詩 カレーの匂い

築30年のアパートで
わたしは窓をあけてテレビを見ていた
となりの部屋からカレーの匂いが漂ってきた

カレーの匂いになんだか悲しくなった
顔も知らないとなりの部屋の人は
わたしの持ってないすべてを持ってる
そんな気がしたのだ

となりの部屋の人は
カレーを作る余裕があるのだ
だれかと食べるカレーなのかしら
その相手はとても幸せ者だ
もしひとりだとしてもきっと幸せだ
家で作るカレーは幸せの象徴だ
いまのわたしには
幸せな人でなければカレーなんて作れない気がする

カレーの匂いがわたしは孤独だと突きつけてくる
思い出すのは幼い頃家族と過ごした日々
あの温もりはもう無いのだ
抱きしめてくれる人も
いまのわたしにはいないのだ
カレーを作ってあげたい人もいないのだ

カレーの匂いになんだか涙が浮かんでくる
あの時温もりを感じたカレーの匂いは
いまは孤独を知らせてしまう
この匂いを幸せだと思える日が
いつの日かわたしにまた来るのだろうか

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