初期研修医の教育と不確実性
同僚と振り返りを行い、自分が初期研修医にどのように教えているのか、話していて振り返るきっかけとなりました。
話は変わるようですが、Family Medicineは不確実性の学問であるとも言われます (Biehn, 1982)。家庭医は病初期の人を診ることが多く、様々な疾患の可能性がまだ考えられる状態で、検査や治療などについて何らかの決断を行い、フォローしていきます。
これと同じように、家庭医による初期研修医の教育にも大きな不確実性があるものと思っています。専攻医はoutcome-based curriculumにのっており、アウトカムに向かって伸ばしていってあげる関わりをすることになりそうですが、初期研修医はそもそもどのような方向に伸びていく人なのか、どのような関心をもっているのか、それまでどのような研修をしてきたのか、家庭医療診療所における学習のreadinessはどの程度なのか、といったことについて極めて多様性が大きく、従ってある意味「不確実な状態」にあります。
ですから、こちらがかっちりとPlanned Curriculumを準備しても、本人が結局どのようなExperienced Curriculumを持ち帰るのかが極めて不確かになりえます(Jachson, 1968)。
そこで、「きっちりなのにきっちりじゃない」アプローチをとります。Inner Consultation (Neighbour, 2005a) のアプローチで言うと、計画的なorganiser(左脳)がいくつかの教育プラン(例えばPatient-Centered Clinical Method (Stewart et al, 2014)のどのコンポーネントを教えるか)を準備しておき、実際に何を掘り下げるかは研修医の過去の経験や、当日経験してもらう事例などの組み合わせ、研修医が疑問に思っっていたりcognitive dissonance(Neighbour, 2005b)が大きくなっていることが見て取れる領域を見ながら決めます。このプロセスは完全にresponder(右脳)モードで学習者の反応を見ていないとできないように思います。
こういう初期研修医の学習の不確実性が大きいのはsocial cognitive theory(Kaufman, 2018)で考えると分かりやすいと同僚に教えてもらいました。個人要因、行動要因、環境要因のインタラクションから学習を考えるわけですが、初期研修医はこれで言う環境要因からどのような影響を受けているか考えておくということが、どのように関わるか考える上で重要ということになると思いました。
References
Biehn J. (1982). Managing uncertainty in family practice. Canadian Medical Association journal, 126(8), 915–917.
Jackson, P. W. (1968). Life in classrooms. New York, NY: Teachers College Press.
Kaufman, D.M. (2018). Teaching and Learning in Medical Education. In Understanding Medical Education (eds T. Swanwick, K. Forrest and B.C. O'Brien). https://doi.org/10.1002/9781119373780.ch4
Neighbour, R. (2005a). The Inner Consultation: How to develop an effective and intuitive consulting style (2nd ed.). CRC Press. https://doi.org/10.1201/9780203736548
Neighbour, R. (2005b). The Inner Apprentice: An awareness-centred approach to vocational training for general practice (2nd ed.). CRC Press. https://doi.org/10.1201/9780203736555
Stewart, M., Brown, J., Weston, W., McWhinney, I., McWilliam, C., Freeman, T. (2014). Patient-Centered Medicine: Transforming the Clinical Method. 3rd edn. London: CRC Press.