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会社の成長を支えるナンバー2の育て方 vol.91 ナンバー2の役割⑫リーダーの機能

現場のリーダーとしてバランス感覚を身につけさせる

中小企業のナンバー2は社長の補佐をしつつ、同時に現場の責任者、リーダーでもある場合がほとんどです。社長との密な関係性にあり、期待されているのは、会社が進む方向性を熟知し、その方針を具現化し、実行に移すことであり、現場の状況や課題を正確に把握し、タイムリーかつ柔軟に対応することも求められています。

これは言い換えると、「経営を意識し、現場の現実と理想や目標とのギャップを埋めること」で、言葉にすると簡単そうに聞こえますが、なかなか難しい役割なのです。つまりバランス感覚がとても大切になってきます。

もう少し下層のリーダーと大きく異なるのは、経営を意識しているかどうか、バランス感覚に長けているかどうかという点です。

短期的な目標達成のために多くのことを犠牲にする会社

売上などの数値目標の達成を目指しているだけなら、極端ですが、そのために長時間労働を強いたりするなど部下を酷使して目標達成することはできるかもしれません。

ですが、そのようなやり方を続けていれば現場のメンバーは体調不良になったり、社内の人間関係がギスギスしたり、モチベーションの低下、離職などにも繋がる可能性が高まります。

経営を意識し、全体最適で考えていれば、無理な方法で短期的な目標達成はできても、その後に会社全体に悪い影響をもたらすリスクとなるのは容易に想像がつきます。

忙しい

現有メンバーに頑張ってもらうしかない

無理やり目標達成させる

体調不良、モチベーション低下、ハラスメントなどの弊害

人が辞める

さらに忙しい

現に、仕事があり、売上を作る目途はあるものの、従業員の定着率が悪く、常に人手不足で採用活動をしている会社はこの悪循環を繰り返しています。問題を先送りにして、現場で働くメンバーの責任にしているだけですね。

もし、ナンバー2と目される存在がいて、そうした状況が続いているのであれば、全体が見れていない証拠ですし、社長も「目標達成のためには仕方がない、ついて来れない人間はどうせいずれ辞める」程度の認識であるなら、安定した会社にはなかなかなれないでしょう。

短期的な目標の追求だけに焦点を当て、結果として現場メンバーの働きすぎや負担ばかり増やすやり方、考え方を捨て、持続可能で安定した事業運営のためには、ナンバー2が現場を指揮するうえで、目標達成を目指しつつも、社員に無理強いばかりせずに結果を出させるやり方を考えるというバランス感覚を持たせることが重要なポイントです。

そもそも目標達成さえすればオールOKという考えで、社長とナンバー2がほくそ笑んでいるのであればその会社の未来は間違いなく暗いでしょう。従業員は交換のきく使い捨ての存在で、他人の人生を軽く考えているのですから信頼関係など築きようがないのです。

経営理念の浸透もまた同じ

売上などの数値目標達成の場面以外でも同様のことが言えます。わかりやすい例でいえば経営理念の実現です。

経営理念が社員にとって理解しやすく共感される内容であればまだいいですが、それでも急激な変化を求めたり、理念が現実的でない、具体的でない場合には社内に混乱を招き、社員を疲弊させ、白けさせてしまいます。現実的かつ共感できる理念を設定し、時間をかけて柔軟に適用することが重要です。

理念作りの過程においても、社員とも十分なコミュニケーションがないまま進められ、経営側が秘密裏に準備し、いざ実施となった場合においてもガイダンスもなく、評価との紐づけも不透明では、社員にストレスや負担を増やすだけです。

目標達成においても、経営理念の実現においても、日常の業務においても、「一方を立てれば、他方が立たず」ということがほぼ起きますから、AかBかという二者択一だけではなく、それ以外の選択ができる判断能力、企画力が欲しいところです。

バランス感覚を養うにはどうすればいいのか

では、バランス感覚を養うにはどうすればいいのでしょう。シンプルなことです。

・自分がした判断結果を客観的に見る
・各種数値を分析する
・部下からの意見に耳を傾ける
・それらを受け止める

そのうえで、判断材料が足りなかったのであればその材料を適時に集める習慣や仕組み、部下とのコミュニケーション不足を改める必要があるでしょうし、自分で気づけないバイアスを他人に指摘してもらい、かつ、それを受け入れる器量を少しずつでも広げるしかありません。

また、客観的に見るという点においても、鳥の目、虫の目、魚の目といわれるさまざまな角度から物事をみる訓練をしないといけないでしょう。

そして、自分で全ての答えを出そうとせずに部下をはじめとする他人の意見に耳を傾け、より良い選択をするという判断方法も覚えなければいけません。

自分は常に正しい判断ができるなどゆめゆめ思わないことです。自信と過信は紙一重ですが、成功体験が強い人ほど自分が正しいと思い込みやすく、その背景には素直さと謙虚さの不足があることが指摘できます。自分の間違いや非は認めたくないものですが、素直に自分の非を反省できるようになってはじめてリーダーとしての階段をひとつ上がれるようになると思います。

まとめ

今回はナンバー2のリーダーとしての機能の解説でした。管理職全般に通じる内容でもありますが、経営幹部であるナンバー2であるならより高次元でのリーダーシップを発揮する期待と必要性があります。

そして、私が日頃からお伝えしているナンバー2の役割の解説は今回で最終になります。他にも必要な要素があると感じつつも、15年に渡り実際にナンバー2を務めた経験を踏まえて12の役割を厳選しています。

社長の補佐役としてナンバー2がその役割を果たすことで、会社全体に活力を与え、社長の理想の実現のために成果を出してくれます。

柔軟性、リーダーシップ、コミュニケーション能力を備え、変化に対応できるナンバー2という存在が会社の成長に不可欠であることを再確認して頂けましたら幸いです。

【過去記事はこちらから】
ナンバー2の役割①補佐役の機能
ナンバー2の役割②フォロワーの機能
ナンバー2の役割③実行役の機能
ナンバー2の役割④通訳役の機能
ナンバー2の役割⑤改革役の機能
ナンバー2の役割⑥調整役の機能
ナンバー2の役割⑦統括役の機能
ナンバー2の役割⑧代理役の機能
ナンバー2の役割⑨嫌われ役の機能 
ナンバー2の役割⑩諜報役の機能
ナンバー2の役割⑪諫言役の機能

最後までお読みいただきありがとうございます。

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