君逝きて浮世に花はなかりけり 漱石の俳句です。嫂の登世を悼む句。他に十数句ある。江藤淳によれば、漱石はこの早世した兄の妻を深く愛していた。たしかに、この句からは、そういう情熱が感じられる。他にもう一つ。 朝貌や咲たばかりの命哉 これなんかも、激しい思いが出ている句だと思う。
こういう俳句もあるのかとびっくりしたのが、これ。 をみなとはかゝるものかも春の闇 日野草城 ロマン性、エロティシズムが感じられる。俳句なのに!モダンでもある。花鳥諷詠という、従来の俳句から完全に抜け出ている。連作俳句「ミヤコホテル」中の一句。昭和9年に発表された。
五千冊売って涼しき書斎かな 長谷川櫂 きょう部屋の古本を段ボール二箱分、売り払った。そこで思い出した句。中公新書の『俳句的生活』に所収。 部屋に積み上げてあった本がなくなり、自室がさっぱりとした。年末、気分転換になる。 捨てないと、新しいものが入らない。 頭の中にも、である。