ゲーデル

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最近の記事

作られた幽霊【禍話リライト】

この話は、かなり時間をおいて、二回に分けて聞いた話である。 最初に聞いたときには、その話は「大学で起こった不気味な話」だったし、私も大学の怪談の一種だととらえていた。 しかし、後日新たな事実が判明して、私はこの話についての認識を改めることになった。 最初に聞いたのは、次のような話だ。 今から20年以上前。 X大学には、バブル期の遺産か、サークルの部室が潤沢に用意されていて、公認されているサークルであれば二つの部屋を使うことができたのだという。 もっとも二つ部室があったとして

    • 遠くに立ってた子【禍話リライト】

      Fさんは、中学生のころ、こっくりさんを一回だけしたことがある。 平成のころのことだ。 前日にやっていたテレビを見て、見よう見まねでこっくりさんをしてみようということになった。 その番組を見るまではこっくりさんについて知らなかったので、皆、そんなのあるんだとワクワクしながらこっくりさんをしたのだそうだ。 もっとも、正式なやり方も知らず、本気でやっていたわけでもないので、コインはまともに動かなかったようだが。 それからずっと後になって。 Fさんは地元の高校を出た後、地元の企業

      • ガムテープの店【禍話リライト】

        とある住宅団地に、小さなクリーニング店があった。 クリーニング店といっても立派な店舗ではなく、家の敷地内に車二台分くらいのスペースの小屋を立て、そこでクリーニング店を営業していたのだという。 Eくんはお使いとして、小学生のころ、しばしばそのクリーニング店に行ったことがあるそうだ。 お父さんのスーツとか、お母さんのコートとか、そういったものを季節の変わり目にとりに行く。 だから、多くて年に3、4回程度のことだったというのだが、もちろんそれだけのことでもどんな人が店にいるかはわ

        • うしろの予言者【禍話リライト】

          公園のトイレの話である。 そこは、かなり大きな公園で、立派なトイレが設置されている。 男子トイレには個室が二つ並んでいて、それぞれ和式と洋式になっていた。 その正面には、小便器が3個くらい並んでいる。 Aくんはその時、和式便器のある個室に入っていたという。 彼が用を足していると、トイレの中に子どもが入ってきた音がした。 なぜ子どもだとわかったかと言えば、中に入ってくるなり彼が大きな声を出したからだそうだ。 「そこにいてよぉ〜」 外に向かって呼びかけるような、男の子の声が

        作られた幽霊【禍話リライト】

          にぎられる【禍話リライト】

          社会人のYくんは、マンションで1人暮らしをしている。 「俺、最近湯船に入ってないんですよね。シャワーだけで済ませることが多いっていうか」 そんな前置きで彼は話し始めた。 つい先日まで、Yくんは一週間に一回は湯船に湯をためて入っていたという。 「元々、風呂に入るのが好きなんで。リラックスできるんですよね、やっぱり」 そんなYくんは、湯船に入るときは電気を暗めにする習慣があった。 その日も浴室の灯りを暗くして湯船につかっていたのだが。 突然、何かに腕を握られた。 「

          にぎられる【禍話リライト】

          行き止まりの家【禍話リライト】

          工場勤務をしているという、Wくんから聞いた話。 少し前のこと。 一年間の短期契約で、とある大きな工場に勤めていたWくんは、その日、その工場で仲良くなった同僚の家に何人かで行って、酒を飲んでいたのだという。 体育会系のノリの明るい雰囲気の飲み会で、みんなワイワイ楽しんでいたのだが、つけっぱなしにしていたテレビの深夜番組で、アイドルが怖い体験を話す……という企画をやっていたため、ひととき皆がその様子に釘付けになった。 ただ、語られている体験談は大したものではなく、死んだおばあち

          行き止まりの家【禍話リライト】

          たしかめおばさん【禍話リライト】

          東京のどこかの公園だという。 そこは普段は明るくて綺麗な公園なのだが、夜になると人が少なくなり、雰囲気も若干暗くなる。 だが、Uくんはその時まで、特にその公園について嫌な噂を聞いたこともなければ、嫌な印象もなかったという。 大学時代の時のこと。 サークルの部室で駄弁っていると、後輩が来て開口一番こんなことを言い出した。 「P公園で酷い目に遭いましたよ」 「おお、どうした?」 「夜、公園通りかかった時に急に尿意を催しましてね。おしっこ行ったんです」 「ああ、あそこのトイレ綺

          たしかめおばさん【禍話リライト】

          逆三人【禍話リライト】

          最近の話。 Tくんが夜、一人暮らし中の自室でダラダラとしていると、外から若者たちが盛り上がっているような声が聞こえてきた。 ……盛り上がってんなあ。 最初はそう思っていただけだった。 しかし、5分経っても10分経っても、声は同じ場所から聞こえてくる。 Tくんのマンションの近くには公園はないけれども、大通りに面してはいるので、そのどこかにいるのだろうと思われた。 飲んだ後別れ難くてダラダラ話してるんだろうな、と思っていたがだんだんとあることが気になり始めた。 喋っている

          逆三人【禍話リライト】

          (甘味さん譚)ポリタンク【禍話リライト】

          「これは怪異じゃないんですけど」 という前置きで甘味さんが教えてくれた話だ。 とある山奥に、作業小屋だか山小屋だかが使えなくなった場所があることを知った甘味さんは、早速その小屋に泊まる計画を立てた。 着いてみると、小屋の奥にある、布団などを入れていたのだろうと思しき押入れの戸が完全に閉じていた。 甘味さんの経験上、こういう使われていない建物の中で襖が閉じているのは、あまりよくない傾向なのだそうだ。 何だろうと思いつつも、確かめないわけにはいかない。 仕方なしに戸を開けると

          (甘味さん譚)ポリタンク【禍話リライト】

          (甘味さん譚)大黒柱【禍話リライト】

          津々浦々の廃墟に出掛けて行ってはそこで寝泊まりすることを趣味にする、甘味さんから伺った話だ。 とある廃墟に向かう途中にあった廃集落に、甘味さんは立ち寄ることにした。 集落自体が打ち捨てられてからだいぶ時間が経っているようで、ぶらぶらと集落内を見てまわっていたところ、大きな家の前に出た。 どうやらそこが、集落の中で一番大きな家のようだった。 建物はボロボロになっていて、そこかしこに穴も空いている。 玄関からでなくても、どこからでも入れるような状況だった。 これ、多分庄屋さん

          (甘味さん譚)大黒柱【禍話リライト】

          重なる家【禍話リライト】

          平成の末期の話だという。 当時大学生だったOくんの所属していたサークルの先輩が、怖い話大会をしようと言い出したことがあった。 その先輩は、5年生の牢名主のような人だったので、サークルの面々としても逆らうことはできず、怖い話大会が開催される運びになったのだという。 では、いつ、どこでやろうか……という話になった時のことだ。 その先輩は、待ってましたとばかりに、せっかくだから自分の知っている、誰も住んでない親戚の家でやろう、と提案した。 先輩曰く、家はそこまでボロくなってはいな

          重なる家【禍話リライト】

          使えばいいのに【禍話リライト】

          Mくんは、小学生の時にあったというある出来事をきっかけにして、地元の中学校ではなく少し離れた別の中学校に進学することを余儀なくされた。 きっかけとなったのは、Nという男子である。 彼は、誰からも好かれるような好人物だった。 性格もよく、スポーツも勉強もそこそこでき、コミュニケーション能力も高い。 何より人を惹きつける天性の魅力のようなものがあり、彼の周りにはいつも人だかりができていた。 Mくんも仲が良く、時折お互いの家を行き来していた、というのだが。 ある日、Mくんはいつ

          使えばいいのに【禍話リライト】

          血のこっくりさん【禍話リライト】

          こっくりさんの話を専門的に収集しているKくんは、ある日知人の紹介で、こっくりさんについての体験談を持っている、という女性と、知人を含め三人で会うことになった。 知人もその女性とは直接面識があるわけではなく、ネットを介しての知り合いなのだという。 どうやって繋がったのかを聞いても答えをはぐらかすので、おおかた出会い系か何かなのだろう、とKくんは推察した。 指定された喫茶店に現れたのは、二十代後半の痩せ型の女性だった。 挨拶をすませ、注文された飲み物が届いたところで、彼女に尋ね

          血のこっくりさん【禍話リライト】

          無音とブザー【禍話リライト】

          Jくんという、中部地方在住の男性から伺った話だ。 Jくんが自室で寝ていると、急に部屋にブザーのような音が鳴り響き、目を覚ましてしまった。 驚いて飛び起きて辺りを見回すが、奇妙なブザー音は家の中からではなく、外から聞こえてくるようだった。 火事かな? なんだろうと思ったJくんは、窓を開けて外を眺める。 確かにブザー音は外から聞こえてくる。 しかし、その音がどこから聞こえてくるのか、全然わからない。 外を眺め回しても、音の発生源になりそうなものはない。 工事もしていない。

          無音とブザー【禍話リライト】

          ひっぱられる道【禍話リライト】

          ガラケーの時代の話だというから、今からおよそ20年ほど前の話である。 Iさんは、当時、たぬきが好きだったのだという。 しかし、リアルなたぬきが好きだったわけではなく、デフォルメされたキャラクターとしてのたぬきが好きだったのだ。 形状を聞いてみると、今でいうゆるキャラのようなもので、Iさんは携帯のストラップにそのマスコットをつけていたそうだ。 大学時代のこと。 アパートまでの帰り道は、歩道もあり片側二車線もある広い道なのだが、夜になると街灯も少なく、人通りも車通りもかなり減っ

          ひっぱられる道【禍話リライト】

          鏡の2人【禍話リライト】

          「俺さ、めちゃくちゃ怖い体験をしたんだよ。ただ、軽く酒は入ってたんだけど……少なくとも言えることは、自分は酔っ払っても幻覚を見たことはないってこと。記憶もしっかりしているんだ。だけどさ……」 こういう前置きで、Hくんが語ってくれた話だ。 その日、Hくんはすっかり酔っ払って家に帰っていた。 夜中の1時を回った頃だった。 繁華街を通って帰っていると、ふとトイレに行きたくなった。 トイレ行きたいなあ。 どっかねえかな? そんなことを思いつつキョロキョロと見回していると、小さ

          鏡の2人【禍話リライト】