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一次創作小説倉庫(灰音ハル)

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小説置場です。140字関連、掌編、短編、長編とジャンルばらばら。お好きにお読みください。
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記事一覧

【短編】赤い月

【短編】赤い月

 なんとなく悪いことをしたくなって、貴方の残したオレンジの皮をゴミ箱に捨てることにした。
 残しておいても意味がない。何でも残したがる私のことを、貴方は「面白みがない」と小馬鹿にしていたけれど、もう今更何を言っても詮のないことなのだ。
 貴方は最低な男だったと思う。浮気もしたし、ギャンブルもした。ロクでもない男というのは貴方のような男をいうのだろう。だけど、私が泣くといつもしみじみと「ごめんね」と

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ちょっと病んだ

ちょっと病んだ

「誰でも良いのか」と問われたら、答えに困る。答えに困って、そうではない理由を並べ立てる。きっと、話しかける前から考えていたことを、つらつらとのたまうのだ。聞いてくれる相手は誰でも良い。そういう自分なのだ。
 本心を話したところで、何が救われるのだろうと思う。どうせ、相手は困る。だけど「何故、自分に話したのだ」と僕を責めないだろう。泣きもせず、ただ泣きもせずに黙ったままの僕を見て、相手は心配するだろ

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あたしはてんさいだから

 あたしはてんさいだから。なんでもできます。ほうっておいて。あたしはひとりでだいじょうぶ。たにんにきょうみはないの。あたしはあたしのことがだいすきで、あたしさえいればもんだいない。せかいはきょうもうつくしく、あたしをかがやかせてくれる。それを、自己肯定感の化け物だと、あなたは言うのでしょう。
 あたしはてんさいなので。ひとまえでなみだはみせません。ながすひつようがありません。なやみはあるけれど、だ

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俺がいないと君は死んじゃうから

俺がいないと君は死んじゃうから

俺がいないと君は死んじゃうから中学二年生

 中学二年生の頃、親友の駒がいきなり”見える”人になった。あの、ほの暗い放課後の教室で、顔を突き合わせて他愛もない話をしているとき、駒は思いだしたように言ったのだ。
「俺さ、なんか見えるんだよね」と、得意げな顔で。
 その頃の俺は、読書家の父と母と姉の影響で、家にある本は片っ端から読んでいて、同級生よりも少しだけ世の中の物事に詳しかった。だから、目の前の

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あたし、金持ちになったら高校生と付き合う

あたし、金持ちになったら高校生と付き合う

 あたし、金持ちになったら高校生と付き合う。
 なんて言ってた同級生のこと、顔も思い出せない。だっさいなぁ、いけてんなぁ。どっちも感じなかった。あ、そうなんだ……ぐらいだった。でも、それから十数年経ったあたしには、いい感じに聞こえる。いいね、あたしもお金持ちになったらさ……でも、昔に比べたら今のあたしでも、じゅうぶんお金持ちかも。そしたら、あたしが、もっともっとお金持ちになったら。そんな妄想をした

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【小説】魂の少年カガミ3

【小説】魂の少年カガミ3

GWも終わってしまいますね。つづいています。

 一話
 二話

 僕とギルバートは、リタリスにバレないように静かに彼の家をまわった。そもそも、そこまで大きな家ではなかった。だから、時間はかからなかったように思う。そして、後はリタリスが眠っている筈の寝室しかなくなったとき、ギルバートは言った。
「外に倉庫があった。そこを見よう」と。
 その言葉通り、僕とギルバートは静かに家を出て、改めてリタリスの

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【小説】魂の少年カガミ2

【小説】魂の少年カガミ2

つづきました。

 一話

「兎に角、俺が覚えているのは、自分が魂だけの存在になって、びぃ玉に取り付いていたことぐらいだ。そして、恐らくはお前が俺をびぃ玉から取り出した」
「まさか、僕はびぃ玉の中に人がいるだなんて思ってもいなかったし」
「偶然だとしても、そうとしか思えない。それに、お前は虚影の家族なんだろう? 虚影と似たことができたとしても驚かない」
「……」
 確かに、虚影が過去に彼――ギルバ

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【小説】魂の少年カガミ

【小説】魂の少年カガミ

 なんか書きたくなったので。

 ある日、僕は火を見た。密やかで慎ましい火だった。その火が風に揺られると、たちまち一面が火の海になった。直ぐ目の前、僕の鼻先まで近づいた火は、だけども僕を燃やしはしなかった。ゆらゆらと揺らめく炎は、僕を中心にして、放射線状に広がっていく。それを、僕は宙から眺めていた。おかしいな、僕はあの炎の中心にいた筈なのに。ふと、僕の手に何かが触れる。それは、青く透き通った丸い粒

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【短篇】カルデネに捧ぐ 下

【短篇】カルデネに捧ぐ 下

本編 勇者と魔王の争いに、勇者は勝ちました。勝ちました。勝ちましたので、人間は幸せに生きていけました。勇者は、勇者は、勇者は、ゆう
「そうだ、取引をしよう」
 と、魔王は言いました。勇者一行は、勇者以外は口も聞けない状況でした。それだけ、魔王は強かったのです。勇者も、もう虫の息でした。
「何の取引だ?」と、勇者は言いました。
「俺は一度人間になってみたかったんだ。お前の身体を寄こせ」と、魔王は言い

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【短篇】カルデネに捧ぐ・上

【短篇】カルデネに捧ぐ・上

  何か書けたので、上下編。

 数百年前、突然に魔族が現れました。魔族は人間を嫌い、人間を襲ういきものでした。人間よりも身体が大きく強い力を持つ魔族に、普通の人間は、到底太刀打ちできませんでした。そうして人間は長い間、魔族を恐れ怯え隠れながら暮らすことになったのです。その中で、また突如として現れたのが勇者でした。勇者は誰よりも勇敢で、誰よりも強い人間でした。勇者は仲間の数人を引き連れ魔族に立ち向

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【なぞ】加湿器

【なぞ】加湿器

ボーナスで買った加湿器 冬のボーナスで加湿器を買った。黒色の、そこまで大きくないやつ。友人が加湿器を買ってからとても良いと言っていたから、何となく買った。給与明細に記載されたボーナスの金額が思ったよりも多かったのもあるかもしれない。とにもかくにも、私は加湿器を買った。毎日、水を入れるのが日課になった。実際効いているかなんかはわからないけれど、加湿器を持っている自分が少しだけ誇らしくて、気持ちは明る

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【短篇】36

【短篇】36

 こういう感じの話を急に書きたくなったので。

36 蓮比良 赤根、高校一年生。春、夏、秋、とトントン拍子に進み、気づけば冬になっていた。入学式の日の写真もすっかり思い出になった。黒い前髪は眉毛の辺りで切り揃えられている。入学式の前日に、慌てて美容院に行ったのだ。元々髪が伸びるのは遅い方だったけど「どうせ直ぐに伸びるから」という母親の勧めで、ザックリ切った。前髪が長いと、目が悪くなる。ついでに、目

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短編3作

短編3作

もはや掌編。

アンリアル む、かしに恋人に言われた言葉が忘れられないのです。

 髪を染められずにいるのは、明るい色が似合わないと言われたから。ヘアカタログの短髪をスポーツマンみたいでダサいって笑われて、前髪も後ろ髪も、それ以上は切れなくなった。今以上になりたかったのに、今以下になるのが怖くなっちゃって、結局何もしなくなった。箪笥に服を入れるのが面倒になった。どうせ、何を着ても同じだと思うから。

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【短篇】ロスト

【短篇】ロスト

昔に書いた短編。

【短編】ロスト 正直なところ、僕はどうやって生きていけば良いかなんてわからないのです。
 日々を無駄に消化している。胸を掻き毟るような衝動が湧いては消えていく。明日になれば、全て忘れている。僕達はアルコールを消化するだけのいきものに成り果てている。それで良いじゃあないか、なんて君は言うけれど、僕はそれは間違いなんじゃあないかと思っている。ただ、そう思うだけで何をするわけでもない

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