Takumiのessay

27歳。 エッセイスト。 「親子の日エッセイコンテスト2024」にてオーティコン賞受賞。

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  • 私の思想

    私の思想が特に濃く反映されている記事をまとめてみました。読んでいただけると幸いです。

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    沖縄野菜クラブでの活度を報告していきます!

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    コロナ禍での、京都旅行記をまとめています。

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    オーストラリアでの実体験をもとに、ワーホリについて自分なりに解説しています。ワーホリを考えていらっしゃる方は、ぜひ!

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井上陽水「傘がない」は「社会問題」のあり方を描出した珠玉の歌。

井上陽水の「傘がない」という曲を知っているだろうか。 こんな歌い出しから始まるこの曲を、私は以前、少し訝った目で見ていた。すでに議論し尽くされた問題を取り上げ、社会をただ暗い面から切り取っているだけで何も生み出さない歌。そんな印象を持っていた。 しかし、改めて最後まで注意深く聞いてみると、この印象は全くの的外れなものであるということが分かった。 私がこの度聞いたのは、中森明菜さんによるカバーバージョンだった。 本家とは違い、そのメロディーは弦楽器の音色などとともに静か

    • 機嫌を取るなら、挑みなさい

      自分がこれまで全くやったことのないことを始めるというのは、人間にとって、一体どういう意味を持っているのだろうか? 人間というのは慣れ親しんだ環境に対して最大限適応しようとする生き物である。 一旦ルーティンが決まると、そこからできるだけ抜け出さないように日々を選択してしまう。それが、最も危険を感じずに済むからだ。 家族を持ったり、役職についたりして、自分を縛るものが増えていくほどこの傾向は強くなる。 年齢を重ねるほど、新しい環境に身を置くことに対する抵抗感が強まっていく

      • 母の後ろ姿

        私は母の後ろ姿を見たことが無い。 私のためを思ってなにかしてくれるときは正面。 家族のことを考えているときは横顔。 母が見せる姿は決まってこの二種類だった。 母が、母自身のことだけを考えて、勝手気ままに振る舞っているところを見たことが無い。 それは、うちが母子家庭だったからなのか。 私が物心付く前に、母は離婚していた。 経済的状況に加え、そのような結果になってしまったという負い目が、いつも彼女の心にブレーキをかけていたように思う。 私が高校生のとき、同居する祖

        • ”食べられてしまう”ラー油への憐憫 〜いただきますを求めて〜

          「食べるラー油」という商品がある。すでに食べ物であるという認識のラー油が、重ねて、「食べる」と名付けられているところに意外性があり、注目してしまう。 この商品名を目にした時、私は自然とこう思ってしまった。「食べるラー油?あれ?ラー油って食べ物だよな?でも”食べる”って書いてあるからには本当は食べるものじゃないのか?本来はどうするんだっけ?飲むんだっけ?」 何の疑いもなく食べ物であると認識していたラー油に、”食べる”とつけられただけで、今まで考えもしなかった「ラー油の本来の

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          アシタカはなぜ、それでも「生きろ。」と言ったのか

          映画「もののけ姫」で、瀕死になった主人公アシタカは、その喉元に刃を突きつけ、とどめを刺そうとするもののけ姫サンに対し「生きろ。」と告げる。では、どう生きれば良いのか。私は、この映画にそう問われているように感じた。 そもそも、生きるとはどういうことなのだろうか。 主人公アシタカは不条理に苛まれながら生きる少年である。彼が平和に暮らしていた村に、ある日突然、タタリ神が襲いかかる。アシタカはタタリ神をなんとか鎮めようと説得を試みるが、それでも止まらないタタリ神に彼は叫ぶ。 「

          アシタカはなぜ、それでも「生きろ。」と言ったのか

          四葉が運ぶ幸運

          四葉のクローバーは幸せを呼ぶと言われる。 若葉に傷がつくと、生長過程でその葉は2枚に分かれる。 それらが無傷な他の葉と遜色ない大きさにまでなるため、もともと3枚だった葉が4枚になる。 氏は3枚、育ちで4枚。 それが四葉のクローバーだ。 したがって、若葉が傷つきやすい場所(子供がよく遊ぶ公園など)には、たくさんの四葉が発見される。 ときには五葉、六葉、それ以上の葉を持つものも。 わざと葉の多いクローバーを作ることだって可能だ。 こう考えると、そこに神秘的な要素は

          四葉が運ぶ幸運

          腸を断つような思いで

          「断腸の思い」という言葉があるが、現代において腸を切る場合、そのほとんどが盲腸の手術だろう。 大腸の一部である虫垂に細菌が感染し、炎症を起こす。 「虫垂炎」と呼ばれるこの症状を治すための手術を受けるときくらいしか、普通、腸は切らない。 この場合、「断腸の思い」が意味するところは、「ちょっと手術は怖いけど、みんなやってることだし大丈夫。それが終わればこの痛みもなくなるんだから、早くやってほしい。すっきりしたい。」となる。 本来の意味である、苦渋の決断といったニュアンスは

          腸を断つような思いで

          脳震”とう”の捉え方

          脳震盪とは、頭部に衝撃が加わったことによって発生する、一時的な意識障害や、記憶障害のことである。 この言葉自体はよく耳にするが、ここで使われている「盪」という字。 これは、(実際に脳震盪になる頻度ほどではないだろうが)そうそう目にしない文字ではないだろうか。 「脳しんとう」「脳震とう」といったように、ひらがなで表記されることも多いこの字は、goo辞書によると、以下の意味がある。 さて、「脳震盪」における「盪」の意味は、どれになるのだろうか。 オーソドックスに考えるの

          脳震”とう”の捉え方

          サウナとスタバにお金を払う

          「サウナに行くから健康になるのではなくて、健康な人しかサウナに行っていないのだ。」 サウナが健康に良いということの根拠に、サウナに行っている人が健康であるということが挙げられる。 冒頭の一文は、それに対する反論である。 日常ではまず遭遇しない極限状態。 80度や100度といった熱波と、5度や8度といった水風呂の往復。 脳内にじわっと化学物質が出るため、気持ちよく感じ、リピートする人も多いが、その良さを知らない人からすればただの苦行だ。 こんな高ストレス環境に頻繁に

          サウナとスタバにお金を払う

          「黒一点」のジェンダー論

          紅一点の反対を黒一点と言ったりする。 女性ばかりの中に一人だけ紛れ込んでいる男のことを指す。 しかし、これはあくまでも俗語であり、正式な日本語では無いらしい(正式な日本語と俗語の”正式な”違いを知りたいものだが)。 俗語な故もあってか、黒一点には、他にもバリエーションがある。 逆紅一点、白一点、蒼一点、緑一点などだ。 ピクシブ百科事典によると、それぞれの由来は以下である。 引き続きピクシブ百科事典によれば、黒という字は、汚れを意味することもあるので、余り宜しくない

          「黒一点」のジェンダー論

          フランケンシュタインを巡る、機械論と神秘性

          フランケンシュタインの物語は、とある生物実験から着想を得たと言われている。 死んで間もないカエルの筋肉に電極を差し込み、電気を送り込むという実験だ。 カエルそのものは死んでいるのだが、電気を流すと筋組織が反応し、ピクッと足が動く。 死んだものが動く。 この神がかっているようにも思える現象に驚かずにいられる人間は当時少なかっただろう。 生命体という神秘性を帯びた存在が、電気信号で動いているだけの単純な機械であるかのようにピクピクと動く。 自分自身も含めた自然界に対す

          フランケンシュタインを巡る、機械論と神秘性

          「朝飯前」と「朝活」〜モーニングルーティンに見る時代〜

          「そんなの朝飯前さ!」 と言えばそれは、対象の物事が、朝食を食べる前のわずかな時間でもできてしまうほど非常に簡単に遂行可能であるということを指している。 しかしながら、ライフスタイルというのは時代と共に変化していく。 最近ではモーニングルーティンなどという言葉で表される、朝起きてからの一連の作業習慣も、「朝飯前」という表現ができた時代から現代までの時間の流れの中で、大きく変化してきたことだろう。 例えば、サザエさんのように3世代が一緒に暮らし、毎朝大人数の朝食を作る朝

          「朝飯前」と「朝活」〜モーニングルーティンに見る時代〜

          「NewJeansおじさん」を潤すサンゴ礁の雫

          NewJeans(ニュージーンズ)というKPOPアイドルをご存知だろうか。 2022年にデビューした女性5人組のグループで、先日、東京ドームにて日本デビュー公演を果たした。 昨年末の紅白歌合戦に出場するなど、事前に日本市場に対してかなり力の入ったプロモーションが行われていたこともあり、ドームは9万人を超える観客で大きな盛り上がりを見せたようだ。 公演の内容で特に話題になっているのが、メンバーが日本の有名曲をカバーしたことだった。 若干19歳のハニは、1980年にリリー

          「NewJeansおじさん」を潤すサンゴ礁の雫

          神は”はんだ”の玉に宿る

          はんだ付けが異様に上手い友人がいた。 中学には技術という教科があり、木工その他、人類が発明した工業技術の一端、かなり初歩的な、単純なものを実習を通して学ぶ。 その中に、ラジオ作りというものがあった。 これは、何もまったくのゼロから作り上げるということではなく、事前に本体の箱や基盤等は作られている工作キットのようなものを用いる。 それらのパーツをプラモデルのように組み立てればラジオができる。 その基盤の電子部品どうしを接続するために、はんだ付けという作業を行う。 金

          神は”はんだ”の玉に宿る

          表情筋に血を注いで仕事をするために

          仕事をしているとき、自分は一体何をしているのだろうという感覚に陥ることがある。 自分が今注意を向け、その五感や手足耳目を導入している”これ”は、一体どういうものなのか、突然分からなくなることがある。 しかしながら、このように思ってしまう理由自体ははっきりしている。 それは、仕事というものが、その構造上、多数の要素からなる複合体だからである。 仕事を構成する要素としては、以下のようなものがある。 実際に行っている作業そのもの。一緒に働く従業員との人間関係(しばしば、単

          表情筋に血を注いで仕事をするために

          方向感覚の喪失と死の旋律

          遺伝子レベルで発生せざるおえない男女差の一つに、方向感覚の鋭敏さがある。 古くより仲間と共同して狩りをしてきた男性は、基本的に家にいて遠出をしない女性に比べ、地形等を把握する感覚が優れており、自分が今どちらを向いているかということを認識する能力に秀でている。 私はこれまで、このような豆知識をずっと覚えていられるくらいには頻繁に、あらぬ方向に歩みだす女性に、正しい道順をお伝えしてきた(もちろん、この豆知識も毎回自慢げに紹介している!)。 そして、このような成功体験が積み上

          方向感覚の喪失と死の旋律