結城きき

不定期で気ままに続けております。 どこか遠く知らない街で生きるあなたへ、見てくださった最大限の感謝を。 ……不確かなものほど愛おしい

結城きき

不定期で気ままに続けております。 どこか遠く知らない街で生きるあなたへ、見てくださった最大限の感謝を。 ……不確かなものほど愛おしい

最近の記事

詩 秋に去った先生

あなたがもう この世界にいないと知った日の朝 わたしの見る世界は どこか少し 朧気だった わたしを形作る幾億もの細い線 そのひとつがすっと抜けてしまったよう わたしを作っていたひとつの線が 秋の空遠く昇っていったのだ その所為かわたしは まだ少し 上手くバランスをとれないで ふらふら ふわふわしているが お日様の下を歩かなければならないから なんだか人は 面白おかしく悲しいものだ 今日も太陽が暖かい この温もりを抱いて歩いてく

    • 詩 青空に思う

      あまりにも空が青いから 「またね」と言って去ったあなたを思い出す 追いかけることはしないけど あまりにも空が青いから ドーナツの入った紙袋を抱えた昼下がり あなたを思い出して空っぽになった胸の中 私はひとりだから自由なのか 自由を求めるからひとりなのか 自由は孤独でなければいけないのか 愛情を受け入れる覚悟と 愛情を捧げるだけの心の柔らかさ 私にはそれがないのだろうか 誰かへの愛情と 私の自由は共存できないのだろうか あまりにも空が青いから あなたを想って私を思う

      • 詩 カレーの匂い

        築30年のアパートで わたしは窓をあけてテレビを見ていた となりの部屋からカレーの匂いが漂ってきた カレーの匂いになんだか悲しくなった 顔も知らないとなりの部屋の人は わたしの持ってないすべてを持ってる そんな気がしたのだ となりの部屋の人は カレーを作る余裕があるのだ だれかと食べるカレーなのかしら その相手はとても幸せ者だ もしひとりだとしてもきっと幸せだ 家で作るカレーは幸せの象徴だ いまのわたしには 幸せな人でなければカレーなんて作れない気がする カレーの匂いが

        • 詩 コゼット

          コゼットよ、君はなぜ泣いているんだい? なにか言ってくれなくちゃ、 慰めの言葉も言えないじゃないか なぜ泣いているのか教えてくれたら 僕は君の手を探しだして優しく握ろう その後は溢れる涙をすくい取り 陽射しのように柔らかな髪を撫でながら 愛しい君を春風のように抱きしめよう だからコゼット、君はなぜ泣いているんだい? なにか言ってくれなくちゃ、 僕にはなにも見えないよ

          詩 トンボと少年

          夕暮れの住宅街を自転車で走っていると トンボが一匹飛んで来た 僕はふとなにを思ったか 蜻蛉を追いかけるように自転車を早く走らせた その途端 その場所は住宅街ではなく田んぼの畦道で 僕は大人ではなく麦わら帽子の少年で 握りしめるのはハンドルではなく虫取り網で 纏うのは湿った風ではなく虹色の風で 見つめるのは今日ではなく遠い未来で それらはすべて きらきら輝くあの頃抱えたものだった トンボは一時わたしを過去へ誘うと やがて夕暮れの空に消えていった

          詩 トンボと少年

          詩 ブルーハワイを抱きしめて

          ブルーハワイの色をした君の髪を見た時 頭から夏空を被ったのかと驚いた 風が揺らすたびその髪は自由に広がり 君は夏の空に溶けてゆくようだった 屈託のない笑顔も 夏空に浮かぶ太陽のようにいっそう映えた 風に舞うたびこすれあう髪の音は いつか君と遊んだ海の波音に似てる気がした ブルーハワイの髪を撫でると いつか君と歩いた砂浜を思い出した あぁ いつかこの夏も いつかの夏になってしまうのか 君と交わした口づけは 海にいるでもないのにしょっぱかった

          詩 ブルーハワイを抱きしめて

          詩 少女性

          黄色い花弁が風に揺れる それは髪をなびかせる少女のよう 物憂げに揺れる細い身体 悩ましげに微かに俯くその姿 あれは あの夏に取り残してきた少女性だ 夏の熱にうなされて 陽炎の彼方に淡く輝く 幼いままの私を 大人たちは許してくれなかった 遠くなる雷鳴が 少女時代に終わりを告げる もう少しこのままでいられるなら 夕立に濡れてたたずもう きっとすぐに止んでしまうのだろうけど 少女性を纏った向日葵が 今年もまた揺れている わたしはそれに背を向けて 街の中に今日も繰り出す

          詩 少女性

          詩 チョコミントとポッピングシャワー

          チョコミントとポッピングシャワーのアイス その2つが好きなあなた わたしも同じだったけど あなたのことは好きになれなかった それなのに あなたが離れてゆくことに寂しくなった 高架橋を過ぎる電車を煩く思うのに 過ぎたときの静けさに孤独が染みてくるように あなたが私に飽きることに なぜか勝手に寂しくなったの あなたのことは嫌い 多分あなたも私を少し嫌いでしょう? それなのに チョコミントのような爽快感も ポッピングシャワーみたいに弾ける力もない ただただ過ぎるこの時間を 口

          詩 チョコミントとポッピングシャワー

          詩 きらいなあなた

          深くもなく 浅くもなく 滲まなければ掠れもしない 眩しくなく 暗くもなく 温かくもなければ凍えもしない ひどく曖昧な境目を揺蕩うように 世界との 誰かとのつながりを保つ あなたとはきっとこれ以上仲良くなれないわ わたしはきっとあなたが嫌いだ 嫌いな季節が夏という事でしか分かり合えないから

          詩 きらいなあなた

          詩 新しい日へと渡った君に

          今日、 新たに昇った太陽に向かって君は飛び立った 恐る恐る地面を蹴って飛び立った 昨日から今日、そして明日へと渡る君 小さな羽を 広い空に大きく伸ばして飛び立った 上手く飛べなくても大丈夫 見えない羽はこれからもっと丈夫になるから 心細いなら昔の歌を口ずさめばいいさ どうか君が 空の青さに泣きませんように 空の広さに絶望しませんように 太陽のまぶしさに目が眩みませんように 太陽の熱さに羽を焼かれませんように どこまでも飛んでいけますように 雨も降る 風が痛い 泣きたく

          詩 新しい日へと渡った君に

          詩 今日或いはそれは過去

          夜中に出会った野良猫や あなたが勧めてくれたロックバンド 値段の割に美味しくなかったランチや 中身はないけどどうでもよくなかった会話 送れなかったたった一言のLINE そんなどうでもいいものを思い出して 無性に悲しく愛しくなる 傷がちくりと痛むたび わたしはいま生きている最中だと自覚する 過ぎ去った想いは万華鏡 遠く手の届かぬ場所できらきら移ろう わたしはただそれを見つめる 或いは 川面を揺蕩う笹舟のように 彼方の方へ流れてくもの わたしはただそれを見送る

          詩 今日或いはそれは過去

          詩 友よ

          「また明日ね」 夕暮れに響いた声は 遙か遠く夢の中 5時のチャイムに溶ける足音は あの日への帰り道を教えてくれるだろうか 永遠に果たされることはなく 無邪気に そして純粋に残る約束 並走したあの頃に 去りゆく影に ただ涙で応えよう 手を離した昨日も 待ちわびる明日も ただ笑顔で見つめよう

          詩 春を待つ者

          あの日、春風と競うように走り出した君は 陽射しに混ざり わたしの中で日溜まりになった またねと言ったはずなのに さよならと聞こえた君の声 微笑む顔はどんな酷い言葉よりも悲しかった わたしは季節のように同じ日々を繰り返す 今年も冬がきた いずれまた春がくる 君の消えた 優しく暖かい春がくる どうか春風に乗って 君の声が聞こえますように 君の言葉で春を告げて この寒い季節を終わらせて 冬の風に吹かれながら いつか芽吹く春を待つ

          詩 春を待つ者

          詩 月灯

          月灯を頼りに髪を梳かす君 君の輪郭は闇に浮かんでひどく朧気だ そのおくれ毛はいじらしさを持っているし その睫毛は哀しみを乗せている その唇は悩ましさを描いているし その指は慈しみを纏っている 月灯を頼りに君という存在を解いていく 冷たい部屋の片隅に私と君の温もりが灯る 明るいほうが君をよく見てやれるのに 月灯に浮かぶその姿の なんと悲しく美しいことか

          詩 君について

          野良猫のあくびが陽射しに溶ける それをみて口元を緩めた君 僕は野良猫に少し嫉妬する 遠くで白いセスナが空を泳ぐ 君はそれを見て目を細めながら 空よりも遠くを見つめるように 私がセスナなら 青くて広すぎて迷子になるわ と呟いた もうすぐさよならね なんて 悲しい言葉も零すから この日が永遠になれと 胸の内で呪詛をつぶやく きっとふたり 綺麗になんて生きられないね 綺麗がなにかを 産まれた瞬間に忘れたから どうか繫いだ手に込めた力が 君を苦しめることがありませんように

          詩 君について

          【詩】 悲跡

          色褪せた夜空に 貼り付けた悲しみ その悲しみも 夜空のように色褪せてゆくのか 色褪せて剥がれる日はくるのか それとも夜空に紛れて残るのか 朝日に燃やされて消えるのか なんにせよ 悲しみの跡は残るのだろう ならば星よ隠して 見えないように 気づかないように いつかそんな悲しみがあったことすら 忘れるほどの時が経つまで

          【詩】 悲跡