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「NewJeansおじさん」を潤すサンゴ礁の雫

NewJeans(ニュージーンズ)というKPOPアイドルをご存知だろうか。

2022年にデビューした女性5人組のグループで、先日、東京ドームにて日本デビュー公演を果たした。

昨年末の紅白歌合戦に出場するなど、事前に日本市場に対してかなり力の入ったプロモーションが行われていたこともあり、ドームは9万人を超える観客で大きな盛り上がりを見せたようだ。

公演の内容で特に話題になっているのが、メンバーが日本の有名曲をカバーしたことだった。

若干19歳のハニは、1980年にリリースされた松田聖子の「青い珊瑚礁」を歌った。

その様子がSNSや動画サイトで拡散されると、その意外な選曲もあってか、あっという間に話題になった。

しかし、事務所側の戦略に思いを馳せれば、これは全くもって当然の選曲であると言える。

今回の公演の内容を本気で予測したのであれば、あらかじめ想定することすらできたと言っても過言では無いほど、納得の行くものだ。

その理由を説明する。

そもそも、NewJeansというグループは、主に若い女性をターゲットにしている。

そのPVからは従来のKPOPに多分に含まれていた性的な要素が取り除かれ、少女ならではの可愛らしさが強調されるよう、薄化粧のメンバーが映し出されている。

着飾ったあざとい可愛さではなく、美少女のもつ素の可愛さ。

女性からの票を狙ったイメージ戦略がその透明感の先に透けて見える。

だからこそ、松田聖子という、今の若い女性にはあまり響かなさそうなチョイスに意外性があった。

しかし、彼女らのターゲットは他にもいる。

若い女性をメインターゲットとするなら、サブターゲットとも言えるその存在は、「おじさん」たちである。

実際、「NewJeansおじさん」なる言葉も存在している。

しかし、このような言葉が作られる背景には、「おじさん」がこのグループを好きになるのは、違和感がある、もっと言えば、気持ち悪い、という社会的コンセンサスがあるだろう。

そうでなければ、「NewJeansおばさん」や、「NewJeans女子高生」という言葉が発生していない理由が分からなくなる。

そして、このコンセンサスがあることは、もちろん当のNewJeansを愛する「おじさん」たちも把握している。

彼らは、自分たちが少々気持ち悪い状態に陥っていることを、重々承知している。

しかしそれでも、彼女たちは可愛い。

反抗期を迎え、かつての可愛らしい姿ではなくなった自分の娘が部屋に飾っているポスターをたまたま目にし、何気なくPVを見てみた女の子たちが、抜群に可愛いのである。

自分の娘もこうだったら…。などという良からぬ考えも頭をよぎる。

しかし、これは娘の世代の「女子たち」のものであり、こんな「おじさん」が好きになって良いはずがない。

そんなことが分かったら、娘になんと言われるか。嫁になんと言われるか。

でもやっぱり可愛い。

好きになりたい。

推したい。

そんな「おじさん」たちに向けて差し伸べられた大きな救いの手。それが、「青い珊瑚礁」なのである。

これは、彼らの心をさらにガチガチにホールドするのはもちろんのこと、それと同時に、彼女らを推すための大義名分を彼らに与える。

今この子たちにハマっててね。いやいや、最近まで全然知らなかったんだけどさ〜(嘘)。なんか、ライブで松田聖子歌ったらしくてね。たまたま(嘘)SNSで動画見たんだけど、なんか懐かしくなちゃって、興味出てきたんだよ。他の曲も聴いてみたら、結構80年代っぽい雰囲気があってね。温度感がしっくり来るっていうか、音楽性に惹かれて聴いてるんだよね〜(半分嘘)。

確かに彼女らの音楽は80年代の風味が効いているので、そこに関して親近感を覚えることは確かにあるだろう(よく考えれば、これも、「おじさん」世代に刺さるように計算してのことなのだろう)。

しかし本音では、彼女たちの容姿に強く惹かれている。

もう少し踏み込んで言えば、その表情に潜む幼さ、無垢さに惹かれている。

しかし、世間はそんなことを許してはくれない。

「おじさん」というだけで、煙たがられることすらあるこの世の中。

いくら純粋な気持ちだったとしても、未成年の女の子たちに入れ込んでいるなどということが知れたら、どんな目を向けられるか分からない。

そんな生きづらい世の中を渡る彼らの乾ききった心に潤いを与えたもの。

それがハニの歌う「青い珊瑚礁」を満たす、透明な、新品のジーンズのようにきらめく海の雫だったのだ。

この一曲のおかげで「おじさん」たちは堂々と彼女らを応援することができるようになった。

今や彼らは、松田聖子の、そして、自分の青春時代の面影を追っているだけだという言い訳を手に入れ、さらには、公式からも「その世代の方も好きになってもらって良いですよ〜」というお墨付きを得たのだ。

ここには初期のBABYMETALに起こっていた現象と通底するものを感じる。

小学生グループのファンというのは、かなりヤバいが、「メタルの新たな進化を体現したグループ」としてであれば、NewJeans同様、自分を納得させるための様々な言い訳が成立する。

きっとこの世にはそういうマーケティング戦略がたくさんあるのだろう。

「おじさん」たちが、世間体を気にして推しにくいものを、大手を振って推せるように、あれこれと手を尽くす。

NewJeansがこれから、そんな、お金はあるが大義名分の無い「おじさん」たちのために何をしていくのか。

注意(Attention)を向けていきたい。

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Takumiのessay
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