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「200字の書評」(317) 2022.4.25



こんにちは。

ウクライナの戦火止まず、胸にしこりの残る毎日です。複雑な国際情勢に翻弄され、逃げ惑う一般市民の深刻な被害を思うと悲しさと怒りを禁じえません。国民生活の安寧と平和を実現するのが政治であり外交であるはずですが、大国のパワーゲームの様相を呈しているように見えます。軍需産業が我が世の春を謳歌するのではなく、子どもたちの笑い声の響く春を希求します。

そぞろ歩きの道すがら見上げるとハナミズキと藤が、民家の庭先には牡丹が、足元には鈴蘭が顔を出していました。春の豊かな彩はあでやかな花だけではありません。木々の緑の移ろいも印象的です。青葉若葉の薄緑が、透き通るようです。春の喜びでふと漢詩の一節を思い出しました。

春 夜
春宵一刻値千金
花有清香月有陰
歌管楼台声寂寂
鞦韆院落夜沈沈

北宋の詩人で官僚の蘇軾(蘇東坡)の七言絶句です。読み下しは以下の通りで、春のうららかさをうたったそうです。

しゅんしょう一刻あたい千金
花に清香あり月に陰あり
かかんろうだい声せきせき
しゅうせん院らく夜ちんちん

このような春がウクライナの人びと、各地の難民に早く訪れることを願っています。

さて、今回の書評は丸山眞男です。




冨田宏冶・北畑淳也「今よみがえる丸山眞男―『開かれた社会』への政治思想入門」あけび書房 2021年

「今更丸山眞男?」「丸山眞男って誰?」という向きは、是非読むべき。戦後民主主義の旗手と目される一方、強い批判・攻撃にさらされる。自我の放棄による権威への盲従、政治への無関心の顕著な日本社会と、均質的な日本人の根底には「古層―執拗低音」があるとする視点を示す。政治への不信感と距離感が深まる現代、「開かれた社会」を探求した丸山を再評価すべきではないか。「超国家主義の論理と心理」をまた読みたくなる。




【卯月雑感】


▼ 小室圭・眞子夫婦へのバッシングが止まりません。眞子さんは元皇族とはいえ、もはや一私人です。その夫が弁護士試験に合格しようがしまいが、報道すべきことでしょうか。世間の過干渉を避けてニューヨーク移住を決断したのだから、そっとしておくべきだと思います。妬みと嫉み、のぞき見趣味はもう沢山です。


▼ ウクライナの戦乱に関して二つほど。欧米諸国はウクライナ軍への武器供与を増大させ、より強力な兵器を送っています。侵略軍と戦うには必要なのかもしれません。でもそれと同様の意欲と迅速さで停戦、和平交渉を後押しできないのでしょうか。住まいと故郷と生業を失い、家族友人と散り散りになる民草の苦難に思いをいたすべきです。ウクライナ国民が望むのは強力な武器よりも、平和ではないでしょうか。また、日本ではウクライナ避難民へは支援団体、自治体も含めて手厚い支援があります。それを大切にしたいものです。
次に忘れてならないのは、我が国はアジア系難民に冷たいことです。ミャンマー、アフガニスタン、シリアなど政治的軍事的に国を追われた人々の難民認定は狭き門です。正義と人道に立脚した政策を確立すべきです。


▼ ウクライナの戦火に辛い思いをしているところへ、知床観光船事故の報が飛び込んできました。北の冷たい海での船舶事故、荒天下で何故出航したのか。子どももいるとのこと、楽しいはずの北海道旅行の暗転に気持ちが沈みます。絶望の色が濃くなっています。ついこの間まで流氷が漂っていた海、さぞ冷たかったろう。最果ての地、手つかずの自然を期待して観光に訪れます。今回最初に救助に向かったのは、釧路の海上保安庁航空基地のヘリコプターでした。続いて千歳の自衛隊救難隊のヘリ、道警ヘリも向かったそうです。でもあの距離です、北海道は広い。即応は無理だったのでしょう。観光地の救援救難体制の手薄さが浮き彫りになりました。




<今週の本棚>


横田増生「トランプ信者潜入一年」小学館 2022年

潜入取材に長けた著者は、今度はトランプ陣営の選挙ボランティアに潜入。そこで見たものは、新自由主義によるアメリカ中流階級の崩壊と凋落に恐怖し、トランプを熱狂的に信奉する姿だった。アメリカ社会の分断は民主主義の本質を問いかけ、影を落としている。


内田樹「複雑化の教育論」東洋館出版社 2022年

ものごとを単純化して解りやすく、しかも結論を早くすることが良いことなのかが問われる。人間とはもともと複雑な存在であり、教育は複雑化していくものである。単純化を是とするなら、人間に複雑な社会への正解を求めるのは無理。時間がかかろうが、民主主義的な合意をはかる技術知を身につけてこそ大人である、との指摘に共感する。ウチダセンセらしさが一杯。


澤田大樹「ラジオ放送の現場から 声を上げる声を届ける」亜紀書房 2021年

TBSラジオただ一人の報道記者が「伝えるとは」を語る。政治経済地方自治、広くカバーするが故に見えてくる報道現場の実際。記者クラブの閉鎖性と御用報道化への率直な危機感、政界要人との付き合い方、特ダネをつかみ伝える難しさ、テレビとラジオの体質の違い、記者同士の協力関係など外部からは窺い知れない面が興味深い。政界には男子校カルチャーとの相性の良さがあると喝破するのは秀逸。




先日、花園の農産物直売所に行きました。丁度ナス、ピーマン、キュウリなどの苗が売り出されていて、大いに混雑していました。私は友人の新築祝いとして贈るために八重桜の苗木を探していました。事前に問い合わせたところ2本だけ残っているとのこと。慌てて駆けつけました。何と残りは1本、昨日夕方に1本は買われたとのこと、危ない危ない。

ゴールデンウイーク目前コロナ禍は未だ収まらず、浮かれての行楽には危険が同道。第7波につながらなければ良いのですが。どうぞお気を付けください。


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