身柄を確保した。 三人とも帽子とサングラスをしていて見分けがつかない。ひとりずつ確認することにした。 一人目。 「あなたはお殿様ですか?」 「ウチはカカア天下だよ、アッハッハ」 「そうですか

          この中にお殿様はいらっしゃいますか? #毎週ショートショートnote

          爽やかな顔を買いに #シロクマ文芸部

          電車から外を眺めていると、ガラス戸に貼り紙がしてあるのがなぜかはっきりと見えた。 電車が止まるなり、乗客をかき分けて電車を降りた。改札を通り抜け、貼り紙の見えた場所を目指して走る。 早く行かないと売り切れてしまうかもしれない。 案外すぐに目的の場所にたどり着いた。 貼り紙はもう無くなっていたが、『顔屋』と書かれた看板が出ている。 爽やかな顔は売り切れてしまったか。 諦めきれず、ガラス戸を開けて中へ入った。 店内はがらんとしていて何も陳列されていなかった。 老婆がひとり

          爽やかな顔を買いに #シロクマ文芸部

          人生は洗濯の連続 #毎週ショートショートnote

          正直に言って、私は洗濯が好きではない。 四歳になる息子の卓が服を汚しまくるので、洗濯機のスイッチを押すのにも飽きた。 でも、今日は特別。 卓と二人でパン作りをした。 小麦粉まみれになっていたけど許す。 洗濯機のスイッチを押した。  「たくさん作ったね。食べよっか」 ガシャン! 卓がスープカップをひっくり返した。 急いで服を脱がせた。 洗濯機のスイッチを押した。 夕方。 「ママー、なんか背中があったかい」 飼い犬が卓の背中にオシッコをかけていた。 洗濯機のス

          人生は洗濯の連続 #毎週ショートショートnote

          夜からの手紙 #毎週ショートショートnote

          まただ。 郵便受けに手紙が入っている。 今日で三日連続だ。 中に何が書いてあるか、予想はつく。 読まずに捨ててやろうかと思ったけど、少しだけ読んでみたい気もして捨てられない。 手紙の封を開けて二つ折りにされた便箋を開く。 やっぱり。お前こそ誰だよ。 そう思って二枚目を見る。 こっちは朝だよ。 そう思って三枚目を見る。 は?何が? 毎回、三枚目だけメッセージが違う。 ちなみに一回目は「本当だよ」、二回目は「眠らせないよ」だった。 三枚目だけつなげて読むとこうな

          夜からの手紙 #毎週ショートショートnote

          残り物には懺悔がある #毎週ショートショートnote

          夫には悪いが、平日の夕食は外で食べてきてもらった方がいい。 「ごちそうさま!ママ、今日の晩ごはん、めちゃくちゃ美味しかった!また食べようね」 長男の悟がニコニコして言うと、長女の香が 「悟、いつもよりもやし沢山食べて偉いじゃん」 と嫌味を言った。 「だっていつもよりうまいんだもん!」 「はいはい、また食べようね」 夫がいなくても他愛のないやり取りに癒される。 ◇ そろそろ寝ようかと思っていたら夫からLINEが来た。 「今日晩飯食べる時間なくて。何かある?」 「

          残り物には懺悔がある #毎週ショートショートnote

          創作大賞の中間選考、交流のあるnoterさんが通過しているのを見ると素直に嬉しいものですね。 私は駄目でしたが初めて長いものを書けたので良い経験になりました。 今週は毎週ショートショートnoteとシロクマ文芸部はお休みして坊ちゃん文学賞に出す作品を頑張ろうと思います。

          創作大賞の中間選考、交流のあるnoterさんが通過しているのを見ると素直に嬉しいものですね。 私は駄目でしたが初めて長いものを書けたので良い経験になりました。 今週は毎週ショートショートnoteとシロクマ文芸部はお休みして坊ちゃん文学賞に出す作品を頑張ろうと思います。

          懐かしい初めまして #シロクマ文芸部

          懐かしい雰囲気、匂いと声音。 なぜだろう。初めて会った人なのに。 六歳年下の小学四年生の弟が連れてきた男の子、裕太くん。 どこかで会ったような気がして仕方がない。 でも相手は小学生だし。 そんなわけないか、とも思うけど、でも……。 ついつい彼の顔をまじまじと見てしまう。 「なんだよ、姉ちゃん、裕太のこと好きなんか」 弟のマサルが能天気にしょうもないことを言ってくる。そんなんじゃないんだよ、馬鹿。 「いや、あのね、私、どこかで裕太くんに会ったような気がするのよね」

          懐かしい初めまして #シロクマ文芸部

          モンブラン失言 #毎週ショートショートnote

          いま私は喫茶店でコーヒーを飲んでいる。 同じマンションに住む佐伯恵、山下香と一緒に。 「山下さんはいいわよね。旦那さんがお医者様って。憧れちゃう」 「そんないいもんじゃないって。佐伯さんの旦那さんだって素敵じゃない。ベンチャー企業の社長さんでシュッとしてるし」 「ワーカホリックなだけよ。佐藤さんもお医者様の旦那さんの方がいいでしょ?」 いつもように恵が私に同意を求める。 「ウチの人はただのサラリーマンなので。お二人が羨ましいです。 ところでコレ、見てください!」

          モンブラン失言 #毎週ショートショートnote

          レモンが泣いている #シロクマ文芸部

          レモンから誰かのすすり泣く声が聞こえた。 雅子は半信半疑でレモンを手に取り、利き耳に近づけてみた。 やっぱり泣いている。 どうして?一体誰が? いや、レモンが泣いているのか。 私が、泣かせたの? なんだか責められているような気がした。 怖い。 ひとりで抱えておくには怖すぎる。 ひとり娘の敬子を電話で呼び出すことにした。 2階の自分の部屋でもう寝ているかもしれないが、遠慮している場合ではない。 「もしもし、敬子?まだ起きてる? ごめん、ちょっとリビングに降りてきてく

          レモンが泣いている #シロクマ文芸部

          入浴移譲 #毎週ショートショートnote

          「タケルー!サトシー!お風呂沸いたわよー。さっさとどっちか入ってー」 「はーい」 「はーい」 「サトシ!お前、先に入れよ」 「タケル!お前が先に入れよ」 「俺は漫画読んでるんだよ」 「俺は小説読んでるんだよ」 「読むのやめて入ってこい」 「いま、いいところなんだよ」 「小説が?」 「小説が」 「いま何ページ?」 「3ページ」 「小説3ページでいいところなわけないだろ。入ってこいや」 「ショートショート集なんだよ、阿保」 「キリがいいとこでやめて入れや」 「お前

          入浴移譲 #毎週ショートショートnote

          もう流れ星に願い事はしない #シロクマ文芸部

          「流れ星に願い事したことある?」 付き合っていると言っていいか、まだ微妙な彼女からの質問。どういう受け答えをするのが正解か。ここで嫌われたくはない。 「あ、あるよ」 「叶ったことは?」 「え?それはないけど。というか、叶った人いるのかな(笑)」 「なんで笑うの?何か可笑しい?私は叶ったことあるよ」 やばい。 「ご、ごめん。いままで出会ったことなかったから。流れ星に願い事して叶った人に。え、どんな願い事したの?」 「……お父さん、死んじゃえって」 え? 「別

          もう流れ星に願い事はしない #シロクマ文芸部

          ひと夏の人間離れ #毎週ショートショートnote

          とても嫌なことがあり、人間でいることが嫌になった。もう人間やめたい。 人間ってなんだろう。 やっぱり話すことかな? 話すことをやめた。 他には? 料理をするのは人間だけだよね。 料理をするのをやめた。 もう素材をただかじるだけの食事。 後は? 服を着るのは人間だけじゃない?犬とかも着るけどさ。 服を着るのをやめた。 もう裸だから外に行けない。 ひとりで家にこもってじっとしてると生きる意味を見失うね。人間から離れていってるところだから意味なんてどうでもいいけど。 裸

          ひと夏の人間離れ #毎週ショートショートnote