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昔語り: 外国語と海外生活

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昭和から平成にかけて、これまで経験してきた外国語との付き合いや、海外生活の思い出を纏めています
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英語格闘記:暇潰しの早口言葉

英語格闘記:暇潰しの早口言葉

年寄りの独り言として読んで頂きたい。

もうかれこれ40年近く前の事。

筆者はイギリスで日本人学校を卒業した後、インターナショナルスクールに放り込まれた。

まずは付属の語学ユニットで勉強をするのだが、この語学学校では月に二回程、外部の演劇学校の先生がやってきて授業を行っていた。

「自己表現と発音を磨き、発話を促進する」という目的の元、ロールプレイングゲームなどを沢山やったのだが、中でも皆が好

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昔語り : インターナショナルスクールの子

昔語り : インターナショナルスクールの子

その朝はどんよりと曇っており、雪でも降りそうなくらいの寒さだった。
カーテンを開けるとようやく朝日が昇ってくるのがわかる。

昭和61年。一月のロンドンの朝は気の滅入るものだった。まだ朝も明けきらないうちから起き出し、朝食をとる。出かける支度、といっても筆箱と小さいノートとお財布、そしては母が作ってくれたお弁当を入れるだけだ。

「じゃあ行ってきます」
「気をつけてね」
「うん」

そう言って

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昔語り:小さなLegal Aliens

昔語り:小さなLegal Aliens

昔々,40年近く前の事。筆者は親の転勤でイギリスに住んでいた。
14歳で行ったイギリスに慣れるので精いっぱいの日々を送って数年たった頃,親からこういわれた。

「16歳の誕生日から一週間以内に外国人登録をしに警察署へ行かなければならない。昼間しか都合が付かないから授業を休んでいいか先生に言っておけ」

現在はどのように呼ばれているか分からないが、当時外国人登録は「Alien Registratio

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英語格闘記:帽子とアスコット競馬

英語格闘記:帽子とアスコット競馬

昔々,昭和時代の終わりぐらいの事。

筆者は十代の途中で家族の転勤でイギリスに移り住んだ。

高校生の頃、ラジオを聴くのが好きだった。

インターネットの無かった時代、外国語を覚えるために使えるものの一つにラジオがあった。

天気予報から始まり、ニュースやバラエティ、ラジオドラマ、音楽、DJのおしゃべりやラジオ局に音楽のリクエストをしてくるリスナーとのやりとり。様々なスタイルの外国語を耳にすること

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バブル期の昔語り:耳から学ぶ英語

バブル期の昔語り:耳から学ぶ英語

年寄りの独り言として聞いていただきたい。もうかれこれ40年程前の話だ。

筆者家族は三年と言う短期間でイギリスに住むこととなった。

この当時、日本がちょうどバブルの真っただ中だった。

当時住んでいたイギリスは景気が悪かっただけではなく、いきなり日本からの輸入や日本企業の進出が増えた事に戸惑っており、景気の良い日本に非常に気を悪くしている人達もいた。

大きな理由の一つとしてあげられるのが第二次

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エッセイ:「ありがとう」と「お願いします」を巡る階級闘争

エッセイ:「ありがとう」と「お願いします」を巡る階級闘争

飛行機が成田空港を出発し,私達家族は日本を離れた。

昭和の終わり頃,父の急な転勤で私達家族は海外生活を余儀なくされた。

当時は単身赴任という選択肢が無かった様で,子供がどんなに年齢が行っていても海外赴任に同行させられた。

現地の言葉など全く使いこなせない我が家は,到着後,一足先に現地に入っていた父と合流し,新しく住む家に連れていかれた。

屋内で靴を脱ぐ習慣の無い国とは聞かされていたが,玄関

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昔語り:交換留学生と帰国子女は同じか

昔語り:交換留学生と帰国子女は同じか

昭和時代の年寄りの一人言として聞いていただきたい。

学生時代,筆者の周囲には驚くほど海外留学を希望する学生がいた。

筆者の通っていた大学には交換留学の制度があり,それを利用して海外の大学にチャレンジしたい優秀でやる気のある学生が大勢いた。交換留学では自分の目指す勉強ができない人は,自費留学でも海外の大学へと勉強に行くことになった。

交換留学は通常3年生の秋に海外の大学に行き,4年生の春に戻っ

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昔語り:エッセイ : 危険と共に過ごす海外生活

昔語り:エッセイ : 危険と共に過ごす海外生活

パーンという激しい爆発音の後に、地響きのような揺れが起きた。

道行く老人たちは皆、路上に伏せた。

道の反対側にうつぶせになっている老人がこちらに手を振って、「Duck!」と叫んでいる。

とっさに私も路上にうつぶせになった。

しばらくして消防車と救急車のサイレンが鳴り、パトカーが何台も通り過ぎて行った。

道にうつぶせになった人達は何事も無かったかのように起き上がると、その場を急いで立ち去っ

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