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あたしはてんさいだから
あたしはてんさいだから。なんでもできます。ほうっておいて。あたしはひとりでだいじょうぶ。たにんにきょうみはないの。あたしはあたしのことがだいすきで、あたしさえいればもんだいない。せかいはきょうもうつくしく、あたしをかがやかせてくれる。それを、自己肯定感の化け物だと、あなたは言うのでしょう。
あたしはてんさいなので。ひとまえでなみだはみせません。ながすひつようがありません。なやみはあるけれど、だ
俺がいないと君は死んじゃうから
俺がいないと君は死んじゃうから中学二年生
中学二年生の頃、親友の駒がいきなり”見える”人になった。あの、ほの暗い放課後の教室で、顔を突き合わせて他愛もない話をしているとき、駒は思いだしたように言ったのだ。
「俺さ、なんか見えるんだよね」と、得意げな顔で。
その頃の俺は、読書家の父と母と姉の影響で、家にある本は片っ端から読んでいて、同級生よりも少しだけ世の中の物事に詳しかった。だから、目の前の
あたし、金持ちになったら高校生と付き合う
あたし、金持ちになったら高校生と付き合う。
なんて言ってた同級生のこと、顔も思い出せない。だっさいなぁ、いけてんなぁ。どっちも感じなかった。あ、そうなんだ……ぐらいだった。でも、それから十数年経ったあたしには、いい感じに聞こえる。いいね、あたしもお金持ちになったらさ……でも、昔に比べたら今のあたしでも、じゅうぶんお金持ちかも。そしたら、あたしが、もっともっとお金持ちになったら。そんな妄想をした
【小説】魂の少年カガミ3
GWも終わってしまいますね。つづいています。
一話
二話
僕とギルバートは、リタリスにバレないように静かに彼の家をまわった。そもそも、そこまで大きな家ではなかった。だから、時間はかからなかったように思う。そして、後はリタリスが眠っている筈の寝室しかなくなったとき、ギルバートは言った。
「外に倉庫があった。そこを見よう」と。
その言葉通り、僕とギルバートは静かに家を出て、改めてリタリスの
【小説】魂の少年カガミ2
つづきました。
一話
「兎に角、俺が覚えているのは、自分が魂だけの存在になって、びぃ玉に取り付いていたことぐらいだ。そして、恐らくはお前が俺をびぃ玉から取り出した」
「まさか、僕はびぃ玉の中に人がいるだなんて思ってもいなかったし」
「偶然だとしても、そうとしか思えない。それに、お前は虚影の家族なんだろう? 虚影と似たことができたとしても驚かない」
「……」
確かに、虚影が過去に彼――ギルバ
【小説】魂の少年カガミ
なんか書きたくなったので。
ある日、僕は火を見た。密やかで慎ましい火だった。その火が風に揺られると、たちまち一面が火の海になった。直ぐ目の前、僕の鼻先まで近づいた火は、だけども僕を燃やしはしなかった。ゆらゆらと揺らめく炎は、僕を中心にして、放射線状に広がっていく。それを、僕は宙から眺めていた。おかしいな、僕はあの炎の中心にいた筈なのに。ふと、僕の手に何かが触れる。それは、青く透き通った丸い粒
【短篇】カルデネに捧ぐ 下
本編 勇者と魔王の争いに、勇者は勝ちました。勝ちました。勝ちましたので、人間は幸せに生きていけました。勇者は、勇者は、勇者は、ゆう
「そうだ、取引をしよう」
と、魔王は言いました。勇者一行は、勇者以外は口も聞けない状況でした。それだけ、魔王は強かったのです。勇者も、もう虫の息でした。
「何の取引だ?」と、勇者は言いました。
「俺は一度人間になってみたかったんだ。お前の身体を寄こせ」と、魔王は言い
【短篇】カルデネに捧ぐ・上
何か書けたので、上下編。
数百年前、突然に魔族が現れました。魔族は人間を嫌い、人間を襲ういきものでした。人間よりも身体が大きく強い力を持つ魔族に、普通の人間は、到底太刀打ちできませんでした。そうして人間は長い間、魔族を恐れ怯え隠れながら暮らすことになったのです。その中で、また突如として現れたのが勇者でした。勇者は誰よりも勇敢で、誰よりも強い人間でした。勇者は仲間の数人を引き連れ魔族に立ち向