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「200字の書評」(313) 2022.2.25



お早うございます。

強烈な寒波に襲われて、日本海側の各地では交通の途絶や立ち往生、除雪困難に悩まされています。新千歳空港では発着が不可能になり、数百人が空港で夜を過ごす羽目になったとか。この寒さに加えて、私達の肝を冷やしたのはプーチンによる隣国ウクライナ侵攻です。とても正常とは思えません。大ロシア帝国を再現し、自身を皇帝になぞらえているかのようです。アジアでは中華帝国の習近平皇帝が君臨し香港の自治を破棄し、台湾を虎視眈々と狙っています。米国の衰えを象徴するかのような出来事です。わが日本はどんな姿勢を示すのでしょうか。自主自立の気概を示せるのでしょうか。疑問符が付きます。シベリア寒気団だけではない、北からの冷風に身震いします。

さて、今夏の書評はリベラルの意味について考えてみます。(302)で取り上げた「民主主義とは何か」と合わせて読むと、私達が当然と思っている安定の基盤は実に脆弱だということがわかります。




吉田徹「アフター・リベラル 怒りと憎悪の政治」講談社現代新書 2020年

リベラル・デモクラシーという概念が、本書の鍵となっている。リベラルとデモクラシーは必ずしも親和的ではない。ファシズム、社会主義との対峙の中で一致した。経済リベラルと政治リベラルの相克と、脱工業化の流れの中で中間層が没落し、結果的に社会民主主義が弱体化して権威主義、国家主義的な勢力が伸長する。後段では個人が政治に関与する条件喪失により、テロリズムやポピュリズム政治を招き寄せると警告する。




【如月雑感】


▼ 日課の散歩の道すがら、春の兆しを見つけました。大好きな福寿草です。冷たい風よりは、強まる日差しが優ったのでしょう。開いた花びらの黄色が目に沁みる思いでした。紅白の梅も咲き始め、春はそこまで来ています。


▼ 心が安らいだのに、いやなニュースです。どんな理屈があろうが、隣国に武力行使をする。許し難い行為です。戦前の軍国日本は、中国大陸で謀略的に事態を悪化させ侵攻の理由にしました。それを思い起こさせるプーチンの振る舞いです。まるで誇大妄想狂です。戦火にさらされる住民が心配です。台湾有事も囁かれています。米国に付き従う我が国は巻き込まれるのでしょうか。他人事ではありません。この事態を奇貨として、日本でも軍備増強、核兵器保持などの極論が力を得ないか心配です。




<今週の本棚>


竹倉史人「土偶を読む」晶文社 2021年

もう30年近く前になるでしょうか。富士見市の社会教育課長時代に、文化財関係の出張で八戸に行きました。その際かの有名な遮光器土偶を、まじかで見る機会に恵まれました。直感的にこれは飛来した宇宙人をかたどったものに違いないと思いました(宇宙人、UFOマニアならではですね)。土偶は縄文人の情念を感じられる不思議な形をしています。何を表象したのか、解釈は様々です。考古学者ではない著者は考古学の常識を離れ、独自の視点で解明します。ネタバレは避けますが、思わず納得でした。


原一男「ゆきゆきて、神軍」(ドキュメンタリー映画) 1987年

DVDを紹介します。「ゆきゆきて神軍」を知っていますか。読書仲間である先輩から送られてきました。衝撃的な内容です。南方ニューギニア戦線に送られた兵士が舐める辛酸と、醜悪な事態。戦後辛うじて復員した兵士奥崎が、その事実と責任を追及するドキュメンタリーです。補給を絶たれ1300人の部隊は100人になり、飢えにさいなまれる。理不尽に処刑された兵士、人肉食さえあり得たという。処刑を命じた上官の責任を追及する奥崎は、暴力も辞さない。それをカメラは執拗に追う。戦争と軍隊という理不尽の塊が、浮き彫りになる。




週刊読書人2月25日号に書評「人新世の『資本論』」が掲載されました。図書館雑誌2021年11月号からの転載です。よかったらお読みください。

コロナ禍、日常生活を脅かしています。このところ死者の増加には驚かされます。ワクチンの早めの接種をお薦めします。ほぼ医療崩壊になっています。自衛しましょう。奥深い自然界に、もっと謙虚になるべきです。争いをしている時なのでしょうか。


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