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働きながら大学院で学ぶ: The University of Edinburgh編

受講の経緯

University of WarwickのPostgraduate Diploma in Diabetes in Primary Careの最後のessayを提出したのが3月末。一応、合格見込みということで引き続いてMaster of Science (MSc)のコースに進まないかとofferを受けていた。実のところMScに進むかどうか迷った。というのも、tutorから研究についての個別メンタリングを受けながらコースが進むと聞いていたので、まさに研究について学びを深めるチャンスだと思った。

しかし、ここで得られるtitleはMSc in Diabetes Careなのである。もちろん糖尿病診療は家庭医療診療において大きな比重を占めている分野であると言って過言ではない。しかし、自分の胸に手を当ててみたとき、「自分はacademic family medicineをやりたいんじゃないのか」という思いがあることに気が付いた。そして、このofferは見送ることにした

では、academic family medicineはどこでなら学べるのか。自分の知る限り日本にいながら受講できるのは2つのプログラムだった。

Western University
1つはカナダにあるWestern UniversityのMaster of Clinical Science (MClSc) programである。Western Universityは私のnoteでも登場するIan R Mcwhinneyが初代教授をつとめた家庭医療学講座をもつ。日本でよく知られているPatient-Centred Clinical Methodを生み出したのもこの講座である。そんな流れもあって、私の知る限り最低でも4名の日本人がこのプログラムで学んでいる(これは日本のacademic family physician人口から考えると多い方だと思う)。プログラムでは家庭医療のtheoritical foundation、教授法、リーダーシップなどについて学ぶことになっており、この業界でリーダーシップがとれるacademic facultyを養成するようなプログラムに見える。年間2週間のオンサイトがあるが、履修期間が3年間あることを考えると、なかなか厳しい条件のように思えた。また、正直なところ、教員でない自分にとって、学位をとっても職位が変わるわけではないことを踏まえると、私費で行くには学費がばかにならない。

The University of Edinburgh
もう1つは、スコットランドにあるThe University of Edinburghのthe Master of Family Medicine programmeである。これは設立趣旨としてはlower-middle income countriesにおいて質の高い家庭医療が実践されることを目指して作られている印象だった。しかし、Foundations of Family Medicine、Applied Principles of Family Medicine、Professionalism in Family Practiceという家庭医療の根幹とも思えるコースが用意されており、その他にも臨床現場で質の高い診療を行うための考え方を養うようなコースもあるようだった。Western Universityよりclinician-researcher養成を目指しているように見え、良くも悪くもacademic faculty養成とは路線が異なるように見受けられた。年間1週間のオンサイトがあるが、これはオプションであって必須ではなかった(これはcoordinatorからも確認がとれた)。つまり、完全にonlineで学ぶことができるのである。そして、学費はWestern Universityに比べるとかなり抑えられる内容だった。

自分はクリニックでの家庭医療をライフワークにしながら研究をしていくことを目指していたので、どちらかというとEdinburghのプログラムが自分に合っているのではないかと感じた。オンサイトや学費のことも当然考えた。そして、いろいろ考えたときに最後に私の気持ちを後押ししてくれたのが、英国GPの友人、アイルランドのiheedのスタッフといった、人との出会いと縁であった。またこの人たちとの縁を繋げていきたい。そんな気持ちから、気持ちはEdinburghに固まった。

このときはもう6月下旬になっていた。8月一杯がapplyのdeadlineであるが、審査などもあるため7月中にapplyすることが勧められていた。そしてここでついに試練がやってくるのである。

English qualificationである。

今まで何だかんだで一度もEnglish qualificationの提出をしてこなかったので、ここへ来てEnglish qualificationを求められても、passできるのかどうかも分からなかった。ちなみに、entry requirementで要求されているレベルはIELTSのband score overall 6.5以上で、writing、listening、reading、speakingのどれ1つをとっても6.0を下回ってはいけないという基準であった。ちなみにband score 6.5というのは英検準1級と1級の間くらいらしい。

このときは新型コロナウイルスが市中でも認められるような状況だった。IELTSの試験では試験センターに行かなければいけない。医療関係者としては街中にほいほいと行くわけにもいくまいと思った。何か良い方法はないかと考えていたところ、「英語で学び英語で評価されたMasterをもっていれば、英語の試験は受けなくても良い」と書いてあった。自分はMaste of Public Healthはもっていたものの、それはがっつり日本でとっていたものだった。が、英語で学び英語で評価されたCertificateとDiplomaはもっていたのである。これを使ってどうにかできないものか・・・・。

そこで、思い切ってacademic officeにメールした。

「あの〜、Harvard Medical SchoolのCertificateと、University of WarwickのDiplomaがあるんですけど、英語の試験何とか無しになりませんかね?ほら、今コロナウイルスのこととかがあって、試験とか受けられないじゃないですか?」

するとこんな返答が返って来た。
「は?お前ちゃんとコロナウイルス対応の特設ページ見た?オンラインの試験でいいって書いてあったじゃん?それ受けたらいいっしょ」

family medicineコースのページ内には記載はなかったが、大学全体の「コロナウイルス対応」のページには、確かにオンラインで受講できる英語の試験で良いと書いてあった。

どうやらLanguageCertという機関のテストを受ければ良いらしい。このテストの良いところは、完全に家で受けられること、タイムスロットを選ぶことができるためほぼいつでも受講できることだった。実は仮にコロナウイルスのことがなくても、IELTSの試験を受けるために週末を潰さないといけないと思うと若干憂鬱だったのだが、このLanguageCertのテストは平日でも夜でもいつでも受けられるのである。

テストには計3時間くらいかかるのだが、家だとちょっと邪魔が入りそうなこと、オンコール対応の日だとだめなことから、スケジュールを見ると締め切りまでにテストを受けられるチャンスは2回くらいだった。LanguageCertのホームページで「こんな感じのテストだよ」という練習問題をいくつか解いて、テストに望んだ。

結果は、きちんと基準をpassできていた。

特に、University of WarwickのDiplomaのときに経験したessay地獄のおかげか、writing scoreは50/50だった! あの苦労した日々が報われた瞬間だった。

結果を確認して慌ててボスに推薦状をお願いした。ボスが超多忙であることは承知していたので、ちょっとだけ下書きさせてもらい、ボスの加筆修正を受けてapplyした。

そしてその10日後、ついにacceptの結果を受け取った。

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日本人でThe University of Edinburghで学位をとった先輩は何人か知っていたのだが、Master of Family Medicine Programmeに入った人は知らない。なので、審査する側も「未知数のやつが受けて来たなぁ、どこ見て評価しよ?」と思ったのではないかと思う。おそらく一番効果があったのはUniversity of WarwickのPostgraduate Diplomaをwith distinctionでpassしていたことではないかと思う。研究と教育に強い影響力とリーダーシップをもっているUKの24大学がRussell Groupというアライアンスを築いているのだが、実はUniversity of WarwickもThe University of Edinburghもこれに参画しているのである。相手が良く知るqualificationがあれば、採る側も安心して採れる、という面があったのではないかと思う。

そんなこんなで、晴れて2020年9月から新しい学びが始まる予定だ。他の家庭医にとっても有益な学びの選択肢になるかもしれないこのコースの様子は、ぜひ別のマガジンでお伝えしていけたらと思う。



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