ゲーデル

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最近の記事

みんな死んだって【禍話リライト】

現在アラサーの男性、松永さんは、その日、同窓会で高校時代の旧友たちと旧交をあたためていた。 卒業後10年以上経っているにも関わらず、当時のクラスメイトはだいたい集まっていたのだという。 「何年ぶりかなのに集まるものだね」 「みんな地元にいるんだね」 そんな話をクラスメイトとしている時に、松永さんはふと気づいた。 「あれ、あの4人組来てないな」 それは、いわゆる文系女子の仲良し4人組で、高校時代はいつも一緒に行動していたことをよく覚えている。 「あいつらいないなぁ」

    • タクシーの木箱【禍話リライト】

      Mさんという女性と話をしている時に、ひょんなことからタクシーの話題になった。 確か、旅行の話をしている時で、タクシーをチャーターすれば効率的に観光地を巡れる、というような話題になった際に、彼女が妙な反応を見せたのだ。 彼女は大袈裟なまでにこちらの提案を否定して、自分はタクシーに乗らない、あんな経験をしちゃったらもう乗れない、と言い張るのだ。 普段は車に乗るし、どうしても必要な時は公共交通機関を使う、と言い、運転代行も怖い……というくらいなので、筋金入りである。 興味を持った私

      • 見えてない見えてない【禍話リライト】

        とある駅の裏通りに、細長いビルがたくさん立っていた。 基本的に雑居ビルらしく、中に入っているのは雀荘やらカラオケパブやら、大人の社交場ばかりだった。 そんな中に一軒だけ、ゲームセンターが営業していた。 そのゲーセンは格闘ゲームが充実していて、一プレイあたりの料金も他に比べて安かったため、高校生やら大学生やら、若者たちで賑わっていたそうだ。 ビル自体は古かったが、ゲーム機は最新であり、店員もちゃんとしていて治安も保たれている。 そのゲーセン自体には、何も問題はなかったのだが。

        • カーテンの向こう側【禍話リライト】

          ガールズバーで働いているIさんが、お客さんから聞いたという話である。 半年ほど前。 昼間からそのお客さんは家で寝ていたのだという。 彼は夜勤の仕事をしていて、朝10時頃に帰宅して寝るのが常だった。 その日も彼は疲れきっていたため、帰宅するやいなや布団も敷かずに床にそのまま仰向けになって寝転んだ。 あー…… もうクタクタだぁ。 寝よう…… その瞬間だった。 耳元で急にこんなことを言われた。 「カーテンの向こう側」 ええ?!! 若い女性の声だったが、彼は年老いた両親と

          貼りつき娘【禍話リライト】

          平成のあいだに起きた話だという。 とある高校で、一瞬だけこっくりさんがはやったことがあった。 深夜番組でやってるのを誰かが見たらしく、ものは試しとみんながやってみたらしい。 時代はこっくりさんブームでもなかったので、先生も"やめとけよ"というくらいで、真剣に取り合わなかったそうだ。 案の定、一、二週間でブームは沈静化した。 そもそもこっくりさんをやってみてもピクリとも動かない、という状況だったので、流行りようがなかったのだ。 結果的にほとんどの生徒はこっくりさんをやらなくなっ

          貼りつき娘【禍話リライト】

          (忌魅恐)ただ静かに見ている人たち【禍話リライト】

          関東地方のとある大学に通っていた頃の話です。 私の通っていた大学から少し離れたところに、下町といえばいいのか、ちょっと安めのアパートが乱立しているような地域がありました。 車一台通れるかどうかというような細い道の両脇に、ボロいアパートが乱立しているような地域です。 そこに住んでいるのは外国人労働者が多いらしく、ゴミの出し方や注意書きが英語で書かれていました。 そういうわけで、その地域に住んでいる学生はほとんどいなかったのですが、とある事情で私の友人の馬場くんがその地域のアパ

          (忌魅恐)ただ静かに見ている人たち【禍話リライト】

          うらがえし【禍話リライト】

          日本のどこかにある、山での話である。 明治の終わり、あるいは大正の始まりごろのことらしい。 とある新宗教、現在の基準で言えばカルトにも当たるような教団が、その山に道場のようなものを作って住み着いた。 周辺住民は、胡乱な集団だとは認識していたものの、基本的にはそこに篭りきりで、周辺の住民の生活に干渉してくるわけでもなく、特に問題視するようなことはなかった。 ただ、その集団に関して、気になることがないわけではなかった。 身につけているものが、全て裏返しになっていたのだ。 それだ

          うらがえし【禍話リライト】

          (忌魅恐)残暑の過ごし方【禍話リライト】

          私は当時、関西のある大き目の地方都市に住んでいました。 その地域には、戦争中からあった建物を再利用して造られた学校があります。 私立の学校で、その敷地の奥のほうに、大きなプールがあるというのがその学校の売りになっていました。 その学校は私立の学校なのに警備体制が手薄で、夜間には常駐の警備員が一時間に一回、敷地内を巡回するくらいでしたので、地元のやんちゃな若者たちのなかでは、度胸試しの意味合いもあって、その学校に夜間に忍び込むのがちょっとしたブームになっていました。 その日も

          (忌魅恐)残暑の過ごし方【禍話リライト】

          使えないおじさん【禍話リライト】

          Gくんが小学生の頃。 地区の子供会が主催のイベントで、市にある少年自然の家に泊まったことがあった。 特に思い出に残るようなイベントではなかったため、日中に何をしていたかはよく覚えていないという。 ただ、ご馳走だぞ、と言って振る舞われたスイカが、全く甘くなくて不味かったことはよく覚えているそうだ。 Gくんは当時10歳だったが、年齢の割には少し冷めたところのある少年だったようだ。 そんなGくんでも、キャンプファイヤーだけは盛り上がった。 ところが、そんな楽しい気持ちを抱えたまま雪

          使えないおじさん【禍話リライト】

          鳴り終わる前に【禍話リライト】

          Fくんは高校時代、不良グループに属していた。 彼らは田舎のパチンコ屋の前を待ち合わせ場所にして、そこに屯していたのだという。 駐輪場でたばこを吸ったりしながら、いつも仲間が揃うのをダラダラと待ち続けていたが、流石にそんなことを続けていると目立ってしまう。 パトカーが来たり、警官が巡回したり、高校の先生方も見回りに立ち寄ったり、従業員も声をかけてくる……と、どんどん居心地が悪くなっていった。 自分たちが悪いのであるが、当時のFくんたちは、いやだなあ、うぜえなあ、などとぼやいてい

          鳴り終わる前に【禍話リライト】

          あかねこ【禍話リライト】

          マンションに住んでいる、佐倉さんというサラリーマンの方から伺った話だ。 ファミリータイプの大きめなマンションなので、佐倉さんの隣の部屋には四人家族が住んでいる。 お父さん、お母さん、お姉ちゃん、弟の仲のいい家族で、お姉ちゃんは高校生、弟は小学生である。 休日には家族総出でお出かけなどもしているようで、家族っていいもんだなあ、などと独身の佐倉さんはよく思っていたそうだ。 そのマンションは、清掃作業などを協力して行うこともあり、近所の人たちとは顔見知りである。 貰いもののおす

          あかねこ【禍話リライト】

          ミヤモトの顔【禍話リライト】

          人間の脳は、あまりに理解の範疇を超える出来事については、自動的に記憶を消すことがある。 だから、本当に怖い目に遭ったという記憶は忘れていたり麻痺したりするので、人に話しているうちに、あれ、本当はやばい話だったんだな……と思うようになることもあるのだ。 脳のセーフティーネットのようなものが働いているってことになるんだよな…… そんな話を昔からの知り合いとの会話の中でしていたところ、その知り合いは「そうかぁ」とひどく納得しはじめた。 「やけに納得してんじゃん」 「あのさあ、俺

          ミヤモトの顔【禍話リライト】

          (忌魅恐)あの先生に関して覚えていること【禍話リライト】

          私が小学校5年生の頃の思い出です。 変なタイミングで担任の先生が変わったことがあったんです。 4月じゃなくて、学期の半ばのことだったと思うんですが、確か最初担任だった先生も女性だったので、おめでたとかそういうことなのかなとは思うのですが、詳しいことは全然記憶にありません。 確か夏休み前に先生が変わることになったのですが、担任として代わりの先生が来ることになりました。 それが若い先生で、今から考えると、新人の教師だったんじゃないかな、と思います。 その先生、菊池先生というの

          (忌魅恐)あの先生に関して覚えていること【禍話リライト】

          アニソンではない【禍話リライト】

          あるとき、SNSのDMに、こんな話が届いた。 「そんな大した話じゃないので採用されないと思いますが、不思議なことがあったので。昨日、彼女と九州の某有名観光地の近くに泊まったんですが、隣がうるさかったんです。夜中にアニソンか何かをアカペラで大合唱しているみたいな感じだねって言ってたんですが、朝確認してみたら、僕らの部屋は角部屋で、夜中にアニソンみたいなのが聞こえてきた側には部屋なんてなかったんですよ。ありがちな話ですけど、僕としては不思議だったので、送ってみました」 確かに

          アニソンではない【禍話リライト】

          そそのかし【禍話リライト】

          最近の話である。 その日、Aくんは仕事関係のことで苛立っていた。 普段はしない残業をするハメになったのだが、それも自分のせいではなく上司のミスに起因するものだった。 にもかかわらず、その人は全く反省もしておらず、部下たちがしりぬぐいのための残業をしている間も手を動かさず、延々と”自分は悪くない”アピールを繰り返していたのだ。 はぁ……そんなことしている場合じゃないんじゃないの?! それでAくんは、余計にイライラしていたのだ。 というのも、交通機関の関係で、残業を1時間して

          そそのかし【禍話リライト】

          おかあさんの家【禍話リライト】

          今は大学で研究員をしているBさんが、大学院に通っていたころの話だという。 当時、同じラボに所属していた大学院の同級生に、Cという男がいた。 彼は、明るくていいやつで、気さくで話しやすい人柄だったこともあり、よく一緒に行動していたのだが、話していると突然、表情や話しぶりに暗い影が差すことがあった。 だからBさんも、ひょっとすると家庭に何らかの事情を抱えているのではないか、と思っていたというのだが、ある時二人きりで歩いている時に話がCの家庭事情に及んだことがあるのだという。

          おかあさんの家【禍話リライト】