K

家庭医。九州大学大学院で医療経営・管理学を学び、Directorとして活動中。2023年にThe University of EdinburghのMaster of Family Medicineを修了(With Merit)。家庭医療のあれこれを徒然に書いていく。

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家庭医。九州大学大学院で医療経営・管理学を学び、Directorとして活動中。2023年にThe University of EdinburghのMaster of Family Medicineを修了(With Merit)。家庭医療のあれこれを徒然に書いていく。

マガジン

  • 家庭医療学修士への学び at Edinburgh

    The University of EdinburghでのMaster of Family Medicine Programmeの学びを備忘録的に綴ります。

  • 働きながら大学院で学ぶ

    働きながら大学院で学ぶにあたり、なぜ大学院での学びを求めることになったのか、費用をどうやって工面したか、どうやって英語が必要な大学院で滑り込んで行ったか、などについて書いていこうと思います。

  • Principles of Family Medicine

    家庭医療のprinciples、および重要概念について紐解いていく。

最近の記事

家庭医療学修士課程の修了

診療を幅広い視点で捉え直す修士課程 Term 4を紹介してから慌ただしく、なかなか進捗について書くことができていなかった。その後、Maternal and Child Health、Patients with Complex Needs、Methodologies to Improve Family Medicineなどを学び、2023年10月にMaster of Family Medicine (with Merit)の学位を授かることができた。 家庭医療学修士の課程は

    • Family Medicine Approach to Non-Communicable Disease

      This is a brief summary of my learning of the Master of Family Medicine Programme at The University of Edinburgh. The theme of Term 4 is non-communicable diseases (NCDs). The theme is significant, as it constitutes 70% of deaths worldwide.

      • Family Medicine Approach to Non-Communicable Disease

        Term 4はnon-communicable disease (NCD)がテーマだ。世界の7割の死亡はNCDに関連していると言われており、非常に大きなテーマである。 このモジュールの内容は以下のようになっていた。 1. Social determinants of disease: a family medicine approach 2. Hypertension and cardiovascular diseases 1 3. Hypertension and ca

        • 初期研修医の教育と不確実性

          同僚と振り返りを行い、自分が初期研修医にどのように教えているのか、話していて振り返るきっかけとなりました。 話は変わるようですが、Family Medicineは不確実性の学問であるとも言われます (Biehn, 1982)。家庭医は病初期の人を診ることが多く、様々な疾患の可能性がまだ考えられる状態で、検査や治療などについて何らかの決断を行い、フォローしていきます。 これと同じように、家庭医による初期研修医の教育にも大きな不確実性があるものと思っています。専攻医はoutc

        マガジン

        • 家庭医療学修士への学び at Edinburgh
          5本
        • 働きながら大学院で学ぶ
          9本
        • Principles of Family Medicine
          11本

        記事

          Professionalism in Family Practice

          このnoteではterm3で学んだことを概観する。 プロフェッショナリズムとはTerm3はプロフェッショナリズムについて学んだ。このtermは以下の書籍が参考文献に指定されていた。訳本が出ているのでそちらを案内する。 この書籍では、プロフェッショナリズムを行動やシステムに着目して記述している。それによると、プロフェッショナリズムは下記のようなものとなっている。 "1. Professionalism is demonstrated through a set of be

          Professionalism in Family Practice

          Applied Principles of Family Medicine

          このモジュールの焦点このモジュールのテーマは、「エビデンスを評価すること、それを臨床に適用すること」だと思うが、これは単に「質の高い研究結果を患者さんにとにかく適用するようにどうにかこうにか対応する」ということを意味しない。論文のinternal validityを評価する視点、external validityを評価する視点はもちろん重要であるが、それを実際のpracticeに反映させる際のpatient-centrednessやshared decision making

          Applied Principles of Family Medicine

          Foundation of Family Medicine

          The University of Edinburgh (UoE)の学びが始まり、早3ヶ月が終わろうとしている。最初のモジュールであるFoundation of Family Medicineが終わったので、その様子を簡単に記録しておこうと思う。備忘録的な記載のため背景情報をあまり丁寧に書いていない面があるが、ご容赦いただきたい。 Course Materials以下の内容を1週間おきに進めていく内容だった。 ・What is Family Medicine ・What a

          Foundation of Family Medicine

          Principle 9: 資源を配分する

          Principle 9 家庭医は資源を管理する役割を担う。病院への入院、精査、処方、専門医への紹介など、資源のある程度の部分を管理できる。資源は有限であるため、家庭医は個人とコミュニティの双方の利益のために、資源を管理する責任を負っている。時に個人の利益とコミュニティの利益が衝突することがあり、ここに倫理的な葛藤が生じることになる。 McWhinney, I. and Freeman, T., 2016. Mcwhinney's Textbook Of Family Med

          Principle 9: 資源を配分する

          Principle 8: 「その人」を診る

          Principle 8 家庭医は患者の主観的・個人的な側面を扱う。医療は長い間、過剰に客観的で実証主義的なものとなっていた。家庭医は、感情への感受性と、関係性への洞察によって、こうした医療にバランスをもたらす。これには自分を含めた感情に対する知恵が必要になる。家庭医療が自己省察的な医療である必要性がここにある。 McWhinney, I. and Freeman, T., 2016. Mcwhinney's Textbook Of Family Medicine. Oxfo

          Principle 8: 「その人」を診る

          Principle 7: 患者を家で診る

          Principle 7 家庭医は患者を患者自身の家で診る。様々なライフイベントが生じる場所が家である。出産、死、闘病。こうしたイベントに家族とともにそこに居合わせることは、患者とその家族についての深い理解を身につけることに繋がる。家を知ることは、患者のillnessがなぜ・どのように生まれているかについての繊細なニュアンスを知ることに繋がる。近年の病院医療は技術面や効率面での利点があるものの、こうした経験を減らしている側面もある。病院の役割を見直すことは、この側面に再びバラン

          Principle 7: 患者を家で診る

          Principle 6: 患者と同じ地域に暮らす

          Principle 6 家庭医は患者と同じ地域で生活することが望ましい。患者に起こっている様々な環境的変化に気づくことができるからである。 McWhinney, I. and Freeman, T., 2016. Mcwhinney's Textbook Of Family Medicine. Oxford: Oxford University Press. 書の中では地域に起こっている土壌汚染の問題とこれに由来する住民の健康問題を、家庭環境を知らないまま診療していた医師

          Principle 6: 患者と同じ地域に暮らす

          Principle 5: 自分をネットワークの一部とみなす

          Principle 5 家庭医は自分をコミュニティにひろがる支持的ネットワークの一部とみなす。このネットワークには公式のものも非公式のものも含まれる。ネットワークの構成員は全体像を把握しないままに動くこともあるが、家庭医はこのネットワークを患者にもっとも役立つ形で機能させるという重要な役割がある。 McWhinney, I. and Freeman, T., 2016. Mcwhinney's Textbook Of Family Medicine. Oxford: Oxf

          Principle 5: 自分をネットワークの一部とみなす

          Principle 4: リスク集団をみる

          Principle 4 家庭医は自分の診療対象を「リスク集団 (population at risk)」とみなし、個々の患者と集団の両方のことを考えなければならない。予防接種やチェックアップに来ている人たちと同じように、来ていない人のことも考えなければならない。 McWhinney, I. and Freeman, T., 2016. Mcwhinney's Textbook Of Family Medicine. Oxford: Oxford University Pre

          Principle 4: リスク集団をみる

          働きながら大学院で学ぶ: The University of Edinburgh編

          受講の経緯University of WarwickのPostgraduate Diploma in Diabetes in Primary Careの最後のessayを提出したのが3月末。一応、合格見込みということで引き続いてMaster of Science (MSc)のコースに進まないかとofferを受けていた。実のところMScに進むかどうか迷った。というのも、tutorから研究についての個別メンタリングを受けながらコースが進むと聞いていたので、まさに研究について学びを

          働きながら大学院で学ぶ: The University of Edinburgh編

          番外編: 英国家庭医療学会指導医養成講習会 Part 3

          これは「大学院で学ぶ」ではなく、「英語を使って学ぶ」という番外編エントリーである。 4日目:consultation skillの教え方とcontinuing professional development (CPD)4日目の学びはconsultation skillの教え方から始まった。Consultation modelではCalgary Cambridge model (Silverman, Kurtz and Draper, 1998)、Inner consult

          番外編: 英国家庭医療学会指導医養成講習会 Part 3

          番外編: 英国家庭医療学会指導医養成講習会 Part 2

          これは「大学院で学ぶ」ではなく、「英語を使って学ぶ」という番外編エントリーである。 2日目:カリキュラムと成人学習理論2日目午前はカリキュラムについて学んだ。Genn (1955) によると、カリキュラムとは "Everything that happens in relation to the educational programme" と定義されている。カリキュラムにはhidden curriculum(指導医の背中や職場の慣習からいつのまにか学習者が学びとる学習内容

          番外編: 英国家庭医療学会指導医養成講習会 Part 2