松下杏奈

元旅行会社員。世界のお酒と旅に纏わるエッセイや、様々なジャンルの小説などを書いています…

松下杏奈

元旅行会社員。世界のお酒と旅に纏わるエッセイや、様々なジャンルの小説などを書いています。お気軽にフォローしてください。小説やエッセイを世界各国のAmazonで販売中です。https://amzn.to/3nMy47W https://amzn.to/3I7pjMp

マガジン

  • 昔語り: 外国語と海外生活

    昭和から平成にかけて、これまで経験してきた外国語との付き合いや、海外生活の思い出を纏めています

  • [連載中]世界のお酒と歴史

    世界中の美味しいお酒。それは人類が古来から愛してきたものが沢山あります。お酒の歴史をひも解き、来し方行く末に思いを馳せてみませんか。美味しいお酒のお供にどうぞ。

  • 昔語り:小さなインターナショナルスクールの思い出

    今は昔のさる国のインターナショナルスクールでののんびりした珍道中を綴ったエッセイ集です。

  • 小説 | 島の記憶[完結]

    南の島の歴史ファンタジー(連載中)

  • 短編小説集: 昔語り : バブル期の日本の片隅で

    バブル期という日本が経済的に盛り上った時代。その時代、日本は海外をどのように見ていたのでしょうか。アメリカ礼賛が讃えられ、英語学習が未曽有のブームになったバブルの最後の数年間の事象を、主に学生の目で振り返った短編小説集です。

最近の記事

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小説:バブル期の日本 : 帰国子女はずるい

あたしは人に負けない。絶対。 小さなころからあたしはアメリカに憧れてた。 昭和の時代、日本はアメリカの情報で溢れていた。 アメリカはやっぱりすごい。 何においてもすべての分野で世界で抜きん出て優れている国。 スケールが日本の何倍も大きくて、自由がある国。 世界一強くて影響力のある国。 豊かで、一流の物が数限りなくある国。 模範にすべき国。 追いつけ、追い越せの国。 素晴らしい国アメリカ。 夢の国、アメリカ。 世界中の人々が憧れてやまないアメリカ。

    • エッセイ:食べ物の匂いと文化

      昔々,40年程前のイギリスでの事。 あるスイス人の友人からこう聞かれた 「Japanese eat raw fish 日本人は生魚食べるだろう」 まあ,そうだと答えると,「気持ち悪い」と言われた。 Raw fishは確かに生魚なのだが、この表現を使うと、生けすや海,川で釣った魚を生のまま頭からばりばり食べる、という事になる。 筆者はイタリア料理のカルパッチョを例に出し、薄く切った生の魚を食べる( Eat sliced fresh fish)と訂正した。魚のカルパッチ

      • コングラボードを頂きました。

        書くタイミングをすっかり忘れていましたが、短編小説がコングラボードを頂きました。#英語が好きのカテゴリーでした。 お読み頂きました皆様、ありがとうございました。 このテーマも追及しつつ、幅広い作品を書ければと思っています。 ボードを頂いた作品はこちらです。

        • エッセイ:ヨーロッパの片隅の鉄道の旅

          今から30年程前、交換留学でイギリスの北西部に居た私は、春休みに念願だったノルウェーからベルギーまでの縦断の旅に出た。 当時のユーレイルパスはヨーロッパの列車や長距離バスが一年間乗り放題になる切符だった。イギリスは当時EU圏だったため、国内を少しでも長めの距離を移動すれば元が取れるくらいの便利な切符だった。 休みに入ってすぐに、私はバスと船を使って北欧のノルウェーに向かった。一度北海を横断してみたからだった。 出発が遅かったため、大学からまず電車で北の街のカーライ

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        小説:バブル期の日本 : 帰国子女はずるい

        マガジン

        • 昔語り: 外国語と海外生活
          8本
        • [連載中]世界のお酒と歴史
          6本
        • 昔語り:小さなインターナショナルスクールの思い出
          5本
        • 小説 | 島の記憶[完結]
          37本
        • 短編小説集: 昔語り : バブル期の日本の片隅で
          7本
        • [連載中]世界のお酒と旅 エッセイ集
          14本

        記事

          英語格闘記:暇潰しの早口言葉

          年寄りの独り言として読んで頂きたい。 もうかれこれ40年近く前の事。 筆者はイギリスで日本人学校を卒業した後、インターナショナルスクールに放り込まれた。 まずは付属の語学ユニットで勉強をするのだが、この語学学校では月に二回程、外部の演劇学校の先生がやってきて授業を行っていた。 「自己表現と発音を磨き、発話を促進する」という目的の元、ロールプレイングゲームなどを沢山やったのだが、中でも皆が好きだったのが「早口言葉」だった。 「早口言葉」は様々な国からやって来た生徒が英

          英語格闘記:暇潰しの早口言葉

          短編小説:バブル期の日本:帰国子女の間違った処世術

          私がその子に気が付いたのは、1987年10月に東京の鷲知(しょうち)大学で行われた入試の面接の時だった。 英語学を学ぶその学科には筆記試験と面接があり、筆記試験をパスした私の所には面接の通知が届いた。 5年間イギリスの北西部で中学生と高校生時代を過ごした私は帰国子女枠で入試に臨んだ。言語学を学んで本気で英語と言う言語に正面から向き合いたい。将来は教員免許を取って教師になるか、または翻訳家か通訳になるという夢もあった。 面接は約10分。たったそれだけの短い時間で結果が出る

          短編小説:バブル期の日本:帰国子女の間違った処世術

          曾祖父と原爆ドーム

          第二次大戦中、私の曽祖父は広島県産業奨励館、現在の原爆ドームで働いていた。 1945年8月6日の朝、曽祖父はうっかり忘れものをし、一度自宅に戻った。 自宅に戻った頃、原爆が投下され、広島市内は火に包まれたそうだ。 これは「忘れ物事件」として親戚が集まると話に出ることがあった。 しかし、祖父母はあまりいい顔をしなかった。 「あの時の広島は皆原爆の影響を受けているんだから」,と。 決してうちだけじゃないんだよ,と。 曾祖父と曾祖母の家は爆心地から離れてはいたものの、二人とも

          曾祖父と原爆ドーム

          短編小説:自己顕示

          「何で田代さんなんかに!私ですらそんなことしたことが無いのに・・・不愉快です。私、帰ります」 いきなり激怒した冴木は、居酒屋の席を蹴って立つと、つかつかと出口を出て行った。田代真由美はあっけにとられて彼女の後姿を見送った。 そもそもの始まりは田代の職場にかかってきた一本の電話だった。 音楽出版をしている会社で勤務する田代は、その日の朝はオフィスで朝のメールのチェックと顧客への報告をしていた。顧客への連絡が一段階終わった10:00頃、電話が鳴った。ちょうど手が空いていた

          短編小説:自己顕示

          世界のお酒と歴史:フランス:ロワール河の西で育まれるワインの歴史

          ロワールワインとは、フランスの最大河川ロワール河畔に広がる広大なワインの産地である。 西の河口側からペイ・ナンテ地区、アンジュー&ソーミュール地区,トゥーレーヌ地区、そして一番陸地の奥のサントル&ニヴェルネ地区と、四つの地区がある。 今回は一番河口に近いペイ・ナンテで製造されるワインの「ミュスカデ」についてご紹介する。 ミュスカデは,「ミュスカデ」というブドウから作られる白ワインのことだ。 別名「「ムロン・ド・ブルゴーニュ」と呼ばれるこのブドウは、ブルゴーニュのメロン

          世界のお酒と歴史:フランス:ロワール河の西で育まれるワインの歴史

          昔語り:海外旅行と長すぎた蜜月

          「あんなの,観光客にバカ高いコッツウルドのアフタヌーンティでも食べさせておけばいいのよお!」 30年程前に6年程子供の時にイギリスで暮らしてにいた知人が言った。 この知人は幼少の頃アメリカで長く生活し、その後6年程イギリスで生活した人物である。 海外旅行の門外漢が、海外旅行のマーケティングを知り尽くしたかのような発言をしたのは興味深かった。 海外にある程度長く居た人は、観光客と長期滞在者との区別を付けたがる人がいるようだ。 自分は海外に長く居るので、居住者、または地

          昔語り:海外旅行と長すぎた蜜月

          昔語り:恩師との出会い

          年寄りの独り言として読んでいただきたい。 1990年代の終わり頃。 その先生との出会いはある街のアメリカ系のインターナショナルスクールだった。 10月から高等部に通うことになっている学校。どんな所なんだろうと、その学校がやっているサマースクールに出席することにした。家にいても大して勉強はしないだろうし、行って損にはならないだろう。それよりも自分がこれから通う学校にそこはかとない興味があったからだ。 サマースクールの始まった9月のある日、地下鉄で初めてその学校に向かった

          昔語り:恩師との出会い

          【改定】小説:帰国子女はずるい:子供は絶対バイリンガル(1)

          「キャレン、ノー。ユー プレイ ウィズ ヨゥラ フレンズ ヒアール カレン、ダメよ。こっちのお友だちと遊びなさい」  東京の瀟洒な高級住宅地の一角にあるプリスクール。三歳になった三女のカレンを連れたあたしは、勇んでスクールの中に足を踏み入れた。 シンプルかつエレガントな作りのホールには迎えの先生方がおり、あたしたちは自己紹介をして中の教室まで連れて行ってもらった。 プリスクールの大きな教室には、大きな籠に入ったおもちゃとカラフルな沢山のクッション。テディベア

          【改定】小説:帰国子女はずるい:子供は絶対バイリンガル(1)

          昔語り:小さなLegal Aliens

          昔々,40年近く前の事。筆者は親の転勤でイギリスに住んでいた。 14歳で行ったイギリスに慣れるので精いっぱいの日々を送って数年たった頃,親からこういわれた。 「16歳の誕生日から一週間以内に外国人登録をしに警察署へ行かなければならない。昼間しか都合が付かないから授業を休んでいいか先生に言っておけ」 現在はどのように呼ばれているか分からないが、当時外国人登録は「Alien Registration」と呼ばれていた。 ご存じの通りalienには二つの意味がある。一つは異星人

          昔語り:小さなLegal Aliens

          バブル期の昔語り:耳から学ぶ英語

          年寄りの独り言として聞いていただきたい。もうかれこれ40年程前の話だ。 筆者家族は三年と言う短期間でイギリスに住むこととなった。 この当時、日本がちょうどバブルの真っただ中だった。 当時住んでいたイギリスは景気が悪かっただけではなく、いきなり日本からの輸入や日本企業の進出が増えた事に戸惑っており、景気の良い日本に非常に気を悪くしている人達もいた。 大きな理由の一つとしてあげられるのが第二次世界大戦だろう。 七つの海を制覇していたイギリスは、東南アジアにも植民地を持っ

          バブル期の昔語り:耳から学ぶ英語

          英語格闘記:帽子とアスコット競馬

          昔々,昭和時代の終わりぐらいの事。 筆者は十代の途中で家族の転勤でイギリスに移り住んだ。 高校生の頃、ラジオを聴くのが好きだった。 インターネットの無かった時代、外国語を覚えるために使えるものの一つにラジオがあった。 天気予報から始まり、ニュースやバラエティ、ラジオドラマ、音楽、DJのおしゃべりやラジオ局に音楽のリクエストをしてくるリスナーとのやりとり。様々なスタイルの外国語を耳にすることが出来た。 中でも一番好きだったのがBBCラジオ4でやっているラジオドラマだっ

          英語格闘記:帽子とアスコット競馬

          [小説]姿の見えない同僚 - 不毛なコミュニケーション

          「黒崎!これ、エージェントから!」 2006年の冬。いつも通り終業時間の18:00ギリギリになって、営業1課部長の高山さんが、顧客である旅行会社からのFAXを放ってよこした。それには海外での視察先の情報収集依頼が記載されていた。 依頼書にはいつもの通り、私達ランドオペレーターの競合他社の名前が連名で書いてある。 業界でトップのマキトラベル。その次がカオネイトラベル。三番目にやっと私たちの会社リリパットトラベルの名前が出て来る。その次は、これもいつものイースト・ウエスト社

          [小説]姿の見えない同僚 - 不毛なコミュニケーション